証人二世の報告
今日は話をする準備をしてこなかったので即興でやります。私は、四歳の時から二世として育てられました。父親は研究生でした。兄弟は四人いて、私はは末っ子です。父は男性としては関東で十番目に入るほどの昔にバプテスマを受けました。65年でした。一番上の兄は特開でした。私も30歳まで組織にいました。30歳でマインドコントロールと間違いに気づき、辞めました。
昨年春に上野動物園へ行きました。それはエホバの証人をやめてから会社で飲み会があったのですが、その席でたまたま、「動物園に行ったことがないよ」としゃべったところ、みんなから驚きの目で見られました。それまでライオンを見ていない、本物のキリンも見てない。でもなぜ動物園が気になるのか、分かりませんでした。それで気になって一人で行って来ました。入場券を買ってみると、小2のとき、上野にパンダが来ていたけどそこに行けなかった悔しさがこみ上げてきました。そのときのつらさが40になった今、心の中に残っていました。初夏、自分の置かれてきた状況で40歳になって初めてパンダを見た。悔しさと惨めさと、何とも言えない感情がわいてきて、自然に涙が出ました。考えてみれが家族旅行と言えば、証人の大会だけ。レクレーションはエホバの証人の野外集会だけ。集会、集会の予習、伝道………。朝から晩までエホバの証人の教えに浸りきっていました。旅行の思い出はエホバの証人に関係していました。中2の時、自分はこれで楽しいのかなと思っていました。いじめられました。居場所がエホバの証人の中だけにさせられました。兄も姉も特開、開拓者………。エホバの証人から離れることは考えられませんでした。
開拓者にならないなんて考えられませんでしたし、父親を裏切るなんて悲しいことでした。それで長野県松川町で21歳から4年間、働きました。組織からは強いマインドコントロールをかけられていました。その頃、たまたま父が脳梗塞で倒れましたので地元に帰らなければなりませんでした。帰郷してみると余分な時間ができました。ある日、開拓奉仕の出がけにテレビを見ていると山崎さんの記者会見を見ました。マインドコントロールにかかってましたので統一協会を辞めますと語っていました。それを見て、サタンは光の使いとして見せるため協会はマインドコントールを使っているんだなと考えました。それから二ヶ月して「マインドコントールの恐怖」が出ました。読んでいるうちに自分の組織と同じだと思えてきて手がふるえました。すぐに本屋の本棚にそれを戻しました。しばらくはその本は心の中で鍵をかけていました。三ヶ月後読みました。やはりエホバの証人はカルトでした。自分の選んだ人生を引き返せないし、エホバの証人を辞めたらすべてのつき合いを捨てることになります。三年悩みました。当時、私はエホバの証人のエリートコースを歩んでいました。巡回監督からは「長老にになるつもりはないか」と尋ねられたこともありました。長老になったら、もう辞められないと思いました。秘密でアパートを借りて突然、集会出席をなくしました。身を隠すように辞めました。マインドコントロールの本を読むとエホバの証人のマイナス、間違いを例示しているのではないかと思うほど書かれてありました。ある教会に行くと、外国の牧師の前に通されて、「私はエホバの証人です。最近ものみの塔に疑いを持っています。答えを得られるのはここかもしれません」と言いました。その牧師は「エホバの証人をよく知らなかった。あなたはものみの塔のリーダーを憎んでいるかもしれないが憎んではいけない。神は組織の人も愛している」と言っていました。ものみの塔は教会をさんざんけなします。教会の姿勢を見ると、どっちが真の組織なんだろうかと、疑いました。
エホバの証人を辞めるのが怖かったのです。「フリーダム」の名前で投稿しました。「エホバの証人を辞めるのは魚が砂漠に飛び込むようなものだ」とも書きました。でも辞められました。
辞めた後の後遺症は三つありました。まず浦島太郎の状態になっています。カラオケも知らない。挨拶も知らない。宴席で「締めの一本」も知らない。世に中の常識を教えられていなかったからでした。エホバの証人を辞めてから数年後、自分の本棚を眺めていると、気がついたことがありました。エホバの証人辞めてから買った本の表題を見てみると、マニュアル本が多いことに気がつきました。「……の法則」とか「……の方法」といったタイトルが多いのです。その理由は、組織のマニュアルに変わるマニュアルを探していたからでした。組織の中では、携帯電話を買ったらいいか、どんな音楽を聴いたらいいかといったマニュアルにあふれています。マニュアルに育てられたので社会に出ると組織のマニュアルに代わるものを探していのです。今では自分で考え、自分で結論を出すのが良いのだと思うようになりました。
エホバの証人は何でも裁く傾向があり、辞めた後もそれが残りました。エホバの証人は組織の内で霊性の高さ、子どもの育て方や教え方を裁く傾向があります。会社の同僚を裁いたり、偏見を持ったり、茶髪スタイルに軽蔑の心を持つ心が出てきます。白か黒かのパターンを止めなければいけないと気がつきました。ある本には、「人間には神のような善良な心とサタンのような邪悪な心がある」と書いてありました。その言葉は心に響きました。その必要がないと考えると軽くなりました。
大勢のエホバの証人が組織を辞めることにためらいを持っています。間違いに気づいても辞められません。それはすべてを捨てる、自分を否定するからで、だから恐怖があって脱会をためらわせています。ためらいは勝負がきまった消化試合と同じです。情報発信を続けてこそ、現役のエホバの証人が辞めるきっかけになります。辞めてから10年経ち、とても幸せです。今では社会とのつながりをもてるようになりました。自分に自信が持てるようになりました。それが現役のエホバの証人に対する答えだと考えています。