(from 『オルタナティブ運動情報メーリングリスト』 改行位置等若干変更)
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Date: Thu, 31 Aug 2000 23:35:01 +0900
From: 山崎 久隆 <SDI00872@nifty.ne.jp>
Subject: [aml 18860] 三宅>ボランティアを危険な人命救助に動員
@ニフティ掲載原稿
三宅>ボランティアを危険な人命救助に動員
本日の三宅島現地対策会議の検討で、驚くことが決定されました。
全島避難が決まることを願っていましたが、それどころか、まだ島でがんばる決意
表明が村当局から出され(強要されたものではないことを祈ります)現在およそ
1500名の残留者(その多くは公務員、インフラ関係、交通運輸関係、防災関係と
それらの人々のために生活必需品や食料や宿舎を提供している人々)のためにインフ
ラや食料品や生活品の提供に支障が出ないことを確認したというのです。
「全店舗に意向調査をした結果では、14店が営業継続の意思を示しており、島全
体としては、食料品の流通は維持されると考えられる。今後の被災の推移によっては、
島外へ避難する店舗が増加することも考えられるので、農協3店舗を中心に流通体制
を維持する。」ということは、これらの店舗等は「員数」としてカウントしたという
意味です。勝手に島外に出るなどはまかりならぬ。そう読みとれませんか。いや少な
くてもこれらの店舗の人々の「自由意志による避難」は阻害されたといわざるを得ま
せん。今後考えが変わったから島外避難と、店舗が閉鎖されれば、残留している人々
の生活が成り立たなくなるわけです。そのことがどんなに大きな圧力になるか、都会
人の都庁官僚にはわからんのでしょうが、人々の心とが絆で結びあっている島民には、
まさに「みんなのためには逃げていられない」気持ちになるのです。
そしてもう一つ、あまりのことに絶句した部分です。
2)近隣諸島への避難
・三宅村漁船(5t以上)−−−18隻×15名=270名
・神津島漁船(5t以上)−−−73隻(到着1時間程度)
・新島船−−−−−にしき(定員128名、到着45分程度)
・新島漁船 (5t以上)−−−20隻(到着1時間程度)
これは、噴火災害により全員緊急避難をしなければならないようなケースの想定と
しか考えられません。噴火も土石流もなにも起きていなければ、「三宅村営バスで三
池港などに運び、5〜6時間で全員避難」というのが都の考えだったはずだからです。
一週道路が使えず、噴煙などで近くの入江などに緊急避難して脱出する必要が生じ
るという極限的状態であるから、小回りの利く漁船が投入されるはずです。
そこに、なんと神津島の漁船、新島の漁船、新島船が投入されることになっていま
す。その数合わせて94隻。最低限94名の漁民が操縦するわけです。
三宅村の漁船が、きわめて危険な噴火や火砕流などから逃げるときに、近くの人々
を乗せて逃げるのは当然でしょうが(しかしそれを防災計画の員数として数えるとい
うのは別論)神津島や新島から動員するというのは、全く次元の異なる話です。
つまり、漁民がボランティアで、危険きわまりない高温火砕流や海底噴火などを引
き起こすかもしれない三宅島に、その災害の真っ最中に救助隊として駆けつけろとい
うことなのです。
漁船は軍艦のような密閉設備があるはずはありません。高温火砕流の速度以上の高
速で脱出できるわけでもありません。最悪の場合、駆けつけた神津、新島の漁民もろ
とも、火砕流に巻き込まれるおそれもあるのです。
既に29日の噴火では、低速で低温とされていますが火砕流が海の上を走ったこと
が映像で確認されています。また、この検討会と同時に行われた地震予知連において、
火砕流発生を警戒せよとの公式見解(石原さん、出ましたよ)が示されました。つま
り、起こり得る危機なのです。
噴火予知連も警告した火砕流発生の可能性のある三宅島沿岸に、民間のボランティ
ア船団を大量に派遣する。これが対策本部の決めた噴火避難対策だというのです。
確かにボランティア活動の中では、命の危険にさらされる場面があり得ます。どん
なに注意しても完全になくすことは出来ません。しかしそのような現場に派遣される、
あるいは参加する場合は、事前に専門的訓練を受け、十分な防護装備を付け、そのリ
スクについて事前説明を受け、そのことを熟知し納得してから参加することになって
います。これには例外はありえません。(例えば震災現場や山岳遭難現場の救助犬、
地雷除去作業のボランティア活動、重油汚染除去の活動等)
従って、ボランティア活動をするのに、現在の三宅島のような状況の場に赴くこと
はあり得ないはずです。
ところが防災の専門家が参加している検討会の場の公式決定で、一般の漁民が十分
な訓練も装備もないままに、一瞬で人命を奪うかもしれない火砕流が起こる現場に駆
けつけることが約束されたのです。
ああ、こんなことがボランティア活動の現場に起きるなど、想像もしませんでした。
少なくても行政機関は、基本的なボランティア活動のあり方くらいは、理解している
と思いました。しかし東京都災害対策部はそんなことはあっさりと無視したのです。
いざとなれば命を懸けて三宅島民を救え、これが石原流なのでしょう。
たぶん行政側は新島漁民や神津島漁民が拒否などしないことを見極めていました。
そんなところでいやだと、言えるはずが無いという心の優しさを利用したのです。
本来は行政側が最善策をとるべき人命救助、未然に危険地帯から出せば、こんな人
命救助作戦はいりません。そういう義務を放棄しておいてさらに、本来は全住民を危
険な状態になったら行政の責任で行政の手で脱出させる責任があるのにそれをボラン
ティアに押しつけるという二重の誤りを犯しているのです。
ああ、ここまできてしまった。三宅噴火災害では、史上最悪のボランティア活動が
行われる可能性が出てきてしまったのです。
今後、東京都の要請による災害ボランティアには一切協力しない。今心に決めまし
た。
00/8/31(Thu) 11:27pm SDI00872 yamasaki