Date: Mon, 03 Jan 2000 23:59:00 +0900
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Subject: [keystone 2223] ICC、NATO空爆の違法性を調査
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 昨年のNATOの「人道的」空爆が国際刑事裁判所(ICC;the International
Criminal Court)の訴追を受けるかもしれないというニュースです。
AP通信の
04:25 PM ET 12/28/99
NATO Bombing Conduct Probed
By JEROME SOCOLOVSKY Associated Press Writer
記事が伝えています。この記事以外に報道をご存じの方は教えて下さい。
 この報道によると、ICCの主任検察官 (chief prosecutor)の Carla Del Ponte
氏は、 NATOの空爆について、部下に報告を作成することを命令。この報告書の内
容は秘密である。
 上のAPの記事の要点を箇条書きにすると、
・この報告書を作成するように要請したのは、ロシア国会議員、カナダの法学者など。
・NATOスポークスマンはこの問題についてコメントを拒否。
・この報告で西側の戦争犯罪が確認できたとしても、起訴に至るかは極めて疑わ
しい。現在のICCの旧ユーゴー法廷では容疑者の逮捕を西側に頼っているから。
・Del Ponte氏はNATOの問題より他の調査を優先させると語っている。

 というようなことなので、歴史上初めて「西側」の軍人や政治家が戦犯として
訴追される可能性は低いのです。そもそも裁判所を設置しようとすると安保理で
拒否権を使われてしまう。しかし一方で、93年に旧ユーゴーでの戦争犯罪を裁
く ad hocの国際刑事法廷が安保理合意で設置されて以降、ルワンダなどでも同様
の法廷が設置され、「西側の恣意的な道具」と見られていたICCが、少なくとも
「調査」をやったということは一歩前進ではないでしょうか。本当はこの報告書
を公表して欲しいのですが、政治的問題になってしまうので無理でしょう。
 ICCが西側や常任理事国の戦争犯罪も取り上げるようになる、つまりクリントン
大統領やエリツイン前大統領が被告席に座るようになれば、名実共に公正な「国
際法廷」になるでしょう。20世紀中には無理でしょうが、21世紀の早い時期
にそうしたいものです。

 「人道的」空爆が国際人道法に反するとして起訴されるとしたらこんな皮肉は
ありませんが、考えて見るとこの時期に日本は「周辺事態法」を成立させて、ア
メリカの戦争に無条件で協力することを約束しました。「平和憲法」の日本が、
戦争犯罪の共犯となることもあながち有り得ないことでなくなってきたわけです。
日本の政治家は、西村信悟を筆頭に「戦争犯罪」の概念がないようなので、気に
かけていないのかもしれません。

 ICCの国連との関係はすっきりしないようです。まだまだ国際政治の駆け引きに
翻弄されています。
 ICCの成立の歴史や、国際法上の位置付けについては
http://www.un.org/icc/
特に
http://www.un.org/icc/backinfo.htm
ですが、日本語で説明したページはないのでしょうか。
 

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   青木雅彦
  Aoki Masahiko
btree@pop06.odn.ne.jp
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