国旗国歌法制定直後、農協の県本部が早速に真新しい「日の丸」をかかげたの
が印象的でしたが、その後大通りに徐々に増え、社屋に「日の丸」をはためかせ
た報道機関もお目見え。これに比例して、野宿者が増えている感もしないではな
い。
3日には、「日の丸」の小旗を付けた秋田市営バスが走る中、これまた「日の
丸」を掲揚した市営施設で行われた集会へ。秋田でも毎年、改憲勢力が、大げさ
なスローガンを掲げてこみっと集会を持っているようですが、今のところ例年並
なのか情報なし。
■秋田魁新報00/05/04
「平和憲法を守り抜こう」
秋田市 集会に200人参加
憲法記念日の三日、「第二十二回平和憲法を守る県民集会」が秋田市文化会館
で開かれ、平和憲法を守り抜こうなどとするアピールを採択した。県労連や市民
団体などで組織された実行委員会の主催で、二百人余りが参加した。
能代市出身で東京法律事務所所属の坂本修弁護士が「『憲法破壊戦略』に未来
はない」と題する記念講演を行った。坂本弁護士は「労働条件が劣悪で、非生産
的な職場環境は、憲法で保障された権利の侵害」と指摘、「安心して日常生活を
送れるか、ということが憲法問題の基本。多様な草の根レベルの要求を重ねて私
たちの二十一世紀を開こう」と述べた。
講演終了後、休日の選挙実施などに関する質疑応答、生存権などに関する意見
交換も行われ、最後に「人間らしく生きることを保障した憲法の精神を、日々の
暮らしや職場、地域に広めていこう」などとするアピールを採択した。
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今年の憲法集会には、労働問題に詳しい坂本修弁護士を講師に迎えて開催されま
した。
日本国憲法の第9条と並んで、世界に誇れる条項に第25条があり、人間らし
く生きる権利を定めている。人間らしく生き、働く権利とは、尊厳をもって働く
権利をいうが、この国では9条の戦力不保持を改憲するために、1987年頃か
ら労働法・商法の改悪などで25条の人偏らしく生きる権利と28条(勤労者の
団結権)の労働争議権の破壊から攻めようとしている。
企業は、アメリカのかかげる市場原理にのって、日本でもグローバル・スタン
ダード(国際標準)に沿って、「改革」が進められているが、先進国に類を見な
い男女や正社員と非正社員との賃金格差、ドイツと日本の労働時間の差は約70
0時間(100日)という例に見られる過密労働を強いられている。企業がメガ
コンペティション(商品の製造・流通の競争が世界的規模で行われること)で生
き残るために、推定1万人の過労死や1日100人ともいわれる自殺をまねき、
20〜30万人の労働力の損失と、交通遺児の4倍の遺児を生み出している。変
形労働を拡大、商法の改悪(「会社分割法」=会社を事業部門ごとに細分し、不
要部門の労働者を切り捨てる仕組み、など)で、企業は30兆円の利益を得るだ
ろうといわれる。
しかしこれらは決して「大企業栄え、民滅ぶ」とはならない。日本の信頼は、
安全と高水準の技術で、世界から信頼を得てきた、それが今、新幹線のトンネル
の崩落、ロケットの打ち上げ失敗、そして東海村の「バケツ」によって崩れてし
まった、と危機感を持っているのが現在の企業の実態である。このまますすめ
ば、企業にも未来はない。今の企業は「わがなき後に洪水来たれ」の心境であろ
う。5,400万人の労働者とその家族の生活の破壊は、失業と不況の悪循環を
招き、経済不況はいっそう深刻化する。未来に希望が持てなくなれば、出生率は
ますます低下し、産業の空洞化をも招く。このような「規制緩和」によるルール
なき資本主義の労働の破壊はやがて、企業の破滅と暴走へと突き進んでいくだろ
う。その行き着くところはかつての日本のアジア侵略であり、朝鮮戦争への「協
力」の歴史が明らかにしている。
消費生活用品の安全基準見直しで安全性への不安、大店舗法改定など、「規制
緩和」による地場産業の衰退を肌身に感じ、WTOでの自由化交渉へのNGOか
らの批判などでグローバルスタンダードなるものをうさんくさくは思うものの、
企業労働者運動の経験がないので、うまくまとめられませんでしたが、だいたい
こんなお話でした。
この国を食いつぶした企業の進む道は、アジア侵略しかなく、そのために、日
本は軍隊を作ろうとしているということかと。
そして、平均寿命も縮むほどの厳しい労働環境の悪化の中で、今、労働現場か
ら共同のたたかいが広がってきていることが紹介され、「一人ひとりの力は大き
い」、力を併せて“私たちの21世紀”を開こうとおっしゃいました。主権者で
ある私たちが、一人称で憲法を考え、憲法を生かし、人間らしく生き、働くる権
利を実現することが、アジアと共存共生する経済関係を確立し、未来を開く大き
な鍵となるという提言は、実際に労働問題に取り組んでいらっしゃる方だけに力
強さを感じました。
その後、特別報告「今暮らしの中に憲法は生きているか」
憲法25条(生存権)の侵害の実例として、「健康と暮らしを守る会」から、
秋田市でホームレスを余儀なくされている人が十数人確認され、そのうち三人の
救援に取り組んだ。その中のお一人は51歳で1年余り秋田駅付近で野宿生活。
血糖値が450にも上がったが、前に一度病院に行ったが医療費が未払いのまま
でいけなかった。会では急遽住所なしで保護申請の交渉をし受理されたが、その
まま街頭へ戻らなければならず、2万円の一時金を得て、宿を探し、4日後緊急
入院。また福祉手当の削減に苦しむ家庭が増えている。年金の受給を理由に孫の
児童養育手当がうち切られた例があり、この問題については、94年に確認され
ている、支払い能力の基準である「生存権を保障した余力」のないことを確認し
て児童養育手当などの県と市町村の折半などを求めた。
憲法26条(教育を受ける権利)の実態を高校教員が報告
生徒手帳に26条を明記した学校など教育を受ける権利への関心は高まってい
るが、金をかけない教育が進み、国の教育予算は1980年度には政府予算の1
0%だったのが、99年度には7.9%。秋田県では40人学級のままでは、少
子化で2005年までに65学級が減少する計算になる。現在の教員数のままで
も30人学級が実現でき、「国の責任で30人学級を実現」させ、行き届いた教
育を求めていきたい。公教育の切り捨ては、教育予算ばかりではなく、文部省の
いうところの「生きる力」とは世の中の動きについていける力のことであり、
「多様化」という名目で教育の「商品化」も進んでいる。学習内容の3割削減
で、教育レベルの低下が言われるが、「ゆとり」ある教育のはずが、県内で学習
についていけない子どもは、小学校で66%、中学校で42%、高校で37%と
依然高い。
*教育予算減は金額にすると、81,860億円から64,731億円に減少。
差額17,129億円という額は、
全国の国公私立小・中・高30人学級の実現に1.2兆円、学校施設設備費4.
075億円の増額、第6次定数改善計画完結のための国庫負担91億円、私学助
成の増額などが可能。
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集 会 ア ピ ー ル
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県民のみなさん。
私たちは、きょう、改憲策動が本格化するもとで、憲法擁護をかかげて、22
回目の「平和憲法を守る秋田県民集会」を開きました。
日本国憲法は、戦争によって受けたわが国内外の大きな被害を直視し、平和主
義、民主主義、基本的人権の保障を定めました。
そして、この憲法は、幾多の危機を乗り越え、今日、施行から53年を迎えま
した。
ところが、この憲法が定めた基本原則を大きく揺り動かす法律が、昨年相次い
で制定されました。
日本を戦争に巻き込む、日米防衛協力のための指針見直し(新ガイドライン)
と、それにともなう周辺事態措置法、通信の秘密を犯す盗聴法、思想信条の自由
を侵害する国旗国歌法などなど、悪法が次々と制定されました。
さらに、憲法それ自体を「改悪」しようとして、衆参国会内に、憲法調査会が
設置されました。
憲法が暮らしの中に本当に生かされているでしょうか。職場に憲法の権利が保
障されているでしょうか。
憲法について論ずるなら、まず第一に、それらが検証され、議論されるべきで
しょう。
私たちは、憲法について、学び、経験し、論議を巻き起こし、憲法が暮らしの
すみずみまでゆきわたらせることをめざして、21世紀に日本国憲法を手渡すた
めに、不断の努力をしていきます。
私たちは、憲法施行53周年の今日、人間らしく生きることを保障した日本国
憲法の精神を、私たちみんなの暮らしと職場と地域に広めることを、そして多く
の参加者のみなさんと誓いあい、広く県民に訴えるものです。
2000年5月3日
第22回平和憲法を守る秋田県民集会
実行委員では、今後2ヶ月に一度くらいに憲法学習会を開く計画です。
その資料に関心のあるテーマをアンケート(複数回答可・順不同)
−天皇制と憲法−自衛権と憲法−「戦争論」と憲法−環境破壊と憲法−教育「改
革」と憲法−自然保護と憲法−情報公開法と憲法−「司法改革」と憲法−少年事
件と憲法−被害者の権利と憲法−介護保険と憲法−労働者の権利と憲法−医療と
憲法−地方自治と憲法−生活保護と憲法−情報公開と憲法−公共事業と憲法−米
軍基地と憲法−高齢社会と憲法−税金と憲法−その他希望のテーマ−
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第25条
(1)すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
(2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公共衛生の
向上及び増進に努めなければならない。
第26条
(1)すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひと
しく教育を受ける権利を有する。
(2)すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通
教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第27条
(1)すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
(2)賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを
定める。
(3)児童は、これを酷使してはならない。
第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保
障する。