講演T 

高山正治師


 イソップの寓話には「きつねとぶどう」があります。いたずら好きなきつねが森の動物たちを驚かせて遊んでいるうちにおなかが空いてきました。ちょうど棚にぶどうが実っているのを見つけました。きつねは腕を伸ばしましたが届きません。何度やっても届きません。森の動物たちはその様子をおもしろく見ていました。どうしても取れないと分かるときつねは「あんな酸っぱいぶどうは要らない」と捨てぜりふを残して去っていきました。これは自分の都合の悪いことに理屈を付けて自分の行動を正当化する「合理化」という行動です。ぶどうは酸っぱいという理由を付けて解消します。カルトは信者においしそうなぶどうを見せます。信者は手を伸ばして取ろうとしますが取れません。砂漠の逃げ水に過ぎない。それでも信者はぶどうを取ろうとします。信者は組織が提供する無理難題をこなしていくがそれでも達成できない。きつねは何度試みても解決できないと分かると不満が残ったままになる。どうしたらいいか問うますと、ある人は「はしごを用意したらいい」と言いました。このきつねは自分で答えを出しました。「酸っぱいから取れなくてもいい」で不協和を解消したんです。カルトはそんな不協和が起きたらどうするか。信者は自分の信仰が足りないからだとその場を納めることがあるでしょうが、カルトが提供するもので納得する。聖地に行ったら解決するとか、お金を出せば家族も先祖も救われるとか、です。解決しません。延々と難題をふっかけ引き延ばします。エホバの証人は世の終わりを計算します。統一教会は2013年の1月13日に神の完成の時が来ると言います。5年がちょうどいいと言う人がいます。30年先だと困るんです。来年だと言うと、「来なかったんじゃないか」と苦情が来る。
 ここで自己紹介をします。私は22年牧師をやってます。年は67才で、妻と、子ども2人、孫2人です。最初からカルトに関わってきました。カルトに関わると牧会に支障を来してきます。現在、開拓伝道をしてます。会堂を与えられました。最初に関わったのはエホバの証人でした。昔のクリスチャン新聞には私が王国会館の前に立っている写真が載っていました。夢中でやってきました。ウッド先生やドーゲン先生、草刈先生にも親しくさせていただきました。中澤先生は神学校の恩師でした。20人から30人のエホバの証人の救出に成功してます。2000年以降、救出が難しくなりました。22年間で統一教会、エホバの証人、摂理合わせて250人くらい救出してます。統一教会といっても、婦人、成年、学生とではそれぞれ異なります。摂理の元信者(女性)の方も今日ここに来ておられます。
 どうして救出できるのか、これからお話しします。異なる福音に惑わされている人、家庭を破壊されている人、人格が破壊されている人、社会が混乱している、それを黙って見ていていいのか――次世代のカウンセラ養成を目指してきました。期待はずれでカウンセラが起こってこない。若手の弁護士は育ってきました。それに比べて救出カウンセラは高齢化してきてます。救出カウンセラが少なくなってきました。
 おだやかな清流はまともな宗教です。氾濫して荒れた川はカルト宗教です。清流が氾濫して多くの者を飲み込んでいる時、何とかしなければと思います。源流はどこにあるかを知ってください。エホバの証人の歴史は19世紀のC・T・ラッセルから始まります。エホバの証人はアベルから始まったと言いますがそれに耳を貸す必要はありません。ラッセルの前にはバーバーがいます。その前にはミラー運動がありました。ミラーが1843年に起こると言われたキリストの再臨の予言は3回はずれました。今と同じく「七つの時」です。ミラーの後何人もが年代計算をします。バーバーはアドバンティスト派の牧師です。1874年を予言しましたが何も起こりませんでした。バーバーに師事したのがラッセルです。ラッセルが終末論を受け継ぎました。世の終わり、ダニエル4:23、2520年、BC607年から1914年をキリスト臨在の年と解釈しました。1914年はラッセルが初陣ではありません。ぱくりです。年代計算はすべてはずれました。はじめ年代計算はピラミッドの寸法から算出したのですが、さすがにそれはまずいとダニエル書4章を引きました。エルサレム崩壊から七つの時、2520年から1914年。これもBC607年崩壊説は間違いです。20年の誤差があります。カール・オルフ・ジョンソンがきづいて統治体に教えました。レイモンド・フランズが取り上げましたが、彼は切り捨てられました。その辺は『良心の危機』に詳しく書かれています。現役のエホバの証人が素直に読めばすべての証人は辞めますが、絶対に読みません。どういうふうに情報を提供できるか、工夫が要ります。『神の竪琴』268頁には1874年が世の終わりだと書かれています。「1914年の時に20才」から10才、0才と下がってきて、その人は今では94才になります。カルトは必ず教義を変えます。新しい光と持ち出します。信者が文句を言わない方法で教義を変えます。「きつねとぶどう」です。次に何かを持ってこないといけません。信者は後から提供されたものに付いていきます。長年捧げてきた犠牲のために自分の行動は正しいと思うが現実には矛盾があります。そこで新しいものを出します。すべてが無駄だと思いたくはありません。1994年はとっくに過ぎました。『目ざめよ!』1995/11/8号では、巻頭言を変えました。なぜいかさまを繰り返すのか。自分たちの組織は年代計算が許されていると思いこんでいます。確信的詐欺師集団です。恐怖で操って嘘をつき続けなけらばならない。最近の『聖書は実際何を教えてますか』217頁に変わった表現があります。「エルサレムが………ダビデの家系の王が王座を追われた時です」とあります。嘘というのは言い続ければ本当になります。
 しかし末端信者は純粋なのです。組織はそこに本物を提供します。ラブシャワーです。こんなに自分を理解してくれる、こんなにすばらしいものを提供してくれるものが今まであったか。残念ながら家庭にはありませんでした。会社にはありません。学校にもなかった。どこにもなかった。それを組織は提供してくれます。本気で提供してます。それがだんだん歩いている道が違ってくる。少しずつずらしていくんです。いつの間にか思ってもない所に居るんです。外の人はそれが見えます。本人はまっすぐきています。フェスティンガーの「予言がはずれる時」という本があります。地球に洪水が起きて全人類が滅亡する。宇宙船が来て特定の宗教だけが生き延びるという信仰です。キーチ夫人とその仲間がそのときを待っていた。しかし予言ははずれ、洪水はなかった。予言がはずれた翌日から伝道を始めました。宇宙船には定員があったから今までは伝道しなかっというのです。キーチ婦人は「熱心に祈ったから神が思いとどまった」と書いてます。エホバの証人の場合、信条世界、心の問題を理解しないで理論的に攻撃しても辞めません。カルト信者は下心があってやっているのではありません。責めても揺るぎません。言葉に出して攻撃するとたちまち心を閉ざします。家族はそれを理解してください。エホバの証人の場合、なぜ保護説得できないのでしょうか。本人の連絡を遮断して私たちが提供する情報を素直に聞いたら辞めます。でもできなくなりました。サイエントロジーが影響して裁判を起こしたと言われています。反カルト運動が反撃を受けました。エホバの証人のカウンセラーが集まり、保護説得をしないことを決めました。それ以外の方法で工夫しないといけません。ではどうしたらいいか。土曜の午後一時から熱心に勉強している家族がいます。一番大切なのは愛情です。情報提供に耳を傾けてもらうよう努力することです。
統一協会の話をします。統一協会は自分らはキリスト教だと主張していました。今はそれほどでもありません。他国では「世界平和統一家庭連合」と称してます。統一巨魁は文鮮明に始まった。1935年4月17日に山奥で祈っていたらイエスから指令を託されました。この4月17日はイースターではありませんし、日曜日でもありません。それが協会の源流です。教典は聖書だと言ってます。韓国では正しい神学的知識が欠け、異端が起こりました。血分けなどもありました。イ・ヨン・ド牧師から神秘神霊主義になります。以前の韓国の宗教はシャーマニズムです。韓国の宗教は仏教→儒教→キリスト教と分けられます。根底にはシャーマニズムがあります。統一協会も例外ではありません。韓国の宗教の特徴は救世主神話です。あちこちで自称救世主が出てきます。正しい神学ではなく異端が特徴です。メシア待望の中で異端・カルトが起きてきます。牧師は信者の家で祝福の祈りをします。除災が韓国のキリスト教に残ってます。統一協会もシャーマンと関係があります。現在では霊界の話を理解しないと統一協会を理解できません。そしてその入り口にはラブシャワーがあります。いったん入ると出られなくなるのには恐怖があるからです。霊界の恐怖です。エホバの証人の場合は、組織を抜け出られない恐怖です。どのカルトも同じです。入り口は本物を提供します。
 家族はどうしたら救出できるでしょうか。川が下流と下ると滝があります。滝壺に落ちます。舟はバラバラになります。舟から下りる方法を考えないといけません。方法は一つではありません。自主脱会、自然消滅、組織からの追放です。いったん舟に乗ったら、下りられません。性格がいい加減な人は別です。カルト組織の問題が見えてきます。辞めた人の中には人間関係で躓いている人が居ます。組織が居心地がいいと思っている人はやめない。嫌気がさして辞める人、不熱心な人、不熱心な人に反発する人、人から命令されるのを嫌う人、疑り深い人――こういう人はいつか辞めます。カルトでは、おかしいと思っても、それには深い意味があるんだと悟って考えるのを止めます。教祖のスキャンダルを知って辞める人もいます。「摂理」は女性スキャンダルを抱えていました。教祖は被害者から訴えられ8年間逃亡しました。現役信者は無実だとがんばっています。自然消滅――何十年信者をしていても金がない人には冷たい。活動はできない。組織にとってはその人はいてもいなくても同じです。遅くはありません。家族は根気よく受け入れましょう。組織から追い出されるケースもあります。フランズも追放されました。
 救出カウンセラは一言では言えません。組織が最初に提供するものは私たちの与えていないものです。本物です。代わりのものは、家族の愛があります。キリストの愛があります。カルトの愛は見せかけです。本物を私たちが提供する時、彼らは耳を傾けます。教義は間違っています。聞く耳を持たせないといけません。カルト信者に何を提供できるか。教義は勉強してください。しかし、教義の間違いを指摘しても辞めるとは限りません。


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