報告
ジャン・ドウゲン氏
(エホバの証人間題カウンセラー)

 第1回の被害者全国集会から、昨年を除いて、毎回出席させていただいております。今までは東京で開催されていましたが、東京で話をする時には標準語で話をするように気を付けなければならず、いつも緊張していました。今日は神戸の開催で、他の人の話の中にも関西弁が出てきますので、アットホーム的にリラックスして話をすることができ、感謝しています。

 この被害者集会が神戸で行われることは、大変意義のあることです。なぜなら、戦後の日本における「ものみの塔」の発祥地でもあり、また、エホバの証人救出活動の発祥地でもあるからです。

 さらに昨年から始まった草刈裁判の行方が、これからの救出活動の将来を左右しますので、いろんな意味から、神戸において被害者全国集会が開催される意義は深いと思います。

 今日は皆さんに、地球の反対側で行われた一つの集会を紹介したいと思います。一見関係のない集会のように見えますが、ものみの塔のことを理解し、これからの活動のために欠かせない情報だと思いますで聞いて下さい。

 その集会は今年の6月14日に、ワシントンDCの政府機関の一室で行われました。ものみの塔を代表するフィリップス・ロウンリス氏が国際交渉取り扱い委員会に出席して、発言の場を与えられました。彼の発言したテーマは「西ヨーロッパにおける宗教的マイノリティー」というものでしたが、その内容は「小さな宗教団体に対する政治的圧政」でした。

 皆さんも御存じのように、西ヨーロッパでは「ものみの塔はカルト教団である」と認定されました。その結果、ヨーロッパにおいて、信者自身を含め組織も大きな被害を受けていることを、アメリカの議会の前でロウンリス氏はアピールしました。私は彼のスピーチの全文を読みましたが、ふだん組織が認めたがらない事実が書かれていました。

 たとえば、ヨーロッパで活動が低下していること、人数が減っていること、経済的なダメージを受けていること、などが細かく書かれています。アメリカの議会を前に、ものみの塔があえて自らの問題を認めることは例外的なことです。
 このような行動に出た「ものみの塔」のねらいは何でしようか?

今年の6月14日、ワシントンDCのアメリカ議会において、ものみの塔の代表者が発言の機会を与えられました,代表者のロウンリス氏は、ものみの塔がヨーロッパでカルト扱いを受け困っている現状を報告しました。アメリカ議会の前で「ものみの塔」がこのような報告をした意図はどこにあるのでしょうか? 代表者が語った全文を読むと、その理由がわかります。

 この議会でわざわざヨーロッパでの苦境を訴えた理由は、経済的なこと、お金にあります。ロウンリス氏のスピーチの中に、はっきりと 「It’s all about money」 と述べられているからです。皆さん、どうかこのことをしっかりと頭に入れておいてください。 ものみの塔にとって一番大切なことは「お金』のことなのです。

 ものみの塔を宗教団体として考えると、教義や信条よりもお金にとらわれることが不思議に思われることでしょう.しかし、ものみの塔は宗教団体ではなくて、一つの会社だと考えてみたらどうでしょうか。彼らがお金にこだわる理由が良く理解できるのではないでしょうか。

 第二代目会長のラザフォードの時にあった有名な話しがあります。ラザフォードの友人が彼を訪ねて来て、彼に次のように言ったそうです。 「あなたが経営しているこの会社(ものみの塔のこと)のように、儲かる会社を私にも作らせてくれ。」と。

 ものみの塔は120年の歴史の中で、宗教活動をしていると言いながら、主に『出版活動』をしてきました。この団体は、宗教団体の姿を借りた、出版会社なのです.ヨーロッパではその実熊が見抜かれて、宗教法人の資格を剥奪されているのです.

 現在、ヨーロッパのいくつかの国では、ものみの塔に対して税金がかけられています。例えばフランスでは、今までの出版活動によって得られた収入に対して課税が行われていますが、その税額は50 億円とも70億円とも言われています。ドイツでは組織の所有している不動産に固定資産税が請求されていますし、スウェーデンでは支部で働く証人たちに対して、一般のサラリ―マンと同じ課税がされています。

 報告の中では、支部で奉仕している証人たちの生活を修道院のような生活と説明しています。支部で生活している人たちには、食事も部屋も散髪もクリーニングも支部の建物の中でまかなわれ、無料で与えられています。支部の中に居る証人たちは修道士よりも快適な生活が保障されているのです。ですから、月々の手当てが一万円位でも生活できるのですが、この一万円の手当てに対して税金がかけられ、その支払さえ渋っているのが実情です。

 信者であるエホバの証人は、本部や支部の大きな建物や立派な施設を誇りに感じています。施設や建物が整っていることがエホバ神の祝福のしるしであると教えられ、そのように信じています。 しかし、部外者の私たちがそのような施設を見たときにまず考えることは何でしょうか。それは「その施設を建てたお金はどうやって集めたのだろうか?」という素朴な疑間ではないでしょうか。皆さんはこのようなことを考えたことがあるでしょうか。

 ブルックリンにある「ものみの塔」本部は、ブルックリンの土地を買い占めています。アメリカでは宗教法人として認められていますから、土地の固定資産税は支払わなくても良いわけです。地元の人たちは、税金も払わない組織が土地を独占することに対して、怒りを爆発させています。

 このような組織が成功する秘訣は何でしょうか?秘訣の一つは、「ただ働き」です。言葉を変えれば、信者たちの奉仕です。人件費のかからないシステムが、莫大なお金を生み出すわけです。

 印刷の輪転機を動かす人も、印刷物を運ぶトラックの運転手も、戸別訪問して印刷物を配布する人も、給料はもらっていません。彼らはすべて信者です。奉仕に名を借りた無料労働によって、これらの仕事が成り立っています。ものみの塔ほど人件費のかからない出版会社は、他に無いのです。

 私は7年間印刷会社で働いたことがあります。ですから、印刷の費用や手間ひまがどのくらいかかるかよく分かるのですが、印刷物にかかる実費は、実際には大変安いものです。

 「ものみの塔」誌や「目ざめよ!」誌などは100万部単位で印刷すれば、印刷にかかる単価は12〜13円位でしょう。販売する時の値段が高いのは、著者や出版会社、印刷業者、本屋がそれぞれマージンを取っているからです。これらのマージンがまったくかからなければ、本の売上による収益は莫大なものになるはずです.

 このように、成功の秘訣の一つは、ただ働きをさせること、ただ働きを納得する人を集めることです。

 「ものみの塔」はハルマゲドンが近いと言い続ける事によって、ただ働きをする信者を集めていました。ハルマゲドンが100年先、 200年先と言ったら、誰も一生懸命奉仕をしようとはしません。 「すぐそこまで近づいている」と言い続けることによって、信者の奉仕意欲や労働意欲をかき立ててきたのです。彼らに将来や老後のことを考えさせないようにしてきたのです。

 成功のもう一つの秘訣は、宗教法人による非課税を得ることです。これが西ヨーロッパで崩れつつあるので、ものみの塔は危機感を強めているのです。

 では、宗教法人による収入はどのくらいあるのでしようか。ものみの塔は数字が好きですので、伝道者の数、伝道時間、会衆の数、バプテスマを受けた人の数などを発表しています。しかし、決して発表しない数字があります。それはお金に関する数字です.

 皆さんは「お金の報告がない」ことを不思議に思われたことはありませんか?各会衆では会計報告がされていますので、証人の方々はそれで納得しているかもしれませんが、支部や本部にどれだけのお金が集まっているのかは、報告されたことがありません。誰にも「わからない」というのが実情です。

 1992年「ものみの塔」のアメリカ本部は、あるテレビ会社に年収を報告したことがあります。その金額は、アメリカだけで2,500億円でした。「最高ですか」の法の華が年間800億円の収入でしたから、その三倍以上の収入になります。ものみの塔がいかに「ぼろ儲け」をしているかが分かります。

 また、ものみの塔は収入を確保するために、絶えず税金逃れをしてきています。その一つの実例は、信者による自発寄付という方法に現れています。

 ものみの塔は1990年4月から集金方法を変更しました。それまでの冊子購読という方法を、冊子に対する信者の自発寄付という方法に変更したのです。その理由は、プロテスタント伝道師の冊子販売の売上に対して、アメリ力で課税が行われたからでした。

 冊子販売は伝道活動であるとして、この伝道師は収入に対して非課税を主張しました。裁判は最高裁まで争われました。この時、ものみの塔はこの伝道師の立場を支持する文書を裁判所に提出しています。彼らが「悪魔、サタン」と呼び、嫌悪しているキリスト教会の伝道師に味方したのです。それは自分たちの収人に同様に課税されては困るからでした。判決は3月に出ました。結果は伝道師が負け、10年前の収入までさかのぼって課税されました。

 この裁判に対する「ものみの塔」の反応は素早いものでした。2 月、3月号の出版物には定価の所が空欄になっており、4月号には「世界的な自発寄付により出版物が作られている」と書かれていました。さらに、5月号の冊子には、私たちは税金逃れをするような団体ではない、という記事まで載せています。

 このような経緯で、ものみの塔は先手を打ち、自発寄付を行うようになったのです。これも税金逃れの一つの手段なのです。イギリスでは寄付に対しては非課税という法律があります。そこで「ものみの塔」はこの法律を悪用し、慈善活動をしているように見せかけたダミー会社をイギリスに作って税金逃れをしています。皆さん、ものみの塔のすべては「お金」に行き着くことが分かります。

 今年、アメリカの一人の青年が、子どものころから長老に性的虐待を受けていたと裁判に訴え、勝訴しました。長老の賠償金は一億円だそうです。この青年は、長老を任命した組織に対して、さらに訴訟を始めています。その判決はまだ出ていませんが、ものみの塔は今後このような訴訟に対して、組織を守る方法を編み出していくものと思われます。

 個人が訴えられても、組織に責任がかからないようなシステムに変えていく必要があります。その一つの手段として、地域監督などの中間層の階級をなくす方法が考えられます。現実に、ものみの塔はその方向に動き始めています。

 神権組織として成り立っている間は、個人の問題であっても組織の責任が問われる可能性があります。そこで、責任逃れをするためには、中層階級をなくし、神権組織のシステムを廃棄していくものと思われます。

 各会衆、各長老の不始末は、その会衆や長老が責任を取らされ、組織全体に追及の手が及ばないようにするのでしょう。このような組織の変革のときも、「新しい光がもたらされた」として、信者に発表されることになると考えられます。

 草刈先生に対する訴訟についてはどうでしょうか。これも「お金」がからんでいると推測されます。牧師の説得を受けたエホバの証人の、どのくらいが脱会しているかと言うと、今までの実績からだいたい85%位になります。ものみの塔は最初、「脱会する人はわずかである」と出版物で言っていました。

 しかし最近は、牧師と話しをする人のほとんどが脱会する(エホバの証人の言い方では「悪魔に惑わされる」)と言っています。彼らもようやく私達のカウンセリングの成果を公に認めるようになったわけですが、別の言い方をすれば、それだけ強い危機感を持ち始めたということです。さらに、一人の証人の脱会によって、研究生や親しい証人が何人か一緒に脱会するケースが多いのです。

 私は、この信者の脱会による「ものみの塔」のお金の損失を計算してみました。信者一人の寄付が、仮に月5,000円としてみましょう。昨年脱会した婦人に尋ねたところ、彼女は月々50,000円の寄付をしていたそうです。ですから、月々5,000円の寄付は実際よりかなり少ないかもしれませんが、そう仮定してみましょう。

 年間400人のエホバの証人がカウンセラーたちによって脱会すると、付随して脱会する信者や研究生を合わせると1,200人は下らないと推定されます。これによる年間の損失額は7,200万円になります。おそらく実情はそれ以上でしょう。

 95年の年鑑を見ると、エホバの証人の伝道者の成長率は7%で、研究生は23万5882人いました。これが99年になると16万人に減少しています。皆さんの熱心な啓蒙活動によって7万人も研究生が減ったのです。仮に一人の研究生が月々2,000円の寄付をしていたとしますと、年間で18億2090万円の損失になります。

 「It’s all about money.」ロウンリス氏が述べたごとく、ものみの塔にとってお金の損失は、今大きな問題になっているのです。お金のかかる特別開拓者を減らしました。出版物の紙の質を落としました。王国会館を合併し、一つの王国会館を複数の会衆で使うようになりました。ものみの塔はいろんな方法で節約を始めています。

 アメリカのことわざの中に「牛が全部逃げた後で牛舎の扉を閉める」ということわざがあります。これは、もう手遅れだ、という意味です。ものみの塔が救出カウンセラーを訴える裁判を起こしていますが、これはこのことわざのように手遅れな対応だと思います。

 それは、カウンセラーによらない自力脱会者が増加しているからです。インターネットの情報によって組織の実態に気付き、辞めていくエホバの証人はこれからも増えることでしょう。

 今まで行われていた保護説得という救出方法は、これからはあまり行われなくなるでしよう。保護しなくても話合いができれば、その方が証人にとっても、家族にとっても、カウンセラーにとっても好いわけですから、「保護なしの説得・話合い」が増えていくと思われます。

 しかし 、保護説得にもいくつかのメリットがあります。ですから説得方法をケースによって選択することができれば、一番いいかもしれません。保護説得のメリットには、情報提供ができることと愛情表現ができることがあります。

 情報提供とは、信者だけでなく、家族にも情報提供することを指しています。正確な情報を提供することによって、家族の方にもエホバの証人の実態や知るべきことを伝えることができます。エホバの証人に対する理解者を増やすことができる、ということが保護説得の大きなメリットのひとつです。

 もう一つのメリットの愛情表現には、いろんな状況や場合が含まれます。例えば、家族が犠性を払い協力して救出に働くことが、家族の絆を深めることに役立つことがあります。また、保護説得を通して、それまでの生き方を見直すきっかけもできますし、このことが本人との関係を修復する機会にもなるからです。

 これからますます巌しい状況に追い込まれる「ものみの塔」の今後の動きに、さらに注目していきましょう。


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