(毎日99/12/15)ニュースがわかるQ&Aより一部
Q チェチェンはどういうところですか
A カフカス地方にあります。古くからチェチェン人やイングーシ人が住んでい
て、16世紀ごろイスラム教の“洗礼”を受けました。18世紀末ごろ、ロシア
帝国が併合を目指したことから、ロシアとの確執が生まれました。1817年に
始まったカフカス戦争で、チェチェン人らはロシアにジハード(聖戦)を宣言し
激しく抵抗しましたが、59年降伏し、併合されました。
Q なぜ、ロシアはチェチェンにこだわるのですか。
A ロシアには100以上の民族があり、チェチェンの独立を認めると他の共和
国の独立機運に火をつけてしまうとの懸念があります。チェチェンには石油パイ
プラインが通っており、利害の面でも譲れません。
欧米はロシアの軍事行動を批判しています。しかし、エリツィン大統領は「ロ
シア国内の問題だ。外国から批判を受けるいわれはない」と語るなど、強硬な姿
勢を崩していません。
世界の政治や経済に大きな影響力を持つ国が集まっていると言われ、軍事的共存
を確認しあうG8で、昨年初の「紛争予防G8外相特別会合」が開かれました
が、チェチェンの「起こしちゃった戦」には無力・無責任でした。
日本は2000年のG8議長国。軍事力による「国際貢献」ができない立場の
日本政府が「予防」の役割を果たす最適国のはずですが、河野外相は「一般市民
の被害がないよう一刻も早い政治解決を期待している」としたのみ。日本政府が
ロシア政府とどんな「援助交際」をしているかは知りませんが、一般市民に被害
のない武力行使などあり得ません。
ロシア側は当初、早ければ三日でグロズヌイ制圧を完了できるとしていました
が、昨年十二月二十五日の作戦開始以来既に三週間になろうとしています。
双方
の武装勢力と市民に犠牲者が続出し「泥沼化」しつつあるようです。
ロシア連邦軍のカザンイツェフ司令官は11日「ロシア大統領選(3月26日)
までには完了する」と語ったが、天候を含む状況次第だとも語り、時期は明言し
なかった。(朝日00/01/12)
エリツィン・ロシア前大統領は6日、チェチェン共和国でのイスラム武装勢力
に対する掃討作戦が「あと約2カ月続くだろう」と記者団に語った。[毎日新聞
1月6日]
ロシア民放局NTVは、Gandamirov部隊を第2次世界大戦時の「犯罪人兵士」にたと
えている。つまり、戦闘では最前線に投入され、無事に戻れたとしてもそのとき
は背後から撃たれるのだ。
チェチェン側によれば、Gantamirovとその部隊は戦闘に加わることの報償として
(チェチェン人犯罪者の)出獄を認められる。Gandamirov部隊には特別部隊の
OmonとSobrがついている。
ロシアの計画によれば、チェチェン人の戦闘意欲を「失わせるほどの」爆撃を
行った後、第2段階がチェチェン人犯罪者部隊の攻撃によるグロズヌイ中心部への
進攻で始まり、部隊は市内の戦略要地に配置される。そして、最終段階でロシア
人がグロズヌイへ入る。「蜘蛛の巣」作戦と名づけられたこの作戦には、化学兵
器専門部隊と狙撃兵も加わる。
ロシア兵士の母委員会は、国防省を告訴する準備を行っている。
1994〜96年の戦争時から今まで、国防省を訴えようとして成功しなかった兵士の
母たちは、最高裁判所の最終判決が出た後、チェチェンでの戦争について国防省
を告訴する構えを見せている。
エリツィン大統領から死亡した兵士の数を知ることを求める兵士の母委員会は、
入手したさまざまな情報から判断すると、1000人を越える兵士が死亡していると
いう。
(1999/12/26 - Zaman Gazetesi)
チェチェン戦闘員は約60人のロシア傭兵を捕虜とした。その半数近くがダゲスタ
ン人である。
捕虜たちの話によると、彼らは「(戦闘に加わらなければ)殺す」との脅迫のも
とで、強制的に攻撃に参加させられたという。 (1999/12 - Kavkaz Center)
12月30日、インタファクスとのインタビューにマスハードフ大統領は、「たとえ
戦闘が10年続くとしても、ロシアはチェチェン人のチェチェンを征服することは
できない」だから、とマスハードフ大統領は続ける。「政治的解決が早ければ早
いほど、その分多くのチェチェン人とロシア人の生命が助かることになる」
(2000/01/03 - RFE Newsline)
日本の報道も含めてこれらの情報の真偽を確かめるほどの知識をわたしは持って
いませんし、その事実の究明が権力者の発想のまねごとならば興味はありませ
ん。
ただ報道写真をみて気になるのは、年齢まではわかりませんが若者の姿も混じっ
ている兵士たちの表情です。そこに写った後の彼らの運命です。
武器を持つことやたたかうことが、自らの意思であろうかという思いはいつもあ
ります。
どんな政治的、経済的、歴史的理由がある「正義の武力」でも、それは国家の利
益を考えるものたちの間での問題。私たちは人権と平和の問題として、チェチェ
ンでの「大量虐殺」を告発し、道理を求めていけば、これ以上の犠牲をくい止め
る道を見つけることができるのではないかと思います。
ロシアはNGOやマスコミの介入を拒否しています。しかしそれらが私たちの
責任回避の言い逃れにはなりません。軍隊の侵略の地での残虐行為の証言、空襲
の廃墟やベトナム戦争の映像、各地の難民の姿の記憶があります。そしてこの国
での災害時の棄民施策と重ね合わせただけでも、医療も食料も生活品も届かない
チェチェン市民の今おかれている状況がいかに過酷であるかは容易にわかること
です。
この国で「南京大虐殺」の情報が国民に隠蔽され、PKOの「国際貢献」効果
で自衛隊が容認され、「不審船」報道を前後して戦争法案の賛否が逆転したこと
を考えれば、ロシア市民がおかれている立場も想像に難くありません。ロシアの
悲劇はこの国の市民の将来ともなり得るものです。
市民平和基金ではチェチェン紛争難民支援キャンペーンと、ロシア大使館への要
請行動を行っています。HPに日本山妙法寺の寺沢潤世さんや戦禍のチェチェン
に直接取材したジャーナスト林克明さんの報告が載っています。すべてを理解す
ることは不可能ですが、日本の報道からは知ることができないチェチェン市民の
姿を伝えています。
わたしはすぐには入手できませんが、
市民平和基金 http://www2u.biglobe.ne.jp/~cfp/top.htm より
戦禍のチェチェンに直接取材したジャーナスト、林克明さんの週刊誌連載がいよ
いよはじまりました。今号では、グルジアからのチェチェン入国から、破壊され
た首都グロズヌイの人々の声、そしてチェチェン共和国大統領アスラン・マスハ
ドフへのインタビューなどが記されています。
『メンズウォーカー』1月18日号(角川書店)。連載二回目の次号は1/20(木)発
売。
「複雑だけれども、最終的には、もともとチェチェンはロシアでなかったところ
なのだから、ロシアの支配には我慢できないという人はいまだに多いです。この
単純だが重い事実を忘れてはならないと思います。」(林克明さん)
以下日本の報道
北海道新聞が比較的詳しく報道しています。直接チェチェン市民の姿を知ること
はできませんが、かいま見ることはできると思います。
【モスクワ99/12/25共同】
タス通信などによると、ロシア連邦軍が完全包囲した南部チェチェン共和国首
都グロズヌイで25日朝、連邦軍側のチェチェン民兵部隊やロシア内務省特殊部
隊が市内中心部へ向けて一斉に進攻を開始し、激しい戦闘状態となった。首都に
は最大で5万人の市民が残っているとされる。
【毎日1999年12月27日(月)】
[モスクワ 26日 ロイター] ロシアの「ヤブロコ」と「祖国・全ロシ
ア」の2政党は、ロシア軍によるチェチェン共和国進攻のペースに対する懸念を
表明。
共産党などの他の有力政党の指導者らは、プチン首相が取っているチェチェン
共和国の分離独立派に対する強硬姿勢への支持を表明。
【モスクワ30日時事】
タス通信によると、ロシア南部チェチェン共和国の首都グロズヌイ郊外で取材し
ていた欧米の記者ら7人が29日、ロシア軍に一時拘束された。7人は内務省当
局で事情を聴かれた後、30日未明に釈放された。
ロシア外務省は7人はロシア軍およびチェチェン代表部の取材許可を取得してい
なかったと説明。
【ワシントン31日共同】
米国防総省当局者によると、ロシア軍は31日、対チェチェン共和国攻撃で、短
距離射程のスカッドミサイル3発を発射した。米国の航空宇宙防衛軍(NORA
D)の軍事衛星が網がロシア軍のミサイル発射を発見した。対チェチェン作戦で
のスカッド使用が報じられたのは初めて。
【モスクワ1日共同】
ロシアのエリツィン前大統領の辞任に伴い就任したプチン大統領代行は、代行就
任から一夜明けた1日朝、プチン氏は夫人とともに進攻作戦継続中のロシア・
チェチェン共和国を突然訪問、連邦軍兵士に勲章を授与し、「連邦の解体に終止
符を打つことが主要な任務だ」と激励。
【ワシントン1日】
クリントン米大統領は1日、ロシアのプーチン大統領代行と電話で協議し、緊密
な米露関係の維持に努める意向を表明。約10分間の電話の中でクリントン大統
領は、チェチェン問題など両国に対立点があることを認めつつ、多くの分野で米
露が共通の利害を持っていることを強調、今後はプーチン大統領代行との個人的
関係を強めながら、両国の協力関係を維持・発展させる意向を伝えた。
これに対しプーチン大統領代行は、政策面での対立はあっても「核心となる問
題」では一致していると述べ、大統領代行就任前からクリントン大統領とは「良
好な会談」を続けてきたと指摘。また、ロシアの民主化や市場経済化の推進にも
努力する意向を表明。
[毎日新聞1月2日]
【モスクワ8日】
タス通信によると、ロシア南部チェチェン共和国内でテロリスト掃討作戦を展開
しているロシア軍司令部は7日夜、首都グロズヌイから市民を退避させるため、
空爆や砲撃など大規模攻撃を一時停止することを明らかにした。
北カフカス軍管区副司令官のトロシェフ中将の説明によると、首都に残った武
装勢力が、有毒化学物質を用いた地雷を敷設している地域があり、この地域で攻
撃の一時中止を決めた。副司令官は「武装勢力は一般住民を人間の盾として利用
しており、(化学物質の拡散により)環境上の危険が予想される。軍には化学物
質への対応手段があるが、民間人にはない。このため攻撃を一時中止した」と説
明した。化学物質の具体的内容については言及はなかった。
同時に副司令官は、武装勢力の完全排除を達成するまで作戦を遂行する姿勢を
強調した。
チェチェン共和国のサイドゥラエフ議会議長は8日、「一時中止はロシア軍の
部隊再編成と指揮官交代に関連したもので、政治的な決定ではない」との見方を
明らかにした。
[毎日新聞1月8日]
[北海道新聞01月09日]
【モスクワ8日】
ロシア南部チェチェン共和国の首都グロズヌイ制圧作戦の一時停止に追い込まれ
た同国連邦軍は七日、東部、西部両方面部隊の現地司令官二人を交代した。「通
常の人事異動」としているが、作戦進行中の交代は極めて異例。
連邦軍側は自軍兵士の損失を最低限に抑えるため、砲撃や空爆を主要な攻撃手
法とし、武装勢力の軍事拠点や施設に打撃を加え、その上で敷設されている地雷
を撤去して首都進攻のための「回廊」を確保。さらに、武装勢力の掃討に移り、
制圧範囲を拡大する―との戦略だった。
ところが、首都に立てこもる武装勢力側は建物と建物の間にコンクリート壁を築
いて連邦軍の進撃を阻んでいる。また、空爆も期待された効果を上げていないと
いう。武装勢力側は連邦軍兵士を町の中に深く誘い込んだうえで、待ち伏せした
兵士が攻撃を仕掛ける、得意のゲリラ戦を展開している。このため連邦軍側も容
易に中心部へ接近できない。
[北海道新聞01月10日]
【モスクワ9日】
ロシア南部チェチェン共和国で続くロシア連邦軍とイスラム武装勢力との戦闘
で、武装勢力幹部は九日、ロイター通信に対し、連邦軍を敗走させたと語った。
タス通信によると、首都では九日、連邦軍が大規模攻撃を停止した後も激しい
戦闘が続いているほか、首都から約二十キロ南東のシャリで同日、武装勢力と約
四時間にわたって交戦となり、連邦軍側の二人が死亡、一人が負傷した。
AP通信によると、連邦軍兵士らが八日、「最近の数週間で、いくつかの部隊
では半数が死傷した」と証言。別の兵士は「実際の死者は公式発表の二、三倍だ
ろう」と語った。連邦軍は七日から首都への大規模攻撃を「住民の安全確保」を
理由に停止しているが、民間の独立テレビは八日、予想以上の人的被害が関係し
ている可能性もある、と伝えている。
[北海道新聞01月11日]
【モスクワ10日】
ロシア民間の独立テレビなどによると、同国南部チェチェン共和国に進攻したロ
シア連邦軍と、イスラム武装勢力との戦闘は十日夜(日本時間十一日未明)、首
都グロズヌイとその約十五キロ東のアルグン、約二十キロ南東のシャリの三カ所
で局地的に続き、連邦軍側の発表ではシャリで武装勢力約百五十人が死亡した。
一方、連邦軍北カフカス軍管区のカザンツェフ司令官は十日夜、ロシア公共テ
レビのインタビューで、アルグンとシャリについて「連邦軍の管理下にある」と
述べ、戦闘ではロシア側が優勢に立っているとの認識を強調した。
【モスクワ10日】
ロシア・チェチェン共和国で軍事作戦を展開しているロシア連邦軍は十日、要衝
アルグンなどで、反攻に出た三千人以上のイスラム武装勢力と激しい戦闘に入っ
た。同日までの一昼夜で、連邦軍側の死者は少なくとも二十七人、負傷者は三十
人以上と、昨年九月の進攻開始以来最大の犠牲者を記録。紛争は長期化の様相を
さらに色濃くしている。
反攻を受け、セルゲーエフ国防相は同日、首都グロズヌイへの大規模攻撃の停
止命令を撤回した。
タス通信などによると、武装勢力が、住民を人質にした。三カ所、二つの集落
で激しい戦闘が続いている模様だ。
グデルメス近郊では、救援に向かっていた内務省の補給部隊や応援部隊の装甲
車、戦車の車列が襲われ、二十六人が死亡、三十三人が負傷した。アルグンでは
連邦軍側に少なくとも死者一人、負傷者四人が出た。
連邦軍北カフカス軍管区のカザンツェフ司令官は十日、アルグンなどに戒厳令を
敷き、武装勢力への対策を強化、「解任」との見方も出ていた現地司令官二人の
交代を撤回した。 カザンツェフ司令官は、一連の武装勢力の攻撃について「連
邦軍を首都から引き離すためだ」と指摘、大規模な反撃ではないとの見方を示し
た。
【モスクワ共同2000-01-11 】
ロシア南部チェチェン共和国で大規模な反攻作戦に出ていたイスラム武装勢力
の主要部隊は11日、連邦軍側との激戦が続いていた要衝のシャリとアルグンか
ら撤退した。タス通信が伝えたもので、第2の都市グデルメスからも撤退した。
これにより、9日から始まった反攻はいったん収束したものとみられるが、武装
勢力は今後も同様のゲリラ作戦を続ける見込み。
[北海道新聞01月12日]
【モスクワ11日】インタファクス通信などによると、ロシア南部チェチェン
共和国に進攻したロシア連邦軍は十一日、イスラム武装勢力の反攻が続いていた
首都グロズヌイ周辺の主要拠点であるシャリを制圧した。この戦闘の巻き添えで
地元住民ら二百人―二百五十人が死亡した、との未確認情報もある。武装勢力側
は、今後も連邦軍への攻撃を継続する方針を宣言。
連邦軍の発表によると、十日から十一日にかけての戦闘で、連邦軍側は十一人
の将兵が戦死、武装勢力側も約八十人が死亡した。
プチン大統領代行兼首相は十一日、「武装勢力の掃討作戦を活発化させる。た
だ戦術を変える必要はある」
セルゲーエフ国防相も「連邦軍の管理する領土が拡大したことに対応する措置
が取られていなかった」
一方、武装勢力幹部のサイダエフ作戦局長は「今後も他地区の解放を段階的に
進める」と述べ、反攻作戦を拡大する方針を表明。同時に、今回の反撃について
「チェチェン問題が軍事的手段だけで解決できないことを示すためだ」とも強調
し、ロシア政府に和平交渉の再開を呼び掛けた。