(ジェノバ、1999年7月5日)
今日、国連事務総長コフィ・アナンは、国連の高官たちを従え、国際商業会議所(以下ICC)会長アドナン・カサールおよびその他のICC代表者らと会合を開いた。1998年2月に始まった国連とICCとの対話を継続するためで、国際経営者連盟もその場に加わった。 1.国連は平和と開発を、財界は富の創出と自らの発展を目指しているが、相互に支えあえる大きな可能性があることを、両者とも再確認した。 2.財界指導者は、人権の促進、労働条件の改善、環境の保護を目指して、国連と民間機関を結ぶ「グローバル・コンパクト」という国連事務総長の呼びかけを喜んで受け入れた。財界指導者は、労苦を惜しまず国連に協力する準備があることを表明した。 3.世界規模の有力民間部門、特に海外直接投資で明確な効果をあげている部門は、すでに国連の目標達成に効果的な貢献を果たしているとして、特に注目された。国連、財界の双方とも、「グローバル・コンパクト」が、現在、国連とICCの間にうまい具合に構築されている協力関係を強固なものにすると認めた。 4.グローバルコンパクトの参加者は、国連事務総長の見解、つまり企業も経営方法次第で、また適切な企業実践を広めることで、人権の促進と労働基準・環境基準の改善に最高の貢献ができる、という見解に同意した。企業は、人権・労働・環境の分野で高い基準を設定することで、身近な環境や顧客・仕入先・共同事業者の間によい影響を及ぼすことになる。企業は、資産や仕事を創出することで、貧困撲滅に助力する。貧困は、国連が支持し、財界も共有する人道主義的価値観の敵である。一方、企業に、その活動の範囲を超えてまで、明らかに政府の守備範囲の責任を負わせることは期待できない。 5.グローバルコンパクトの参加者は、資産を創出し、顧客・従業員・株主に対する責任を全うする企業の能力は、グローバルコンパクトを達成するために必要不可欠であると認めた。 6.グローバルコンパクトの参加者は、最近になって新興成長市場が危機的状況に陥ったことにより、政府間だけでなく、政府・企業・市民社会がより密接に協力しあうことの重要性が強調されてきている、と同意した。 7. 世界市場は世界的なルールを必要としている、との同意がなされた。ルール作成の目的は当然、あらゆる人々がグローバリゼーションの恩恵をより一層享受できるようにすることにある。そのためには、市場のグローバリゼーションで姿を変えていく世界経済に対応する、効果的な多国間ルールの枠組みを構築する必要がある。政府は、財界の専門知識を必要としている。それは、民間部門が資産と雇用を生み出すのを認める自由と、経済安定の基礎と社会連帯をもたらすルールとの間に適正な均衡を見つける助けになるからである。 8.グローバルコンパクトの参加者は、グローバリゼーションがもたらす結果は複雑で相互に関連していることが多く、このような結果を取り扱うため、多国間でまとまった取り組みがなされること、政府・民間機関の間で金融市場が安定することの重要性を強調した。かかる取り組みが特に必要とされているのは、世界規模の経済・金融の統合と技術革新の拡大が急速な経済状況の変化をもたらしており、この状況に対応するための基準とルールを定義するためである。財界指導者は、国連と主要な政府間組織が行なっている技術革新分野の事業を強力に支援することを表明した。 9.グローバルコンパクトの参加者は、グローバルコンパクト参加政府が新たな貿易ラウンドを始める機会として、きたる第3回世界貿易機関(WTO)関係閣僚会議の重要性を強調した。また、新ラウンドでなされた素早く実りのある決定は、自由化が生み出した経済の勢いを強化し、より強力なルールベース多国間取引システムの構築に貢献するものである、と認めた。 10.グローバルコンパクトの参加者は、歴史が示すとおり、人権・労働基準・環境基準の改善は、市場経済と適切な政府管理が相互に影響を及ぼして発展していく状況があれば、より達成しやすくなるとの認識を示した。 11.市場開放へ新たな意欲を持って取り組むことと、労働問題・人権問題・環境保護に効果的に対処していくことは、相互に補強しあっており、今後も協力して推進していくべきである、との同意がなされた。しかしながら、ルールに基づく多国間取引システムは、取引とは関係のない労働・人権・環境問題に対応するものではない。対応させようとしても、良い結果は望めず、取引システムを過大な負担や保護主義増長の危険にさらすことになろう。 12.グローバルコンパクトの参加者は、国連の中でも、特に環境・人権・労働問題の扱いを担当する機関がこれらの問題に対処するのが望ましいということで同意した。対処を進めていくうえで、かかる国連機関の権力・影響力・資源ベースを強化することは、最も生産的な方法である。世界共通の人道主義的価値観を促進すれば、開放市場を保護し、グローバリゼーションの発展を強力に支持することになるであろう。 13.国連と財界の双方は、後開発途上国への海外直接投資を促進するための事業が、すでにICCと国連貿易開発会議(UNCTAD)によって着手されていることに、満足をもって言及した。また、民間部門の発展を喚起し、後開発途上国の開発を促進するため、より一層共同して先導していくことを期待している。 14.国連と財界指導者は、国連と民間機関の継続的な協力関係がグローバリゼーションの恩恵を大きく広めることになるであろう、ということで同意した。国連と財界の共同作業は、人権を促進し、労働基準と環境基準を向上するためのものである。また、国連が掲げる理想の現実化を可能にし、財界が地球規模で繁栄を維持するため最大限貢献できる状況を整える助力となるであろう。 (仮訳:北村)
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