[TO: aml, keystone]
島川です。
6/20 Web掲出の『海兵隊ニュース』によれば、6/17に海兵隊総司令官の
ジョーンズ将軍が「最初の乗客」となったMV-22のフライトが実施され
たそうです。空軍参謀総長との同乗ではなく、主役はジョーンズ「夫妻」
となりました。
"MV-22 OSPREY CARRIES PASSENGERS AGAIN"<http://www.usmc.mil/news/news99.nsf/78474d8d567cc4648525657d0064a54a/844071dc6ba3f78c85256904005ec7e6?OpenDocument>
海兵隊のホームページは、28日現在で、通常の表紙を撤去してこのニュー
ス一色です。「乗客」は、
1番機
ジョーンズ夫妻、海軍航空戦闘センター兵器部長・ジョンストン少将、
ベル・ヘリコプター社長、ボーイング副社長、軍関係紙記者3名。
2番機
一般マスコミの代表取材記者たち、ベルとボーイングのMV-22プロジェ
クトの関係幹部たち。
夫妻は20分間の「遊覧飛行」を楽しんだ?ようです(写真では、手を
指してなにやら説明している夫に対して、妻の横顔は緊張気味に思える)。
戦闘態勢の飛行でないのは無論、既知の安全の範囲内で、民間機よりも
慎重に飛んだことでしょう。どうせやるなら、事故機と同じ条件で--夜
間に武装兵と装備を載せて同じ飛行ルートで2番機として--「前進速度
40ノット以下・降下率毎分800フイート以下」で着陸してみせれば、
ショーだとしても少しは臨場感が出たでしょうけれども。
総司令官:「事故は設計上のいかなる欠陥にも関係するものではない」
「飛行は一般に危険性を含む仕事であるが、しかし、この飛行機
には技術的な危険性はない」
事故原因・MV-22の安全な航空作戦を疑わせるような構造的/設計的な欠陥は
ない。ヘリとMV-22の相違からして、総司令官はパイロットとク
ルーの訓練の重要性を強調した。事故原因は「ring vortex」(
「輪状の渦」=「パワーセトリング」と同じ意味)である。前進速
度に比して大きすぎる降下速度であったため。最終報告は1カ月
以内に発表の予定。
「最終報告」の内容はヒューマン・エラーですね。死亡したパイロット
には、オスプリが、「前進速度40ノット以下では降下率は毎分800
フイート以下とするようrecommendされていた」(マッコークル中将)とい
うことについて、言い分があるかもしれません。
この奇妙な「遊覧飛行」の「乗客名簿」は、既に新機製造もできない絶
版物である「ベトナム戦争期の古いヘリ」の運用に苦労している海兵隊
はもとより、軍事産業にとっても、V-22計画というビッグ・プロジェク
トの実現が重要テーマであることを示していると言えましょう。こうい
う茶番的パフォーマンスをしてみせなければならないほど、彼らがMV-22
の「評判の悪さ」に追いつめられているということでもありましょう。
『海兵隊ニュース』には、飛行再開前に、MV-22の「Slip Ring」がリコー
ルされた、という記事もあります。欠陥部品の付け替えということですが、
通常の「リコール」で事故・事故原因とは関係ないとされていますけれど、
ローター関係の部品だということで、?と思わせるものではあります。
"OSPREY SLIP RINGS RECALLED"<http://www.usmc.mil/news/news99.nsf/7cc4a7cfb0b87f94852567fc006c7b11/0c67b9fd63b94d65852568e2004f4ade?OpenDocument&Highlight=2,MV-22>
「技術的・構造的・設計的な欠陥・危険性はない」などと繰り返し強調
されると、人間の技術に絶対なんてないでしょうと、かえって疑問を感
じてしまいますね。上の「Slip Ring」の場合はボイド(泡)があったと
いう、製造上の欠陥のようです。ともあれ、軍の「技術的無謬性の強調」
は、現段階(本格的量産の決定寸前)での、計画進行への強い意志表示
であることは確かです。総司令官のパフォーマンスなども自信というよ
りは焦りの表現と見るべきでしょう。
「遊覧飛行」記事の締めくくりの文章です。
「海兵隊に求められている計画は360機のMV-22を購入することで、空軍
はCV-22を50機買い、海軍はHV-22を48機買うことである。」
-------------------------------
島川雅史 mshmkw@tama.or.jp
mshmkw@jca.apc.org
-------------------------------