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災害報道と人権について
発信者=井上澄夫
(「やめて!東京都による〈防災〉に名を借りた自衛隊演習」
実行委員会)
発信時=2000年9月1日
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本日付『朝日』朝刊に、アブナイ解説が載りました。そこで次のFAXを、本
日午前、執筆者の泊次郎編集委員に送りました。
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本日貴紙に執筆された三宅島関連の解説記事に「行政が全島に避難指示を出す
と、住民全員が島を離れなければならなくなる」とありますが、これは災害対策
基本法第60条の解釈としておかしいです。村長(行政)が強制力を手にするの
は、第63条に基づき「警戒区域」が(全島に)設定されたときです。参考に小
生がインターネットに流したものを送ります。
災害対策基本法の発動は人権に深くかかわることですから、(記事は)正確に
記述されるべきです。
敬具
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送られたFAXの書簡にある参考資料は、〔aml 18843〕で、正確な
タイトルは「《警戒警報》石原慎太郎東京都知事の次の一手に注目しよう」で
す。
これに対し、泊編集委員からすぐ電話がありました。そのやりとりは次の通り
です。
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泊 「FAXをいただきました。おっしゃる通りですが、実際には避難指示に
よって住民は避難しています。有珠山のときもそうでした。」
私 「そのことは知っています。しかしだから困るのです。第60条は『でき
る』規定ですから、そのように使われるのはおかしい。行政に強制力が生じるの
は、第63条が発動されたときです。
お書きになった記事を読めば、全島避難指示が出されたら、住民は避難しな
くてはならないと思ってしまいます。避難するかしないかは、一人ひとりの主体
的な判断によるべきです。行政の行為が法を逸脱することは許されません。こと
は人権にかかわるのですから、法の解釈については、正確に書かれるべきで
す。」
泊 「よくわかりました。今後は気をつけます。」
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というわけで、『朝日』の記述は、今後表現が慎重になるかもしれません。実
際にそうなるか、実は私にもわからないのですが、マスメディアが行政の「法に
基づかない強制」を後押しするようなことがあってはならないと思います。