Date: Wed, 26 Jan 2000 01:58:34 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: keystone@jca.ax.apc.org
Subject: [keystone 2311] Re: 「自衛隊生徒」
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Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

On Tue, 25 Jan 2000 20:00:27 +0900
"MARUYAMA K." <kaymaru@jca.apc.org> wrote:

>
> 以下も『日本国憲法 平和的共存権への道』からの引用ですが、ちょっとほっとす
>るところ。
>======================= 31〜32頁 ====================
>
>星野 ……、自衛隊法の罰則の最高刑が七年間の懲役ですね。それに対し、日米安保
>条約第六条にもとづく刑事特別法(刑特法)では、機密探知は10年以下の懲役です
>からね。(中略)……、自衛隊法には死刑はないんです。しかし、死刑の威嚇がなけ
>れば人は殺せないでしょう。
>
>古関 敵前逃亡罪という規定も、自衛隊法にはないですね。
>
>星野 防衛出動命令が下った場合の脱走罪はあるけれども、平時の脱走罪はない。そ
>れは、兵役義務がないからです。死刑の問題ですが、古くはアメリカ合衆国憲法や、
>また第二次大戦の日本の同盟国で同じ敗戦国のイタリア共和国憲法では、ちゃんと死
>刑廃止を規定しています。ただ、戦時における軍法ではその限りではないと規定して
>いる。戦時の兵隊には死刑があるんです。というのは、死刑の威嚇がなければ戦場に
>行かない。七年以下の懲役なら“別荘”に入っておったほうがいいもの。七年たった
>ら出てこられるんだからね。自分も殺されないし、人を殺すこともないんだから。
>==================================================
>
 この自衛隊法に死刑はないという「欠陥」は、従来「右」の人を苛立たせてき
たところで、有事立法とかきな臭い話になると必ずこの点を改正せよという先生
が現れています。憲法9条問題の隠れた論点でしょう。

 現在公刊されている唯一の防衛法概説書だと思うのですが、「平和・安全保障
と法」(防衛法学会編、内外出版)ではこの問題を以下のように論じています。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
> 上官の命令に服従しなかった場合の上記の法的処罰とは別に,上官がその命
>令の執行にあたり,これに従わない部下に対していかなる措置をもってこれに
>従わせ得るかという問題が残される。多大の危険を伴う自衛官の任務は,現実
>の出動時において命令に従わない者を生みやすく,また,一人の違反者が出る
>ことで,部隊行動が不首尾に終り,部隊全員あるいは国民を重大な危難に陥れ
>るおそれがある。このため,各国の防衛法規では,上官の職務命令を発する権
>限は,直接強制によりこれを実現する権能を包含するものと解している。隊法
>をこうした国際的法慣習に準じて解釈するとすれば,隊法第57条の上官の命
>令に服従する義務には,このような直接強制を受忍する義務が含まれると解さ
>れる。したがって,上官は,状況に応じ相当な方法で命令を執行する権限を与
>えられる。

 というように、「国際的慣習法」を援用して、現在の自衛隊法を「救済」しよ
うとする修正主義的対応は解らないわけではないのですが、この論理が以下のよ
うに続くのです。

>例えば,防衛・治安出動を命じられた自衛官には,職務執行に必要
>な範囲で警職法に基づく権限が与えられるが(隊法第89,92条),部隊行動時
>に,部下が命令に従わなかった場合,上官は,この隊員に対して警職法に基づ
>く武器使用によって,部下を命令に従わせることができると解される。

 ん?ん?つまり「奴等を皆殺しにしろ〜!言うことを聞かんとオマエを殺すぞ!」
と言って「部下を命令に従わせることができる」という解釈ですね。要するにこ
れで死刑相当の「刑罰」を与えることができるから命令に服従させられる。でも
これはだいぶ無理があるのでは。日本の法学者の間では「定説」ですか〜?
 上の著者が言う警職法の武器使用規定は以下の部分だと思うのですが、これが
軍人に対して適用できるとは思えませんがね。
 いずれにしても憲法9条が改正されれば、このような無茶な解釈でなく、ごく
「自然」に敵前逃亡は死刑と法律も改正できるのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−

(武器の使用)
 第7条
         警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対す
        る防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相
        当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断
        される限度において、武器を使用することができる。
        但し、刑法(明治40年法律第45号)第36条(正当防衛)若しくは同法第
        37条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を
        除いては、人に危害を与えてはならない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−
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   青木雅彦
  Aoki Masahiko
btree@pop06.odn.ne.jp
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