Date: Sun, 09 Jan 2000 18:58:13 +0900
From: Aoki Masahiko <btree@pop06.odn.ne.jp>
To: aml <aml@jca.ax.apc.org>, keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 2247] 「思いやり」は「払い戻し」か?
MIME-Version: 1.0
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X-Sequence: keystone 2247
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 瓦防衛庁長官が年明けに訪米したのはご存じのとおり。国防長官と会談して、
名護の新基地に「期限」を設けることと、「思いやり」負担の若干の軽減の「許
し」を得ることが2大テーマでした。
 間違いなく今年はこの2つのテーマが安保の最大の問題になり、相当もめるこ
とも間違いありません。ところが、ペンタゴンのブリーフィングでやり取りの詳
しい中味が出るかと思ったのですが、ほとんどなく、以下に転載したような記者
団とのやり取り(「その話は出たらしいが詳しいことは知らん」という報道官の
そっけない答えだけ。いかに軽く見られているか。
http://www.defenselink.mil/news/#BRIEFINGS
しか公表されていないよう)、日本の報道陣に防衛庁が明かした内容しか(新聞
報道のとおり)見ることができていません。詳しい報道をご存じの方はおられる
でしょうか。 

 日本の防衛庁長官が、米国防長官に「もの申す」のは異例のこと。大変な決心
と恐れを持って会談に臨んだのですが、コーエンの方が先に「日本の気前のよい
(思いやり)支出には、議会も満足しておる」と持ち出し、機先を制されてしま
い、「お言葉ですが、国民の税金ですから」と反論?するのが精一杯。名護の基
地「期限」問題も事実上相手にされず。
 ホントに変な話で、「思いやり」予算も基地移転も、金を恵んでもらう側が一
方的に自分の都合だけをまくし立てている。半世紀の間いわば「国を売る」形で
安保条約を維持してきた保守政治家も、ここまで屈辱的な扱いを受けてはそろそ
ろキレないと。会談中、瓦長官の頭の中には次のような沖縄出身のグループの歌
が駆け巡っていたのでは?
♪気づいたの〜あ−なたが こ〜んなに お金が欲しいこと
♪出て行って ま〜さかね そんなこと言えない
♪出て行って でもま〜さかね そんなこと言えない

 「思いやり」予算については、2001年3月に現在の特別協定の期限が切れます
が、予算編成を考えると今年の前半に合意しておかないといけない。不景気な日
本が好景気のアメリカに巨額のカンパをするのはおかしいと、少し減らさせても
らう話を持ち掛けたいのに、アメリカの方は航空機の整備費など新たな項目を付
け加えたい意向。
 米側は、「もし減らすようなら、議会が黙っていない」と脅しをかけています。
一方日本も、「国民の税金だから」と、珍しくここでは納税者を盾に。結局、日
米の納税者がご都合主義の両政府によっていわば主役の座に引きずり出されてし
まったわけです。

 これまでは納税者は蚊帳の外に置かれてきたわけですから、むしろ歓迎すべき
状況と言えるでしょう。日本の納税者がアメリカ国民を説得することができれば。
そこでアメリカではこの「思いやり」がどう理解されているかです。
 先の防衛庁長官訪米関連のブリーフィングで気になる質問がありました。
        Q:  Did the topic of the Japanese desire to limit the reimbursement
that they do for U.S. forces in Japan and perhaps put a cap on that, did that
topic come up?

アメリカ人の記者でしょうが「思いやり予算」をreimbursementと一言で表現して
います。reimburseというのは「不当に払わされた金を払い戻しする」というよう
な意味で、例えばポテトチップスにかびが生えていたので送り返したらメーカー
から代金と送料が送られてきた、着物に車で泥を付けられたのでクリーニング代
を負担させたとか、一時的に立て替えていたものを払い戻しする行為を言うはず
です(この理解間違ってたら訂正してください)。
 アメリカ人は「思いやり」を、米軍が不必要に払った分を「年末調整」として
受け取っていると誤解、あるいはそのように報道されているのではないでしょう
か。アメリカが正当に受け取るべき金を日本人はケチろうとしている、そうアメ
リカのマスコミ、従って議員も考えているフシがあります。
 同じものを日本人は、「気の毒な人に施し」と理解し、アメリカ人は「当然の
権利としての払い戻し」と考える。これでは喧嘩になります。正しい「訳語」を
定めて議論をしないといけない。
 ご存じのようにアメリカ側には、金丸新の造語である「思いやり」予算という
言葉のニュアンスはあまりにも侮蔑的であるので伝えられていません。私はだい
ぶ昔ですが、「思いやり」って英語でどういうのだろうと、このニュースの時だ
け英語モードに切り替えて聞いたのですが、「あれっ!言わなかった」。「思い
やり」はとばして単に日本側駐留経費負担とだけ言うのが普通です。英字新聞で
も同様。日本語のできない在日米軍兵士はまったく日本でどう表現されているか
知らないはずです。
 米人には最初不愉快を与えるかもしれませんが、やはり真実を伝えるべきでし
ょう。「思いやり予算」をどう呼ぶべきか、きちんと決めて共通の議論の土台と
すべきでしょう。訳語案をひろく募集したいと思います。今年を逃せばチャンス
は新々協定の時まで待たねばなりません。今年議論になれば、普天間代替基地問
題も全く違った展開を取ることは間違いありません。

 ちょっと気になるのは日本のマスコミの姿勢。日米関係悪化を恐れるあまりか、
最近はNHKニュースなどでも日本人向けにさえ「思いやり」の言葉を使わなくなっ
ていると思います。この点はNHK「ワッチャー」の方で詳しい人にお願いします。

 最後にこの問題に関連して米側の最新のofficialな資料の紹介です。
 米国21世紀の安全保障戦略に関する大統領の議会への報告書で、
A NATIONAL SECURITY STRATEGY FOR A NEW CENTURY
THE WHITE HOUSE   DECEMBER 1999
が先日公開されました。
http://www.whitehouse.gov/WH/EOP/NSC/html/documents/nssr-1299.pdf
からPDFファイルとして入手できます(120K程度)。一瞥したところ「毎度おなじ
み」の内容で新味はありませんが、そこから「思いやり」に関する記述を引用す
ると、
Japan's generous host nation support for the U.S.
overseas presence also serves as a critical strategic
contribution to the alliance and to regional security.
 またしても"generous"という表現(generous=giving freely<さあ泥棒もって
け、とくれてやる>)が使われています。

−−−−−以下普天間と思いやり関連部分だけ抜粋転載----------------
= N  E  W  S      B  R  I  E  F  I  N  G
=
= OFFICE OF THE ASSISTANT SECRETARY OF DEFENSE
= (PUBLIC AFFAIRS)
= WASHINGTON, D.C. 20301
====================================================
DoD News Briefing
P.J. Crowley, PDASD PA and Craig Quigley, RADM, USN, DASD PA
Thursday, January 06, 2000 - 2:00 p.m. EST
 

        Q:  I'd like to ask about yesterday's talk between Secretary Cohen
and the Japanese secretary of defense agency.
        And in such talks Japanese secretary mentioned about a limitation of
15 years of limitation of the U.S. base in Okinawa as opinion of --
(inaudible) -- of Okinawa people.  And I'd like to know how did the Secretary
Cohen accept that issue of limitation?  And also, I'd like to know whether he
is ready to talk about that in the future with Japan or not.
        Admiral Quigley:  I don't know if that topic came up between the two
men in their discussions.  If it did, it has not been -- I am not aware that
either nation is ready to release the results or a final decision in that
regard.
        All topics are on the table when we meet with as close a friend as
Japan.  That is one of our most important bilateral security relationships
around the world.  But even in such a close relationship there are
differences between good friends.  And some of these issues are more
difficult than others to work through and take more time than others to work
through.  When that issue is worked through, I'm sure that we will make an
announcement in that regard.  But in the meantime, I don't think it would be
helpful to be -- give it a higher profile than it deserves because it is a
tough one to work through for both nations.
        Q:  Related question.
        Admiral Quigley:  Sure.
        Q:  Did the topic of the Japanese desire to limit the reimbursement
that they do for U.S. forces in Japan and perhaps put a cap on that, did that
topic come up?
        Admiral Quigley:  I'll take that question.  I don't know.  I saw the
report on that from I think two days ago.  But I don't know if that came up.
 

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   青木雅彦
  Aoki Masahiko
btree@pop06.odn.ne.jp
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