報告
中澤啓介氏


 9月号の王国宣教には6月のエホバの証人の伝道者数が載っていますが、22万人強となっています。4月には「主の記念式」(キリストのあがないを記念して行われる、エホバの証人の唯―の式典)があったためか、伝道者数の増加が見られましたが、その後も減少傾向が続いています。今年中には、エホバの証人の伝道者数は21 万人台になると思われます。

 このように減少傾向が続いている理由は、内部の溶解現象が「ものみの塔」で起きているからだと考えられます。一人のエホバの証人が月に40時間伝道すると、年間の伝道時間は500時間になります。22万人が同じように伝道すれば、年間の伝道時間は一億時間にもなります。これだけの時間を費やして伝道しても、エホバの証人の数は減り続けているわけです。
 「ものみの塔」を出版社にたとえるならば、一億時間働いてもなお、雑誌の購読者が減っていることと同じです。何故このような現象が起きているのでしょうか?それは端的に表現すれば、「ものみの塔」が欠陥商品を売っているからではないでしょうか。そうとしか考えられないと思うのです。
 もちろん、外の世界が宗教に対して厳しくなっていることも事実です。特にオウム真理教の事件以来、宗教に嫌悪感を抱く人々が増えました。しかし、エホバの証人の減少には、他に原因があります。

 日本のエホバの証人の増加率は、今年は確実にマイナス1%になると思われます。フランスの成長率はマイナス3%、ヨーロッパ全体でマイナス1〜2%です。情報化社会のこれらの地域では減少しており、情報化が遅れている地域で増加傾向が見られます。すなわち、情報の統制ができなくなると、「ものみの塔」の内部の溶解現象が起きると考えられるのです。

 カルト団体は外部からの迫害があった場合には、むしろ内部での結束が強くなり、組織が崩壊することはありません。しかし、このようなカルト団体も内部からの崩壊には弱いのです。 「外からの情報が入り、組織の間違いに気付いて脱会する」という内部崩壊が、「ものみの塔」で起きているのです。外部からの情報によって内部崩壊することが、一般の宗教団体と異なる点です。

 従って、内部からの崩壊を起こすように仕向けていくことが重要です。そのためには情報を与えること、特に被害者全国集会のような団体からの情報が大切になります。

 1980年代のニューヨークのべテル(ものみの塔の本部)には50 の聖書研究グループがありました。このグループの中から200人がエホバの証人を辞めています。聖書を学んだ結果、組織の間違いに気付いたからです。そしてこの頃から、情報管理が厳しくなりました。この出来事からも、 「ものみの塔」にとって情報統制がいかに重要なことかが分かります。

 また、1955年にミルトン・ヘンシェルが会長に就任してから、教理の変更がされています。そのため、最近のエホバの証人は自信がなくなっています。昔の証人は確信をもって伝道をしていましたが、最近の証人は違います。このようにエホバの証人も時代と共にずいぶん変わってきています。

 さらにヨーロッパにおける「ものみの塔」に対する課税処置によって、彼らは益々厳しい状況に追い込まれています。証人たちも積極的にマスコミに対応したり、勉強会を行ったりしています。もはや、今までのような閉鎖的団体ではいられなくなっています。社会に認知してもらうために「ものみの塔」も必死です。

 裁判事件を起こしていますが、これらも「ものみの塔」にとっては不利になるだけで、メリットは殆ど無いでしょう。仮に輸血裁判や保護説得の裁判で彼らが勝利しても、信教の自由が認められたということだけです。むしろ世間では、裁判を起こす人騒がせな団体としか評価されず、教勢の拡大には役立たないでしょう。

 「ものみの塔」が巨大な組織として存続するには、現在の危機を乗り切る必要があります。信者が減り続けジリ貧となるか、あるいは打開策を講じて復活するかは、ここ数年が勝負になると思います。今後の「ものみの塔」の動向にさらに注目していきましょう。


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