10/22 参議院 民主党 千葉景子議員の質問(抄)

次に、個人情報保護法案について質問いたします。
 個人情報を保護するための法律の制定は急を要する案件だと私も思いますが、自己情報に本人が関与する自己情報コントロール権が確保されることが最低限必要ではないでしょうか。この点について、総理の御所見をお伺いいたします。
 また、政府提出の個人情報保護法案は、憲法二十一条が保障している言論、表現、出版などの自由を侵害するおそれが大です。時の主務大臣の判断によって罰則規定が適用されることになり、その基準のあいまいさが以前から強く指摘されるところで、大臣による恣意的介入が懸念されます。これでは、本来ジャーナリズムが監視する権力が、逆にジャーナリズムを監視するということになりませんか。主務大臣が関与するという仕組みではなく、欧州諸国のように行政から独立した第三者委員会を設置すべきではないでしょうか。総理の御所見を伺います。
 私は、個人情報保護法案はOECDの八原則に基づいた明確なものにしなければならないと考えておりますが、政府案には多くの問題点があり、欠陥法案と断ぜざるを得ません。政府の個人情報保護関連法案は撤回し、新たな法案を再提出する以外に選択肢はないと考えます。この場で総理の決断をいただきたい。
 この際、重大な欠陥があるために継続審議となっている人権擁護法案についても具体的に質問します。
 まず、人権擁護法案では、人権委員会を法務省に置くとしております。国連からも強く指摘されているように、人権委員会の独立性を確保するためには、人権委員会は法務省ではなく内閣府に設置すべきです。権力を背景にした暴力、虐待、人権侵害が問題となっている刑務所や出入国管理施設を所管しているのは法務省なのですから、法務省が人権委員会を所管することは不適切です。
 また、地方にも人権委員会が必要です。
 第二点目は、報道機関の過剰な取材方法による人権侵害について人権委員会が介入できる点です。報道機関も社会の一員であり、人権侵害は許されませんが、国家権力が報道へ介入することは民主主義に不可欠な自由な報道への悪影響が懸念されます。直接介入するのではなく、報道機関に対し自主的救済の仕組みを作ることを義務付けるべきではないでしょうか。
 これらの点を修正することについて、総理から明確な答弁をお願いします。

○ 小泉純一郎
 個人情報保護法案についてでございますが、個人情報保護関連法案は、IT社会が進展する中、個人のプライバシー等の侵害を防止し、国民生活を守るための基盤整備として不可欠なものであり、一日も早い成立が必要なことについては野党におかれても認識をともにされているものと思われます。
 本法案では、事業者による個人情報の取扱いに対する本人の関与を制度化することとし、開示、訂正、利用停止等の具体的な規定を盛り込んでおります。表現の自由に関しては、報道機関の報道活動について義務規定の適用が除外され、主務大臣を置かない仕組みとなっております。第三者機関の設置については、既存の行政機関に屋上屋を架すこととなり、責任関係が不明確になるおそれがあるものと考えております。
 いずれにせよ、本法案においては、プライバシーの保護と表現の自由を両立させる観点から万全の措置を講じたと考えておりますが、野党からも建設的な御議論をいただければ検討してまいりたいと思います。
 人権擁護法案についてですが、委員会を内閣府に設置すれば委員会の独立性が確保されるかのような御指摘は必ずしも当たらないと考えます。
 法案の定める人権委員会は、いわゆる独立行政委員会として、その構成と運営に関し高い独立性及び第三者性が確保されております。また、報道機関の取材活動に対しては、報道機関の自主的な取組の尊重を明記するなど、報道の自由に十分に配慮した内容となっております。
 政府としては、国会における審議を通じて国民の幅広い理解を得られるよう努めてまいります。


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