(文:横浜国大修士課程 川島聡)
1.人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約等といった主体別の人権条約は、各種の属性を有するが故に差別を被っている人の人権保障に大きく貢献している。 しかし、障害を持つ人に対する差別を撤廃するための人権条約は未だに成立していない。これまでに、障害者差別撤廃条約草案が1987年と1989年に国連において提案されたが、いずれも失敗に終わっている。 2.だが今日、条約作成への新たな動きが見られる。2000年3月に開催された世界NGOサミットにおいて、主要な国際NGOである国際育成会連盟、障害者インターナショナル(DPI)、世界盲人連合、世界ろう連盟、及び国際リハビリテーションが、条約の作成を盛り込んだ「北京宣言」を採択したのである。 3.また、2002年は、障害者インターナショナル第6回世界会議(札幌大会)の予定年であり、アジア・太平洋障害者の十年の最終年でもある。これらのイベントは障害者差別撤廃条約の実現にとって絶好の好機と言える。そして、これらのイベントまでには条約案が起草され、条約の署名そして批准へと進んでいくことが切望される。そのためには、イベントを成功させることはもちろんのこと、それまでの地道な活動を積み重ねていくことが極めて大切であろう。 4.従来、日本政府は障害者差別撤廃条約の成立に対して否定的な立場を示し続けてきている。このような政府の立場を変えさせ、また、障害者差別撤廃条約を実現するためには、NGOの力そして市民の力が不可欠である。これまでに国連で採択された障害者に関する諸宣言は、NGOの力なくしてありえなかった。また、先に挙げたような差別撤廃条約も同様である。 5.最近の朝日新聞「論壇」(2000/7/26)において、長瀬修氏が、障害者の権利条約の動向について簡潔に述べておられる。また、障害者インターナショナルに関する歴史的変遷を記した読み応えのある邦訳として、『国際的障害者運動の誕生』ダイアン・ドリージャー著/長瀬修編訳、エンパワメント研究所発行、筒井書房発売(2000年)、がある。 (1)障害者差別撤廃条約及び障害関連の国際動向の詳細については、長瀬修氏(現在:障害・コミュニケーション研究所代表)の次のホームページを参照。 http://ehrlich.shinshu-u.ac.jp/tateiwa/0w/no01/0.HTM (2)障害者インターナショナル(DPI)第6回世界会議札幌大会のホームページは以下を参照。 http://www.dpi-sapporo.org/ |
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