「愚者は自らの経験のみによって学ぶが、私は他人の経験から学ぶことを好む」
とビスマルクは言いました。「愚者」と呼ばれぬために、以下のアメリカの事故
から学びたいと思います。
昨年7月にフロリダ州で低空飛行訓練中のF-16が墜落しパイロットが死亡した
事故で、米空軍はこのほど事故報告書をまとめました。事故原因は風防に鳥が衝
突したこと。パイロットは内側に折れ曲がった風防のため、一切の対応ができな
かったためそのまま墜落したと。
昔はF-16は前面のエンジンの吸入口(大きい)によく鳥が飛び込んで墜落して
いました。いまはネットを張って防止しているそうですが、パイロット自身を鳥
が直撃するとどうしょうもない。また低空飛行訓練の場合は、非常事態が起きる
と、地上までの待ち時間が短いためどうしようもありません。また低空飛行(高
度 100m〜500m程度でしょう)訓練の場合は、悪いことに鳥の飛行高度と戦闘機の
高度が一致してしまう。日本でも、東北地方や中国地方で、頻繁に F-16や
F/A-18が低空飛行訓練を行っているため、当然同様の事故が起こる可能性はあり
ます。鳥の飛行か米軍機の飛行を規制しない限り。
この事故機は、民間人の牧場に墜落しましたが、「人家を避けようとして機体
と運命をともにした」という美談はまだ捏造されていないようです。日本とアメ
リカでは人口密度が違うので、こういう「美談」は生まれにくいのです。日本の
場合は、パイロットが亡くなる事態では、「美談」か、その入り込む余地のない
惨事かのどちらかになります。
東北地方の回数は分かりませんが、中国地方では「周辺事態法」成立以降、低
空飛行(米軍機)の目撃回数が、6倍に急増しているそうです(中国新聞
'99/11/20)。事故が起きてから「やっぱり飛行をやめさせんといかんなー」と言
うのでは、ビスマルクの「愚者」の定義そのものです。
以下は、事故報告書の報道。
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Air Force Print News, Jan. 20, 2000
000075. Homestead F-16C accident report released
LANGLEY AIR FORCE BASE, Va. (AFPN) -- A bird strike was the probable
cause
of an F-16C crash near Patrick Air Force Base, Fla., July 1, according
to
officials investigating the accident.
The pilot of the aircraft, Maj. Samuel D'Angelo III, assigned to the
482nd
Fighter Wing at Homestead Air Reserve Base, Fla, was killed and the
aircraft
was destroyed after impacting the ground about 50 nautical miles southwest
of Patrick on a private cattle ranch.
According to the accident investigation board report released Jan. 18
by Air
Combat Command, approximately 25 minutes after takeoff for a low-level
training mission, D'Angelo ceased controlling the aircraft. He
made no
radio transmissions, nor did he initiate the ejection sequence to escape
the
aircraft.
Substantial evidence indicates the probable cause of the crash was a
bird
strike on the forward area of the canopy. Investigators believe
the canopy
deflected inward, striking the pilot and rendering him incapable of
controlling or escaping the aircraft, or of initiating radio contact.
(Courtesy of ACC Public Affairs)
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青木雅彦
Aoki Masahiko
btree@pop06.odn.ne.jp
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