高橋亨です。
ベルリンの梶村太一郎さんから、『ドイツニュースダイジェスト』(ドイツ
で発行されている日本語週刊紙)に発表された2本目の石原暴言批判記事を
送って頂きましたので、梶村さんも執筆されている石原批判本(影書房)の
予告と合わせて投稿します。
転載歓迎です。
なお、この記事は私のホームページにも掲載してあります。
http://village.infoweb.ne.jp/~fwjh7128/genron/ishihara/kajimura000527.htm
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歴史認識の甘さこそ問題
梶村太一郎
石原東京都知事の発言問題で、私が寄稿した「『ゲッベルス』的なるその
暴言」(本紙三〇九号)に対する、団菊雄氏の批判「その短絡的な反応を憂
う」(三一一号)にお答えします。
まず、石原氏はその後「一般の外国人の心を不用意に傷つけたとしたら本意
でなく遺憾」と表明したのであって、発言を撤回して謝罪はしていません。
遺憾と謝罪は似て非なるものです。これは似非(えせ)の謝罪です。彼の年
齢で「三国人」が蔑称であることを理解できないなら、それだけで知事とし
ての能力を欠いています。
シュピーゲル誌での発言は本人に直接確認するまでもなく、どの部分も、彼
が他の多くのメディアで繰り返し主張している内容ばかりであり、同誌のも
のは、むしろ大変”おだやかな”表現なものだけです。内容が間違って通訳
されているとしたら、どの個所ですか?
石原氏は元来は南京大虐殺を全面否定していましたが、次第に意見が変り、
今では五万人までの虐殺を平然と認める変節漢です。しかも被害国の主張す
る犠牲者数が誇大だとわめけば、免罪されると錯覚する卑劣漢でもあります。
虐殺は一人でも四〇万人でも虐殺です。犠牲者の数を共同で調査研究したい
なら、まず謝罪してからでないと相手にされません。もっと卑劣なのは、チ
ベット問題を持ち出すことでしょう。自らの罪をまやかそうと、相手の別件
の罪をあげつらうのは子供の喧嘩の方法です。相手の罪が事実であっても、
それで自分を免罪などできません。
中国外務省の「白痴」という表現に、私は同調などしていません。こちらも
大人げない売り言葉に買い言葉で、外交上問題だと考えます。しかし、打ち
続く卑劣な石原発言への中国側の「強烈な憤り」は良く理解できます。
一九三八年、ドイツの外交官を撃ち殺した、一人のユダヤ人青年の犯行を口
実に、ゲッベルスは全ドイツのユダヤ人に対して報復を煽動しました。一部
の外国人の犯罪の増加を口実に”外国人騒擾治安演習”を煽動することが
「抑止力になる」とする石原氏の発想は、クリスタルナハトの”成果”に満
足し「これでユダヤ人もよく考えるようになるだろう。これこそが、この演
習の意義であった」と日記に書いたゲッベルスの発想と、みごとなまでに瓜
二つです。両者のような、他者への憎しみを煽る人物をドイツ語では「精神
の放火犯=Der geistige Brandstifter」と呼びます。この比較を”短絡的
反応”と思われる団氏の歴史認識は、いささか底が浅くはありませんか?
ドイツでは民衆扇動罪で刑務所に入るべき「東京のゲッベルス」石原氏が、
いまだ知事室に安泰なのも、発言を支持する団氏のような考えの都民が多い
からです。暴言以上に問題なのは、むしろこちらの方でしょう。一九三八年
のドイツがそうでした。「精神の放火犯」に煽られた暴力を、大半の市民は
暗黙の内に支持したのです。
当時の沈黙を、現在の市民は自らの歴史を直視することで恥じています。か
つての同盟国、日本とオーストリアで今、近隣諸国からボイコットされる政
治家が登場するのは偶然ではありません。東の石原、西のハイダー。外国人
を敵視するこの二人は、両国に根強い、恥知らずな歴史認識の現れです。石
原氏の知事としての存在は「恥の文化」を失ってしまった戦後日本の政界を
象徴しています。五月十二日、ラウ連邦大統領は「ベルリン講話」で外国人
問題を正面から取り上げました。日本よりも桁違いに外国人の多い、従って
その犯罪も問題も多いこの国の元首は、全ての住民に対し「恐れもなく、夢
想もなく、ドイツで共に生きよう」と呼びかけています。彼の冷静で公明正
大な精神を知れば、団氏もこの国の住民として、きっと恥ずかしくなり、石
原知事にせめてラウ氏の爪の垢でも煎じて飲ませたいと思われることでしょ
う。(大統領講話Berliner Redeは各国語で読めます:
www.bundespraesident.de. 日本語はありませんが、英語はあります。)
『ドイツニュースダイジェスト』2000年5月27日号
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緊急出版『石原都知事「三国人」発言の何が問題なのか』編集だより I
2000年5月9日号
◆タイトル:『石原都知事「三国人」発言の何が問題なのか』(仮題)
◆編者:内海愛子・高橋哲哉・徐京植
◆体裁:四六判 並製 約150〜200頁(予定)
◆予価:1700円
◆発売予定日:6月初旬
◆ contents:(敬称略)
まえがき
1. 緊急座談会:「三国人」発言で何が問われているのか?
内海愛子・高橋哲哉・徐京植
*できるだけ丁寧な脚注をつけるべく努力中。
2.論文=山田昭次…20枚
3.寄稿:8〜12枚
梓澤和幸・鵜飼哲・梶村太一郎・金子マーティン・金石範・駒込武・
コリン・コバヤシ・愼蒼健・徐翠珍・鄭暎惠・中西新太郎・前田朗・
目取真俊・吉成勝男・劉彩品・渡辺英俊
4.資料編
・石原慎太郎の発言から(4・9の全文とその他)
・マスコミ各紙誌の反応(海外のメディアも含めて)
・人種差別撤廃条約の抜粋(前文・第一部)
・人権支援グループ一覧
編集協力チーム:
岡本有佳・立石喜久江・小柳暁子・小川宏美・須永陽子・高田絵里
影書房 編集部 松浦弘幸
〒114-0015東京都北区中里2-3-3 久喜ビル403
FAX:03-5907-6756
(TEL:03-5907-6755)
Eメールアドレス: mokkusan@ea.mbn.or.jp
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== *対抗言論のページ*
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