国内人権機関によるその活動状況の要旨説明:実効的な人権機構(メカニズム)の機能に関する人権委員会における討議にて(4月19日付けプレスリリース試訳)
人権委員会 第57会期 2001年4月19日(夜)
序
国内人権機関の代表による声明
Alice Eh-Soon Tay(オーストラリアの人権及び機会均等委員会)
ALAIN BACQUET(フランスの国家人権諮問委員会)
FRANCISCO OLGUIN URIBE(メキシコの人権委員会)
ALFRED DAVIS NSOPE(マラウィの人権委員会)
EDUARDO MONDINO(アルゼンチンの国家オンブズマン)
AURORA P. NAVARRETE-RECINA(フィリピンの人権委員会)
TAN SRI DATUK SERI PANGLIMA SIMON SIPAUN(マレーシアの人権委員会)
MICHELLE FALARDEAU-RAMSAY Q. C(カナダの人権委員会)
EMILE SHORT(ガーナの人権委員会及び行政裁判所)
J. S. VERMA(インドの連邦人権委員会)
G. ABDERRATAK(モロッコの人権協議理事会)
MARGARET SEKAGGYA(ウガンダの人権委員会)
BRICE DICKSON(北アイルランドの人権委員会)
BARNEY PITYANA(南アフリカの人権委員会)
CHRIS LAWRENCE(ニュージーランドの人権委員会)
FOUAD SHEHAB(バーレーンの協議理事会・人権委員会)
FRANK ORTON(ボスニア・ヘルツェゴビナの人権オンブズマン)
LUIGI CITARELLA(イタリアの国家人権委員会)
UCHE OMO(ナイジェリアの国家人権委員会)
ALBERT HASIBUAN(インドネシア国家人権委員会)
実効的な人権メカニズムの機能についての一般的討議
H. RAHANTANIRINA (マダガスカル)
ROMAN WIERUSZEWSKI (ポーランド)
DIEGANE SAMBE THIOUNE (セネガル)
PITSO MONTWEDI (南アフリカ)
TEHMINA JANJUA (パキスタン)
REN YISHENG (中国)
CLAUDIO MORENO (イタリア)
GRIGORY LUKIYANTSEV (ロシア共和国)
IAN HILL (ニュージーランド)
MYKHAILO SKURATOVSKYI (ウクライナ)
GREGOR ZORE (スロベニア)
ALICIA LANGLE-SCHLEGEL (リヒテンシュタイン)
HELENA MINA (キプロス)
YASANTHA KODAGODA (スリランカ)
CHRISTOPHER. L. JADA (スーダン)
田中敦子(反差別国際運動IMADR)共同声明
RACHEL BRETT(Friends World Committee for Consultation)共同声明
LAMBERT CAROLINE(経済的及び社会的権利センター)共同声明
BINAIFER NOWROJEE(ヒューマンライツ・ウォッチ)
PARINYA BOONRIDRERTHAIKUL(アジア・リーガルリソース・センター)
DEBORAH CHRISTINE STOTHARD(Aliran Kesedarian Gegara National Consciousness)
RAVI NAIR(南アジア人権資料センター)
SPEEDY RICE(国際人権法グループ)
DAVID LITTMAN(世界教育協会)
回答する権利(イギリス代表)
序
今夜、国連人権委員会において、人権の促進及び保護を目的とした実効的なメカニズムの機能について討議がなされた際、各国内人権機関(国家機関)が、それらの機能及び実績の要旨を説明した。
この会合で発言したのは、オーストラリア、フランス、メキシコ、マラウィ、アルゼンチン、フィリピン、マレーシア、カナダ、ガーナ、インド、モロッコ、ウガンダ、北アイルランド、南アフリカ、ニュージーランド、バーレーン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イタリア、ナイジェリア、インドネシアの国内人権機関である。
各国内人権機関の代表は、多様な沿革と影響の程度について説明すると共に、国内人権機関が実効的な活動を行なうための基礎的な最低基準――他の政府機関からの独立を含む――を定めているいわゆる「パリ原則」について度々言及した。北アイルランドを含む数名の国内人権機関の代表は、当該機関に与えられた権限に不満があるため、既に改革を行ったか、又は、人権侵害の申立てられた後の調査及び情報収集についてより強い権限を現在求めているという。ほとんど全ての代表は、教育、訓練及び情報公開活動を実施していると述べた。人種主義との闘いや貧困削減に向けた努力について言及した代表もいた。
会議は午後11時30分まで続けられ、それぞれの国及びNGOが実効的な人権機構(メカニズム)の機能に関する問題について発言した。そこでは、多くの国家代表は、人権条約機関の諸活動の重複がより少なくなるよう、また国家が人権条約機関に報告書を提出する方法を一層効率化するよう求めた。
マダガスカル、ポーランド、セネガル、南アフリカ、パキスタン、中国、イタリア、ロシア連邦、ニュージーランド、ウクライナ、スロベニア、リヒテンシュタイン、キプロス、スリランカ、スーダンの代表が発言した。
以下のNGOが声明を発した。
反人種差別国際運動(共同声明)、Friends World Committee for Consultation(共同声明)、経済的及び社会的権利センター(共同声明)、 ヒューマンライツ・ウォッチ、 アジア・リーガル・リソース・センター、Aliran Kesedarian Negara National Consciousness、 南アジア人権資料センター、国際人権法グループ、世界教育協会。
最後に、回答権に基づいてイギリスが発言した。
4月20日金曜日の午前10時、国連人権委員会は一連の議題の下に上程されていた決議案を検討するために再び召集した。
国内人権機関の代表による声明
Alice Eh-Soon Tay(オーストラリアの人権及び機会均等委員会)
人権及び機会均等委員会は、市民社会の参加を促進する際に重要な役割を果たしてきた。とりわけ、先住民及びマイノリティー社会に悪影響を与える人種主義の発現について取り上げたり、反人種主義世界会議の準備過程に参加した際、人種主義と関連する問題について独自の展望と見解を示してきた。
今年8月、同委員会は、「奪われた世代への償い:前進」という過去に行われた子どもの強制転居で影響を受けた地域に対する補償メカニズムの開発に関する会議を開催する。同委員会は、反人種主義世界会議に向けた貢献の一環として、市民社会と人種主義についての国内会議を来月開催する。ここで重要なのは、各国内人権機関が反人種主義世界会議のあらゆる過程に、独立して参加する資格を有することである。これには、反人種主義世界会議における発言権、行動計画及び宣言の修正提議権、並びに投票権が含まれる。
ALAIN BACQUET(フランスの国家人権諮問委員会)
国内人権機関は、たとえオブザーバーや国家にとっては明らかでなくとも創意に富むもので、通常の公的機関とみなすことができる。しかし、その目的及び、国連が積極的に支援してきたという事実を鑑みると、その実情は異なる。国家人権諮問委員会の本質的な任務は、人権及び人道的介入に関する全ての問題について、政府に助言しかつ勧告することにあるのである。
国家人権諮問委員会は政府の要請に応えるのみならず、みずから行動するイニシアティブもとることができる。2000年には、同委員会は、ヨーロッパの人権尊重の実効化についての問題を調査した。もっとも、同委員会の任務は世界の一部分のみではない――同委員会の任務は人間の生活するところすべてに及ぶのである。ヨーロッパ人権憲章が保障する権利はヨーロッパ市民のみならず全ての人々に向けられたものであるべきである。
FRANCISCO OLGUIN URIBE(メキシコの人権委員会)
メキシコは民主主義への移行期にある。この明白な兆しは、1999年11月の憲法改正によってメキシコの人権委員会に完全な自律性が与えられたことに見られる。しかしながら、独立した人権委員会も民主化も、メキシコにおいて頻繁に生じている人権侵害をなくすことはできない。
こうした問題と闘う際には、人権文化を促進するための継続的な努力とプロアクティブ・アプローチ(先を見越した活動に取り組むこと)が要請される。先住民について、オンブズマンは、先住民の権利を憲法上承認することによって、彼(女)らの基本的自由の尊重は保障されると表明した。また、移民、人種主義、外国人排斥という悪循環について考えると、人権委員会の他の優先分野は移民の人権に関するものである。とりわけ、いわゆるゲートキーパー活動に対しては特別な関心が払われてきた。すなわち、昨年には400もの移住労働者がアメリカに入国しようとする間に生活の糧を失ってしまった。
ALFRED DAVIS NSOPE(マラウィの人権委員会)
人権委員会は比較的新しく、1995年に憲法の下で設置され、1999年に活動を開始した。同委員会の任務は、マラウィにおける人権の保護・促進並びに、自らの意思又は個人若しくは団体からの苦情申立てに基づく人権侵害の調査、という広範なものである。同委員会は、人権侵害に関する苦情申立てを調査してきた。昨年は172件の申立てを受理した。これは78件受理した1999年と比較して121%の増加である。そうしたケースの中には、とりわけ裁判所へのアクセス、支援要請並びに遺言及び継承権がある。苦情申立てが増えた理由は、人権委員会の存在と機能についての意識のみならず、同委員会に対する一般市民の信頼もまた増大したことによる。
人権委員会は、マラウィ社会に影響を与える人権の諸側面について、いくつかの公的声明を公表した。昨年の終わりに、マラウィの人々は、文部省の大規模な汚職や不正を知った。これは多くの無垢な子どもたちから基本的人権へのアクセスを奪うものであり、教育と発達の権利の侵害である、と人権委員会は強く非難した。人権についての市民意識を高めることも同委員会の促進的活動に含まれる。
EDUARDO MONDINO(アルゼンチンの国家オンブズマン)
人権は破砕されるべきではない。理論と現実の間には甚だしい隔たりがある。グローバル化は多くの人々の権利を奪ってきている。途上国においては、貧困層が拡大している。実際、貧富の格差がこれほど開いたことは今までなかった。
貧困ライン以下で生活する南米の人々はますます増加している。金融市場が企業や国家に対してみずからの法を課しうることは明白になっている。今日、これに異議を唱えようとする試みは非難される。問題は、民主的な社会が耐えられる不平等がどの程度のものかということである。21世紀には、開発と民主主義との均衡を得ることが求められる。
AURORA P. NAVARRETE-RECINA(フィリピンの人権委員会)
フィリピンの人権委員会はピープル・パワー・Iによって産み落とされた。去る1月には、フィリピン人民はピープル・パワー・IIを実現させ、ジョセフ・エストラダ大統領を追放すると共に、後任としてグロリア・アロヨを大統領の座につかせた。1991年のパリ原則は、人権委員会の憲法上のマンデートが世界クラスにあるという信頼を同委員会に対して与えるものである。率直に言えば、人権委員会は、パリ原則によって明確化された最低基準を大きく上回っている。ここ数年、人権委員会が果たしてきた役割の全てをここで要約することは不可能である。人権委員会は、その憲法上のマンデートを実施するための二叉のアプローチ、すなわち保護と促進の両方を含む計画枠組を有している。保護計画は人権侵害の犠牲者への救済策を見つけかつ適用するものである。一方で、促進計画は潜在的な人権侵害の発生を防ごうとするものである。
政府及び地方自治体の行政部門が人権擁護者となり、市民社会が人権の保護及び促進における政府の慧眼なパートナーとなったときにのみ、グッド・ガバナンスが根づく。そのため、人権委員会は公務員のための平和及び人権教育計画を提供した。
TAN SRI DATUK SERI PANGLIMA SIMON SIPAUN(マレーシアの人権委員会)
今月をもって人権委員会は一年を迎える。その主要な機能は、人権意識を促進しかつ人権教育を提供すること、法制定並びに行政命令及び手続について政府に助言しかつ支援すること、並びに国際人権文書の加入について政府に勧告を行うことにある。
人権委員会が形成される以前、人権はマレーシアにおいて事実上知られていなかった。しかしながら、マレーシアにおいて人権委員会が成立してから僅かな期間で、人権委員会という言葉はお馴染みのものとなった。これはある程度までは、2000年11月5日に反対政党が組織した集会を解散させた際になされた警官の残忍な行為に対する申立てについて人権委員会が開始した公開調査のためである。独立した人権委員会がマレーシアに存在するという事実は、同国における人権の促進に関する限り、正しい方向へ大きく前進していることを表している。
MICHELLE FALARDEAU-RAMSAY Q. C(カナダの人権委員会)
普遍的な目的を共に促進するために活動する国内人権機関の重要性は今日明白なものとなっている。国内人権機関は反人種主義世界会議で重要な役割を果たすべきである。しかしながら、今までのところ、国内人権機関が果たすであろう役割は明らかでない。差別と闘いかつ平等を促進させる手段として、国内人権機関はその重要性にふさわしい役割と立場を与えられるべきである。そのことから、反人種主義世界会議の宣言及び行動計画は国内人権機関の設置及び支援を奨励すべきである。国連総会において、国内人権機関について責任を負う国連人権高等弁務官事務所に対して、十分かつ恒常的な予算を割り当てるよう提議することは、ますます重要となっている。
カナダは多人種社会(マルチレイシャル・ソサイエティー)である。もっとも、カナダは人種差別、不寛容及び外国人排斥から無関係ではなく、その歴史もこうした害悪から無縁であったわけではない。近年、移住者がその肌の色のために入国を拒否された。また、アフリカ系カナダ人はその世系のために強制的に隔離され、アジア系カナダ人は十分な市民権を与えられなかった。前進はあったものの、不寛容は今もカナダに存在する。これまで尊厳及び平等に関する一般市民の権利が世界的にはそれほど重要な役割を果たしてこなかったことは明らかである。国内人権機関の課題は、こうした権利を人間が日々生活しているあらゆるところで実現することにある。
EMILE SHORT(ガーナの人権委員会及び行政裁判所)
ガーナを含む多くの国々は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に批准している。だが、同規約の規定は、ほとんどの人々、特に貧しい人々の間で実現されていない。市民的及び政治的権利が貧困を削減する際に重要であることは認識されているが、その一方で、途上国の人権委員会は、とりわけ経済的及び社会的権利の促進及び保護を通じて、貧困の削減に貢献しうるのである。
ガーナの人権委員会は、公的教育プログラムを通して、社会が大きく分裂しているという状況を改善することにかなりの程度まで貢献してきた経済的、社会的及び文化的権利の侵害について啓発を行ってきた。同委員会は、貧しくかつ周辺化されたグループに影響を与える政府の政策決定を有効なものにするという観点から、彼(女)らの権利を一貫して擁護してきた。また、公的教育プログラムを通して、同委員会はエスニック的な偏見、部族的差別及び文化に基づく差別に対しても精力的な活動を行ってきた。こうした偏見や差別は、社会の構成員に対して、その品位を下げたり、貧困に見舞われるような生活様式を強いるものである。また同委員会は、環境権の侵害に取り組むための公的教育にも既に着手している。
J. S. VERMA(インドの連邦人権委員会)
人権保障に向けた地球規模の努力の成就は、究極的には、国内レベルで人権に関する諸原則が遵守されるかどうかにかかっている。国内人権機関は、国内的な基準及び規範と国際的なそれとを調和し、かつそれらの適正な遵守を確保する際に、決定的な役割を果たしている。このことは、国連の支援の下に設置された人権条約機関によってますます認識されてきている。人権条約機関と国内人権機関とのさらなる協力が奨励されるべきである。二国間、地域的及び国際的なレベルにおいて国内人権機関相互が協力しているという象徴的な事例が増加していることもまた奨励される。国連事務総長の報告書はそうした協力の事例を詳述している。
インドの連邦人権委員会の強い勧告に基づいて、インド政府は1997年に拷問等禁止条約に署名した。だが、連邦人権委員会が同条約を批准するよう強く求めたのにも関わらず、同政府がそれを批准しなかったことに対して同委員会は深く憂慮している。連邦人権委員会は、この点について一刻も早く適当な行動がとられることを望んでいる。またインドは、難民の地位に関する条約(1951年)とその議定書(1967年)のいずれも署名していない。連邦人権委員会は、国際的に承認された原則と一致するように、難民問題に関する国内法を起草し採択するよう求めた。
G. ABDERRATAK(モロッコの人権協議理事会)
最近になって、人権協議理事会は実質的な改革を行った。前年のうちに、同理事会は強制失踪及び恣意的拘禁に取り組むとともに、人権侵害を予防しかつ国際協力を向上させる措置をとった。1998年には、人権協議理事会は、強制失踪の問題を再検討するようモロッコ国王に対して求め、その犠牲者の財産が補償されるよう勧告した。同理事会は、補償を求める申請を500件以上受領した。最も深刻なケースに優先事項が置かれている。
また人権協議理事会は、数百の人権侵害の申立てを再検討し、基本的自由に関する議案を審査した。同理事会は、なかんずく円卓会議を催し計画を練ることによって、人権文化の促進に貢献した。人権協議理事会は、人権分野における国際協力がその普遍性を保障する上で必要であると確信している。
MARGARET SEKAGGYA(ウガンダの人権委員会)
2000年10月に、人権委員会は3ヵ年協力計画を立ち上げた。そこでは、ウガンダ憲法のマンデート及びウガンダ国民の期待に照らして、人権委員会の強化を進めるべく四つの優先分野が強調された。すなわち、地方人権委員会の設置、重大な人権問題への一層効果的な取組み、効果的な意思伝達、並びに人権委員会の運営及び人的資源能力の改善である。人権委員会は、国民投票が憲法の要請か否かを国民が決定する際に、市民教育について重要な役割を果たした。先月の大統領選挙期間中、人権委員会は特別なメディア戦略を企画した。その戦略とは、市民が投票に行く際に平和と寛容を遵守するよう求めるものであった。また人権委員会は、安全保障機関における人権教育及び訓練の共同計画を強調することによって、安全保障機関を人権の保護及び促進における鍵となる主体として取り扱うプロ・アクティブな手法を採用した。
人権委員会はここ4年間を多くの課題に取り組んだ形成期として見なしている。もっとも、人権委員会は、ウガンダ市民によって同委員会が顔の見える機関として高い評価を得られているものと認識している。政府は、持続的な財源を通じて人権委員会を支援した。また国際社会の多大な貢献によって、同委員会の政府財源は補われている。
BRICE DICKSON(北アイルランドの人権委員会)
人権委員会は、その地位を定める規定が不十分であるため、実効性を増すことができない。英国政府に提出された人権委員会の最初の2年間における実効性に関する報告書によれば、その規定を国連の「パリ原則」に沿うようにするために改善する25の勧告がなされた。三つの重大なことがある。人権委員会がその調査において証拠を提供する権限が与えられること、裁判所に関連人権基準を認識させるために裁判所の訴訟事件に関与する権限が与えられること、人権委員会が十分な資源を有すること。こうした勧告に政府が応えることを人権委員会は待ち望んでいる。
人権委員会の活動は、政府機関の一部、すなわち警察、検察その他の公的機関が人権侵害の申立てについて同委員会に情報を開示することを拒絶していることによって妨げられてきた。その結果、人権委員会は、1998年の北アイルランドにおける平和的和解以前に、安全保障部隊および準軍事的組織により行われた殺人についての調査を含む多くの問題を調査することが困難であった。
BARNEY PITYANA(南アフリカの人権委員会)
7年にわたる南アフリカの民主化への歩みは、平和及び安全への希望と南アフリカ憲法にある「人間の尊厳、平等及び社会正義の達成」への開けた展望をもたらしており、南アフリカは国家構築と国家調整の努力を行っている。人種主義は、直接的そして間接的に、制度的及び組織的なかたちで社会のあらゆる側面に浸透している。人種主義は、とりわけ最も傷つきやすいグループが平等と人間の尊厳の享受する脅威となる。人種主義がなくならないことは、民主主義の破壊や、憲法の信頼性を傷つける。人権委員会は、全ての南アフリカ人民の連帯を望んで反人種主義国内戦略を作成しており、反人種主義についの活動を継続している。
人種主義と闘うことは、南アフリカの歴史に見られるように重要であるが、他の形態の不平等と分離させることはできない。およそ人口の10%が障害などを持って生活している。彼らは社会的偏見やスティグマにさらされるのみならず、自己発展に向けた彼(女)らの努力や人間の尊厳の主張は、無反応、無視又は恥辱といった環境によって妨げられる。障害者の権利に関する国家コミッショナーを通じて、人権委員会は、障害を持つ市民のためのフォーカル・ポイントを設置した。人権委員会は、障害者の可視性を高める際に、市民社会の障害活動家や他の機関と共に、障害者のための環境づくりに役立っている。そして、障害者が自らの権利を一層主張するよう奨励する。
CHRIS LAWRENCE(ニュージーランドの人権委員会)
人権委員会はみずからをパリ原則に常に適合させてきた。しかしながら、パリ原則は最低基準であり、それをさらに発展し改善する必要がある。それゆえ、人権委員会は、目下のところ他の国内人権機関と共に、国内人権機関に関する最良の実行原則(best practice principles)を確立するプロジェクトに関わっている。国内では、人権委員会は公的討議や議会への提出の際に国際人権文書を支持し続けている。ニュージーランドの国際人権文書の批准及び遵守状況は完璧とまでは言えないまでも、大変良いものである。
国内人権機関は実効的な戦略プランにみずから関与すべきであり、その作業は系統的に評価されるべきである。人権委員会は、南アフリカで開催予定の反人種主義世界会議の成功に貢献すべく関与している。人権委員会は、国内人権機関の独立性と重要な役割をダーバンで承認するよう共に要請する。
FOUAD SHEHAB(バーレーンの協議理事会・人権委員会)
市民は、Fouad Shehabが議長を務める協議理事会と密接な関係を有してきた。理事会は、過去に多くの申立てを受理し、それらの全ての解決を求めた。最近の改革は、バーレーンにおける人権の改善をもたらした。人権委員会は日が浅く経験もほとんどないが多くの成果をあげてきた。また人権委員会は、全般的な人権状況を改善するために他のアラブ諸国の人権制度と接触してきた。人権委員会はバーレーン市民のために活動するのみならず、バーレーンに住んでいる他の国籍を有する者を保護する。
人権委員会はバーレーンにおける平和の創出のために努力し、国家元首と協力している。バーレーンで行われた政治改革によって、最近では、政治犯の解放も行われている。人権委員会は、平和と調和に役立つ改革過程において重要な役割を果たしている。
FRANK ORTON(ボスニア・ヘルツェゴビナの人権オンブズマン)
パリ原則の採択が契機となって、世界中において人権機関が設置されるようになった。また、パリ原則は国連人権高等弁務官において最も印象的な活動をもたらした。しかしながら、パリ原則が採択されてから10年が経つが、この分野における国連人権高等弁務官の活動はその通常予算によって賄われていない。
来年度の予算編成から国内機関ユニットが国連人権高等弁務官事務所の通常予算に含まれるように事務総長に要請するよう、人権委員会は求められた。
LUIGI CITARELLA(イタリアの国家人権委員会)
国家人権委員会は外務省に1976年に設置された。そもそも同委員会は、イタリアがとりわけ自由権規約及び社会権規約の報告義務を果たすことを可能ならしめる機関として創られた。国家人権委員会は、今日よりも限定された範囲で異なった構造をもって開始された。今日、同委員会は、国連が実施する全ての活動を体現している。また同委員会は、イタリアによる国際人権文書の遵守を確保するために重要な作業を行っている。これらの国際人権文書には、法的拘束力を有する文書と決議や勧告のような他の国際文書の両方が含まれる。
報告における全般的な調整という任務に加えて、国家人権委員会は、特定のテーマに関する政府への勧告を採択すると共に、人権の種々の側面について具体的な研究を実施する。国家人権委員会の活動の進歩と生成をもたらす最も重要な側面の一つは、同委員会に十分な財政的手段を与える議会の決定である。
UCHE OMO(ナイジェリアの国家人権委員会)
国家人権委員会の任務は、とりわけナイジェリアにおける人権侵害について全ての申し立てられたケースを監視及び調査すること、訴追その他の適切と考えられる行動(人権侵害の犠牲者の支援、犠牲者の補償や救済策)をとるよう適当な勧告を連邦政府に行うこと、並びに、ナイジェリアにおける人権保護の状況に関する定期的に報告することである。国家人権委員会は、当初から大変多くの課題、とりわけ信頼性の問題に直面した。というのも、軍事政権下で同委員会は設立したからである。国家人権委員会の新たな統治理事会は2000年6月のナイジェリアの新たな民主的政府によって構成されている。
国家人権委員会は、そのマンデートを遂行する際にかなりの成功を収めたが、多くの障壁があるのも明らかである。低い教育水準、資源の枯渇、多様な文化的、歴史的その他の多様性があるナイジェリアのような社会において、課題は山積みである。民主化の過程、貧困及び汚職の根絶に向けた現政権の積極的な態度、社会及び政府機関の種々の側面における漸進的だが確実な改革、といったものは積極的な兆候である。
ALBERT HASIBUAN(インドネシア国家人権委員会)
インドネシアが、権威主義から代表多元的民主主義へと根本的に移行し、比較的民主的な政府となってから1年が過ぎた。.それまで、インドネシアは人権侵害の救済メカニズムの法的基礎を発展させてきた。例えば、とりわけジェノサイドや人道に対する罪を対象とする人権裁判所(human rights tribunals)に関する法を定立してきた。加えて、真相及び調停委員会(truth and reconciliation commission)に関する法案が目下のところ作成中である。市民社会は、人権裁判所に関する法の起草過程において、とりわけ過去の侵害を審査するためのアド・ホック裁判所の規定について、大きな貢献を果たした。
昨年中、インドネシアの人権の保護及び促進に向けた歩みは、いくつかの州における地域紛争(communal conflicts)や恐怖からの自由に対する脅威など、種々の困難な状況に直面してきた。今日、インドネシアは、人権の保護及び促進にとって新たな時代に突入している。最近、インドネシアの憲法は、人権に関する規定を含むものへと修正された。人権の保護及び促進がインドネシアの民主的システムに向けた改革の不可欠な部分である、というのが国家委員会の見解である。
実効的な人権メカニズムの機能についての一般的討議
H. RAHANTANIRINA (マダガスカル)
国内人権委員会の創設は、マダガスカル政府が民主化に取り組むという政治的意思の証左である。1996年に創設された国内人権委員会は独立した機関であり、25人のメンバーで構成されている。国内人権委員会は、会合を重ね、小委員会の作業を監督し、総会を開催する。また同委員会は、全ての州で訓練及び啓発プログラムを実施し、人権高等弁務官の技術協力計画に参加している。
国内人権委員会は、これまでに4回の総会を開催し、人権の促進及び保護と地域的及び国際的協力とに関する決議を採択した。同委員会の2001年の行動計画に含まれるものとして、とりわけ、人権NGOとの機能的関係の強化、マダガスカルの人権問題に関するワークショップ、人権に関する書籍の改訂、人権セミナーの開催が挙げられる。
ROMAN WIERUSZEWSKI (ポーランド)
国連人権条約システムの成果は批准数のみで測られることはできない。法的観点から見れば、普遍的な人権システムは世界中の全ての子ども、女性及び男性に適用可能であるということは事実であるが、現実には多くの場合、それは形骸化している。国際社会はこのことに気づいている。
報告手続に関して、統計値がまさに警告していることがある。あらゆる条約において締約国の平均70%は報告書を遅滞している。実際、ほとんど全ての締約国は報告書の提出が遅れている。110カ国が5つ以上の報告書を遅滞している。最近では、こうした問題に取り組むために大きな努力がなされている。条約機関は常に自らの実行を評価・検討し、手続規則及び報告ガイドラインを改善している。しかし、条約機関は報告義務を尊重するという政治的意思が欠如しているという問題に直面しているのである。個人通報システムもまた深刻な考慮を必要としている。現在、約100の締約国が個人通報システムを受け入れているが、実に興味深いことに、これらの締約国の30%はいかなる苦情申立てもなされていない。
DIEGANE SAMBE THIOUNE (セネガル)
2001年に可決されたセネガル憲法は、国際手続の遵守を明確に規定している。特に、世界人権宣言、女性差別撤廃条約、子ども権利条約、アフリカ人権憲章についてである。こうした手続に関して憲法が強調することは、人権に関わる権威が重要であるということを立証している。
人権と平和に関するセネガル代表団(The Senegalese Delegation on Human Rights and Peace)は、人権侵害を受けた個人による苦情申立ての受理、平和文化の促進、条約機関に提出する定期報告書の作成、といった任にあたる新たに創設された制度である。人権と平和に関する省庁間委員会(Interministerial Commission on Human Rights and Peace)は、この分野における政府の活動を調整する任を負う。また同委員会は、人権侵害の申立てを審査する。人権と平和に関する機関(Institute for Human Rights and Peace)は、なかんずく、人権教育、人権に関する情報の調査・文書化、国内的及び国際的な人権セミナーの開催について責任を負う。
PITSO MONTWEDI (南アフリカ)
人権は世界中のあらゆる場所において全ての者が有する権利であるという国際社会の主張が実り、南アフリカ人民はついに獲得した自らの自由を誇りに思う。また、締約国として国連条約監視システムに参加することを決定した。南アフリカは、国際的人権課題の積極的形成に関与しており、人権を全ての人にとって現実のものとする国際的な努力を高く評価する。南アフリカの民主主義は比較的新しく、1994年の非人種選挙(non-racial elections)に由来する。しかしながら、実際、自由と民主主義への南アフリカの奮闘は、大変長くまた大変古いものである。南アフリカのかつての植民地支配、隔離及びアパルトヘイトは、人種主義、不平等、不平等な所得分配、貧困及び低開発といった消すことのできない遺産を残している。南アフリカは、こうした問題に取組み続けると共に、その開発政策の中心に人間の尊厳をしっかりと据えている。
南アフリカ代表は、人権侵害を取扱う実効的な方法の一つは締約国その他の国連加盟国に対してより良いサービスを提供する権限を条約監視機関に与えることであると信じている。条約に留保を付した国家の数が減ることによって、条約機関の作業は軽減するだろう。
TEHMINA JANJUA (パキスタン)
Bayefsky教授の報告書は全ての条約監視機関に対して送付され、それへのコメントが求められた。同報告書における決定的に重要な視点は、国家の義務が任意的なものと想定されている点にある。また、条約システムの任意性が問題とならないことにある。同報告書は、締約国が直面している問題に適正な注意を払っているようには見えないが、複合的で重複した報告の要件により生じる問題を認めている。
条約機関と他の国連機関との調整は、それらの重複を避けるために強化されるべきである。網羅的な報告書を準備する際に途上国に直面する特有の問題は考慮されるべきである。すなわち、報告書を準備する際の財政その他の支援を必要とする国家には技術支援が利用可能なものとされるべきである。条約機関は、報告審査の際に、国家の経済発展のレベルや宗教的文化的背景を適切に考慮すべきである。衡平な地理的配分に基づいて条約機関の構成員の代表が選ばれるよう確保すべきである。報告書を準備する方法論は改善されるべきであり、種々の条約機関のガイドラインが作成されるべきである。そして、条約監視機関は裁判所となるべきではなく、また締約国に対して無常な判断を下すべきではない。条約監視機関は、締約国がその義務を果たすことができるよう、協力的な方法をもって締約国を支援すべきである。
REN YISHENG (中国)
中国政府は、人権を促進しかつ保護する際に、国際人権文書が果たす重大な役割に対して重きを置いている。去る2月に、中国政府は経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に批准した。それは中国による意義深い前進であった。それは中国が人権の促進及び保護に熱意を持ち、この分野における国際協力を積極的に行うという首尾一貫した原則的な立場を表すものである。また、それは中国人民による経済的、社会的及び文化的権利の完全な享受を保障するという中国政府の決意と信頼を表している。今や、中国は18の国際人権文書に加入した。加えて、中国は、市民的及び政治的権利に関する国際規約と子どもの権利条約の二つの追加議定書に署名している。さらに、中国は、新たな国際人権文書の起草及び作成に積極的に参加している。
中国政府は、国際人権文書に含まれている報告審査手続に関する規定は、当該文書の実効的な実施の助けとなる。国際人権文書の規定は、様々な行政上、立法上その他の措置を通じて、締約国によって実施されるべきである。
CLAUDIO MORENO (イタリア)
イタリアは条約機関の活動を変革する必要があると認識している。だが、そうした変革によって、条約機関の実効性又は自由及び独立は侵害されるべきでないし、人権の保護が減じられるべきではない。条約機関およびメカニズムと協力するという全ての国家の義務は、人権を促進するための各種の実行の中でも重要なものである。すなわち、人権の普遍性は想起されるべきであり、これらのメカニズムは、国際基準と関係し、侮辱的なものとして見なされない。また、国家は条約機関からの批判を、国家に役立つものとして捉えるべきである。
作業方法、追加的資金、重複の除去といった点を改善することは、確かに追及する価値のある目的である。しかし、そのようなステップは、条約機関みずからのイニシアティブでなされるべきである。より多く資源が必要とされることについて議論の余地はない。資金をいかに増加するかが問題となる。メカニズムと委員会は、無駄と重複を避けるために、それらの活動を調整すべきである。また、似通ったケースで同じ問題について情報を求めたりするような、国家を無駄に刺激する実行も避けるべきである。より良い計画を立てることによって、この問題を避けることができるだろう。
GRIGORY LUKIYANTSEV (ロシア共和国)
種々の条約機関、その他の人権メカニズムのマンデートは同一のものではなく、それらの機関相互の調整が不可欠である。そのような調整によって、労力の重複を避けることができる。報告手続を改善する努力はなされるべきである。定期的な報告書の提出は検討されなければならない。報告書の提出と提出の周期は条約により異なる。締約国と条約監視機関との対話の質をより高めるべきである。
特別手続の適用は、人権条約の実施を監視するもう一つの方法である。しかしながら、監視を行う委員会の中には、そのマンデート以上の活動を行うものもあった。加えて、特別手続が選択されて適用されていた。人権侵害のケースを取扱う場合、国内の裁判及び法的手続は優先されるべきであり、奨励されるべきである。
IAN HILL (ニュージーランド)
他の数カ国を代表して述べるには、実際的な非公式手続を通じて、条約機関システムを改善することは可能である。定期報告の要件(requirements)を合理化し重複を減らすことによって、締約国にかかる報告の重荷を軽減することが重要である。また、条約機関が、その作業方法の専門性と効率性を改善するために奮闘努力することが重要である。条約機関は十分な資源が確保され、必要な行政上の支援を受けるべきである。締約国が、条約上の義務及びその実現方法を完全に理解するのを確保するための技術支援を拡大しかつ調整することは有用である。条約機関と国連システムの他の機関とは、情報の共有や相補性を高める機会と、関心分野の重複とを明らかにするために、一層協力すべきである。より徹底的な改革は、重要かつ挑戦すべき課題であるが、漸次合意を得つつ進められるべきである。ニュージーランドは、条約機関に直面している諸問題に取り組むために非公式に集まった国家群の一つである。
条約機関の地域的割当配分を勧告したキューバ決議案について、ニュージーランド及びその提携国は、地域的均衡については支持するが、人権委員会が勧告することは有益ではないと見なした。それは条約当事国に優先権がある。
MYKHAILO SKURATOVSKYI (ウクライナ)
6大人権条約が普遍的に批准されることにより、人権の尊重を促進するという国際的な努力にとって最良の実現可能な基礎が確立するだろう。ウクライナは2003年までにその目標を達成することを目的とした国連人権高等弁務官の活動を強く支持する。その目標は野心的であるが現実でもある――それはこの分野における着実な進歩によって証明されてきたことである。人権条約を批准することは、そこに定められた国際的に認められた基準が国内レベルで完全に遵守されるのを確保する努力がなされることを要請する。ウクライナにおける民族的、エスニック的、宗教的、言語的なマイノリティーの権利を確保するという国内政策を推進し、そうした目的を持つ基金を設置する一方で、ウクライナ政府は、50カ国以上で居住している1200万人以上のウクライナ民族のニーズに同様の関心が払われることを期待している。不幸にも、それらの国々のいくつかでは、ウクライナ人というマイノリティーの地位は十分に保障されていない。
マイノリティーの権利の問題について取組む場合、国家政策に加えて、二国間協力もまた大変有用であろう。ウクライナは、マイノリティーの権利の保護についての二国間条約を数カ国と締結している。加えて、ウクライナ大統領の下で最近創設されたクリミアタタール人に関する諮問理事会は、この問題に関する障壁を除去する過程に貢献するだろう。
GREGOR ZORE (スロベニア)
人権と基本的自由という今日の概念は、国内的レベルと国際的レベルにおける多くの条約や憲章の内容に大きく影響力を及ぼしてきた。各国憲法は、概して、基本的な人権のカタログを具体化している。国際的には、世界人権宣言は、人権のさらなる法典化をもたらす契機を与えた。主に、人権規範が国家の行政及び司法により適正に適用されることを確保することによって、各国政府は人権の諸規定を実行に移す主要な任務を負う。独立以前でさえ、スロベニアは、1988年に人権の尊重を監視する実効的で独立したメカニズムを導入した。すなわち、人権及び基本的自由の保護に関する委員会を設置したのである。その積極的な経験は、7年前の人権オンブズマンの設置を導くことになった。
スロベニアのオンブズマンの構造と権限はスカンジナビア・モデルに基づいている。その機能として、オンブズマンは、Wtate bodiesの全ての情報、文書及び既述事項にアクセスできる。独立してから間もないうちに、スロベニアは人権保護に関する国連の諸条約の下での報告義務を果たすためにいくつかのメカニズムを設置しなければならなかった。近い将来、関連条約機関に対して残されている第1回報告書を提出し、それから、定期報告書を提出していくだろう。
ALICIA LANGLE-SCHLEGEL (リヒテンシュタイン)
人権の保護と促進のための主要な国際条約が普遍的に批准されることは国連の最優先事項であり続けている。80パーセント以上の国家が6大条約のうちの4つ以上に批准している。また、国連人権高等弁務官は、2003年までの普遍的な批准を促進するよう明言している。近年、人権条約へ極めて多くの国家が加入していることが、目標時間枠組内でその目的が達成されるとの希望を与える理由であった。1年前の人種差別撤廃条約の批准をもって、リヒテンシュタインは6大人権条約の全てに批准したことになる。またリヒテンシュタインは、人権侵害を主張している個人による通報を審議する規定をもつ女性差別撤廃条約選択議定書の早期批准についてもコミットしている。
人権メカニズムの機能をより実効的にする過程において、調整と整理統合はキーワードである。手続がより適切なものとなり、条約機関と条約当事国とがより緊密に協力することによって、すべてのレビュー・プロセスの結果は改善するだろう。加えて、すべての条約機関の下における平等な基準の適用のみが、人権保護への普遍的なアプローチと調和するのである。
HELENA MINA (キプロス)
人権を保護及び促進するための国家機関のネットワークがキプロスで確立し、種々の国連文書に含まれる提案に従っている。オンブズマンは1991年に設置された。その任務は個人による苦情申立の調査を含む。オンブズマン法の最近改正により、職権に基づいて調査を始める権限がオンブズマンに与えられた。さらに、オンブズマンの主要な責任の一つは、外国人、移住労働者その他の市民権を有しない者からの苦情申立を調査することにある。
人権を保護するための国家機関は1998年に設置された。それは人権が尊重されるのを監視する任務をもつ独立した機関である。その構成員は幅広く、政府のみならずNGOからも代表されている。人権が地球規模で促進及び保護されるためには、国家は協力の精神の下で必要な政治的な意思決定をすべきである。
YASANTHA KODAGODA (スリランカ)
スリランカは、市民の基本的自由及び人権を保障するために、14もの国際人権文書の締約国となっている。それらの条約加入のほとんどはこの10年の間になされたが、同時に、スリランカは暴力的かつ無情なテロにより揺さぶられた。スリランカは1972年に共和国となり、世界人権宣言その他の国際人権文書が承認する核となる人権が新しい共和国憲法に定められた。1978年に、新しい共和国憲法の下にスリランカ民主社会主義共和国が建国され、それらの基本権が裁判に付せられるべき(justiciability)ものとなり、最高裁判所は、基本権の侵害についての申立の請願を受理する権限を付与された。
人権の促進及び保護と関連する政府の政策について指摘された建設的な批判に対して、スリランカは反対しない。人権に係わる諸制度や組織から得られる援助や支援は、現実に様々な面でスリランカに役立ってきた。しかしながら、人権委員会と国際社会は、政治的優位に立つために人権侵害を申し立てるような人々に、またスリランカ人民及び政府の評判を落とすことを望むに過ぎないような人々に警戒すべきである。
CHRISTOPHER. L. JADA (スーダン)
スーダン政府は、人権及び基本的自由を保護及び促進する独立した国家機関を設置することを決定した。その国家機関は、種々の国家機関に助言を提供し、人権を取扱う機関相互間の連結子として活動している。同機関は、社会の最も脆弱な階層を保護している。その構成員はかなりの経験を有している。同機関は、1998年にスペシャル・フリーダム(Special freedoms)と公的保護を含む新憲法が成立するのに役立った。同機関は、憲法裁判所、出版物、安全保障に関する法の草案作業や刑法改正作業についても手助けした。
定期的に、同機関は拘禁者の状況を評価・検討し、勧告をする。同機関は、人権啓発の促進を助け、警察及び軍隊のための会議を企画した。これは積極的な効果をもたらした。
田中敦子(反差別国際運動IMADR)共同声明
昨年の人権委員会が条約機関に関する問題を2002年の第58会期で検討するとしたことを想起する。しかしながら、反人種主義世界会議への過程は、人種差別撤廃委員会(CERD)が果たす重要な役割にとりわけ注意を払われてきた。
人種差別撤廃条約の強化する中心点は、その普遍的な批准を確保することにあり、またとりわけ、締約国が人権侵害の被害者からの通報を委員会が受理しかつ検討する権限を認めるという条約第14条が定める宣言を行っていない締約国が当該宣言を行うことにある。等しく重要なものとして、CERDの作業にNGOの参加を増やすことである。国連人権高等弁務官事務所が最近着手した、CERDを含む3つの条約機関を強化する2000年から2004年の行動計画は評価できる。
RACHEL BRETT(Friends World Committee for Consultation)共同声明
1980年代から人権委員会は多くのテーマ別の人権メカニズムを確立してきた。これらは特別報告者、特別代表、作業部会及び独立した専門家からなり、彼(女)らは世界中の全ての国に関連する特定の人権問題を検討する任にあたっている。その作業の一環として、特別手続は、彼(女)らのマンデートの問題と関連した状況を直接に調査するために国家を訪問し、その訪問について人権委員会に報告する。
すべての特別手続は加盟国が参加する人権委員会の決議によって設置されるので、また、国家ミッションは確立した作業方法の一部であるので、国家はそうした訪問を促進するために最善を尽くすべきである。これは常設の訪問しようとすることはこれを単純かつ実効的にする方法である。これはすべての締約国にかかる行政的な重責を減らし、遅滞を減らすことによってプロセスの効率性を高めると共に、これらの手続と協力する国家のコミットメントを表す。さらに、アクセスの問題から実質の問題へと焦点をシフトすることによって、それは国家訪問の手続は政治性をなくすだろう。また、それにより、計画する手続や優先する訪問がより効果的となり、その訪問がすでに存在し開かれていることを知る。
LAMBERT CAROLINE(経済的及び社会的権利センター)共同声明
人権委員会の本会期において、大変苦労して獲得した(人権に関する)原則及びメカニズムの範囲を狭め、かつ人権の範囲を狭く再定義しようとするために、参加国により慎重に組織され調和のとれた努力がなされている。先進国と途上国の両方は、それぞれ独自の理由から、また政治上の緊急の判断や国益から、権利の内容と意味に対して攻撃しかけている。非差別は国連憲章に掲げられた原則であるのに、非差別への権利それ自体に対して異議が呈されている。
加えて、経済的、社会的及び文化的権利――とりわけ食糧、教育及び居住への権利――は裁判に付されるべき(justiciability)という点と、その内容の点とから課題が提起されている。テーマ別特別報告者、専門家及び作業部会が取り組むことができるイッシューの範囲を狭めようとし、かつその付託期間(terms of reference)を短くしようと意図的に試みていることは、好ましくないことであるが、それはこの人権委員会での政府の声明から明らかである。このことは、裁判管轄外(extrajudicial)、即決又は恣意的な強制執行、居住への権利、強制失踪、発展の権利、拷問、教育、女性に対する暴力に関するマンデートについて、国家管轄権が国際的活動よりも優越していると国家が主張していることに顕れている。人権委員会は、国際人権に関する法、基準及び規範を支えるために、また人権委員会の全ての特別報告者、専門家及び作業部会のマンデートを尊重するために、特別手続の制度を完全に支援するよう要請される。
BINAIFER NOWROJEE(ヒューマンライツ・ウォッチ)
この数年間、ヒューマンライツ・ウォッチは国連人権機構の強化を最重要関心事項として見なしてきた。国家を訪問する特別手続に対する33のインビテーションを歓迎する。しかし、そうしたインビテーションを歓迎する一方で、もう一つのネガティブな傾向について指摘したい。すなわち、国連加盟国が、人権委員会の監視官による訪問を拒絶する政府を含む腐敗した政府を、人権委員会の構成員に選ぶように次第になってきている。例えば、アルジェリアは人権委員会の報告者による訪問を認めことは決してない。最も酷いのはスーダンである。特別報告者が宗教的自由の侵害について非難したのに対して、スーダンは彼を「イスラムの敵」と呼んだのである。事実上のファトワー(イスラム教の有資格者による決断)の評言である。スーダンは、人権委員会の副議長(deputy chair)とされることによって、拒否主義に報いられた。
ヒューマンライツ・ウォッチは、国家の人権侵害を予防しかつ終わらせるために国内委員会の潜在的な力を認めている。より有望な委員会の活動は、こうした期間の積極的な潜在能力を証明する。ガーナ、南アフリカ及びウガンダのコミッショナーは、政府の侵害に直面した場合、強く自由に話す健全な人々として卓越している。しかしながら、多くのコミッショナーは人権侵害を公然と非難できない。それはカメルーン、チャド、ケニヤ、リベリア及びスーダンの場合である。アルジェリア、トーゴ及びチュニジアのような場所によっては、コミッショナーは政府の人権侵害について控えめに述べているところもある。弱い又は言いなりとなっているコミッショナーが自らの責任を果たし、人々と犠牲者を最優先とした活動をするのを確保するために、より多くの努力がなされるべきである。
PARINYA BOONRIDRERTHAIKUL(アジア・リーガルリソース・センター)
アジアにおいて国内人権委員会が増大していることは、それらが今まで与えてきた多くの失望にもかかわらず、積極的な発展である。例えば、タイの国内人権委員会は、その明白なマンデート及び独立性のために、多大な注意をひいてきた。しかしながら、わずかだがいく人かの構成員が選択されるように、事実上の選択的手続は失望させるものであるしたがって、その機関の公的な機能はいまだに開始されていない。
DEBORAH CHRISTINE STOTHARD(Aliran Kesedarian Gegara National Consciousness)
人権機関の設置に向けた種々の政府のコミットメントが原則的に称賛されるものである一方で、ほとんどの人権擁護者(human rights defenders)はある程度懐疑的にならざるをえない。それらの実績を考えてみると、これらのイニシアティブの中には、人権の保護及び擁護にコミットメントするというのではなく、隣人に負けまいと見えを張る(keep up with the Joneses)必要から行われていると考えられるものもある。内容そして実効性ではなく、形式に強調を置くことは、これらの機関を侮辱や嘲笑に対して脆弱なものとする。ビルマでは、人権委員会は国家人権機関の設置に向けて準備した政権によって一年前に設置された。驚くべきことに、人権委員会のメンバーシップは、ビルマの人権侵害者の「有力者録」のようである。
マレーシア人権委員会は何百もの苦情申立てを受理しているが、それらのほとんどについて調査などの責任を果たすことができない。同委員会は――昨年9月のの公開集会に関する深刻な警察の残忍な行為への申立てについて、一つの公的調査をなんとか行うにすぎなかった。こうした機関は人権を支援しているのか、それとも人権侵害者を支援しているのだろうか?人権コミッションなのか、それとも人権オミッションなのか?
RAVI NAIR(南アジア人権資料センター)
国家人権委員会は人権の保護及び促進にとって実効的な機構(メカニズム)と見なされる。アジア・太平洋地域において、こうした機関はインドを含む多くの国で設置されてきた。インドの人権委員会は介入し、その殺人に関する特定の勧告をした。しかしながら、これまで何の判断も下されず、同委員会はその問題についての情報を有していない。
他のケースでは、南アジア人権資料センターはインドの人権委員会にアプローチした。
SPEEDY RICE(国際人権法グループ)
アメリカは厳格な人権基準を維持すべきであり、人権委員会の特別報告者の作業はそうした精密な調査を可能とさせる。即決又は恣意的な強制執行に関する特別報告者は、はいくつかの言語道断な死刑のケースに介入するため、アメリカのNGOと協力して活動した。2000年12月には、1963年以来初めて連邦政府による死刑執行が行われた。特別報告者と人権高等弁務官によるこのケースへの介入は、国内的な擁護努力に重大性を加えた。また、連邦の死刑執行における人種及び地理的な影響を裁判所が審査(Department of Justice review)する結果を係争中のままである。
最近では、特別報告者は、白人だけで構成された陪審員による死刑と宣告された知的障害者をもつアフリカ系アメリカ人に対するネバダ州の恩赦手続に介入した。このケースへの特別報告者による時宜を得た介入は、さらなる調査を行うためになされた、パロル理事会の決定を考慮したことの顕れである。
人権委員会、高等弁務官および特別報告者の作業は、個別的な人権の完全な享受がアメリカ及び世界中において受けいれられた規範となるという希望を与えた。
DAVID LITTMAN(世界教育協会)
イラン大使は、シャリーア法が適用されるイスラム教裁判所における裁判で、イスラム教徒に対する非イスラム教徒の証言に有効性があるかどうかについて言及するのが適切であろう。しかしながら、委員及びオブザーバーは、イラン代表団による発言拒否が、明白な「イエス(有効性はない)」という答えをともなう根本的事実を裏付けるもので、イランには正義が普遍化されていないことを全員に示すものである、と結論づけることで正当化されるであろう。このことは、2月に国連人権高等弁務官が書簡で要求を出したものの、それに対する満足な回答を得られていない理由を説明するものとなる。
世界教育協会は、国連人権文書の完全かつ効果的な実施に関する決議を採択するよう、国連人権委員会に対して要求した。さらに、この問題に対して早急に対応を起こすよう条約機関に対して求めた。
回答する権利(イギリス代表)
イギリスは、北アイルランド人権委員会が果たした役割を好意的に受け止めており、同委員会の活動を醸成していく意欲を継続している。しかし、イギリスは、自国が同委員会の活動を妨害したとする代表声明を容認することはできない。理由もなく同委員会を抑制する文書はなく、理由は常に詳細に説明され、しかも説得力のあるものだ。イギリス政府は現在、同委員会が出した委員会権限の改革方法についての提言を検討中である。二人の殺人者に対する同委員会の調査要請に対しては、現在行われている独立した警察調査で最善の対応がなされている。しかしながら、今、いったん警察調査が介入したからといって、さらなるステップを除外するわけではない。
*この原文(英文)は以下から入手可能です(national institutionsを選択してください)。
http://www.unhchr.ch/huricane/huricane.nsf/newsroom
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