年次会合結論
アジア・太平洋地域国内人権機関フォーラム
2000年8月7日‐9日 ニュージーランド、ロトルア はじめに 1.ニュージーランド、オーストラリア、フィジー、インド、インドネシア、ネパール、フィリピン、スリランカから構成されるアジア・太平洋地域国内人権機関フォーラム第5回年次会合は、2000年8月7日から9日までニュージーランドのロトルアで開催された。 2.フォーラムはニュージーランド人権委員会に対してこの会合の主催について感謝を表明した。また国連人権高等弁務官事務所に対し共催及び会合と会期間ワークショップの財政支援について感謝し、オーストラリア開発庁に対しその財政支援について感謝を表明した。フォーラムは特に事務局とニュージーランド人権委員会のスタッフの今会合を組織する活動への努力に謝意を表明する。 3.フォーラムは地域内の政府、その他の関係機関、国際的、地域的そして国内的NGO、産業界からの100を超える代表のオブザーバー参加を歓迎した。参加者は、オーストラリア、中国、クック諸島、インド、インドネシア、日本、大韓民国、ラオス、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、パプアニューギニア、サモア、シンガポール、ソロモン諸島、タイおよびベトナムの政府代表、ならびに東チモールの人民代表であった。また特にカンボジア、タヒチを含む24のNGOからの代表も会合に参加した。 4.ニュージーランドの検事総長で司法副大臣のマーガレット・ウィルソン閣下がニュージーランド首相、ヘレン・クラーク閣下の代理として開会の言葉を述べ開会した。首相の言葉には国内人権機関の活動に対するニュージーランド政府の強力な支援と、アジア・太平洋地域国内人権機関フォーラムの役割が述べられていた。ニュージーランド外務大臣フィル・ゴフ閣下が「民主主義の制度的強化」促進への挑戦について閉会式で述べ、会合を閉会した。 5.この会合の特別テーマは国内人権機関と経済的、社会的及び文化的権利の保護と促進―国際的、地域的戦略であった。フォーラムは国連人権高等弁務官地域代表で国連人権委員会副議長のP.N.バグワティ判事、および国連社会権規約委員会の特別報告者ポール・ハント教授をこのテーマに対する基調報告者として歓迎した。基調報告者、ならびにその後の議論は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約がこの規約の条項を侵害する構造的調整措置に対する盾になりうる事実に注意を払った。 結論 6.国内人権機関の地位と責任は、国連総会で採択された国内人権機関の地位に関する原則(決議48/134、「パリ原則」)を満たすものであるべきことをフォーラムは確認した。国内人権機関はパリ原則に従い、独立かつ多元的で、国際人権基準に基礎を置き、非政府の市民社会組織に参加の機会を与える適切で包括的な協議過程で設置されるべきことをフォーラムは強調した。これらを基礎として、ネパール国家人権委員会のフォーラムへの参加を認めた。これによって、フォーラムのメンバーは8機関となった。 7.フォーラムメンバーは、フォーラムの法構造と機構運営に関連する問題を検討するるため第4回年次会合で任命された作業部会の報告を考慮した。フォーラムメンバーは、 フォーラムの法人格化、ならびに暫定管理運営評議会および執行作業部会の設置に関する作業部会が勧告した決議を原則的に承認した。フォーラムメンバーは、この報告に対する補足意見を6週間以内に提出するものとする。フォーラムメンバーは、国際調整委員会への4人の地域代表の選出に関するガイドラインを策定すること、ならびに当分の間現在の4人の代表が職務を継続することに合意した。 8.フォーラムは、とりわけ、国家、国内人権機関およびNGOが経済的、社会的及び文化的権利の保護と促進のためとりうる実際的な措置に関する地域ワークショップの開催によって、経済的、社会的及び文化的権利の促進と保護のより進んだ手段を模索することに合意した。 9.フォーラムメンバーは、近年の人種主義の経験について議論し、世界中の全ての国家と社会においてなんらかの形の人種主義がみられることに合意した。フォーラムメンバーはそれぞれの人種主義に対する取り組みの経験を交換し、人種主義の克服が国内機と市民社会が直面している最も重大な人権課題であるという見解を表明した。フォーラムメンバーは、「人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連のある不寛容に反対する世界会議」(以下「反人種主義世界会議」)の重要性を強調し、アジア・太平洋地域がこの会議に最大限貢献できるようにすることの重要性を力説し、そのためメンバー間の立場を調整することに合意した。フォーラムメンバーは事務局の背景文書に関する勧告を支持した。フォーラムメンバーは、反人種主義世界会議に関係する活動計画およびフォーラムが主張すべき共同の立場に関する報告を事務局が各メンバーに要請することに合意した。 10.「民主主義の推進:国内人権機関とアジア・太平洋地域国内人権機関フォーラムの役割」というテーマは、フォーラムメンバーと地域内のNGOからの代表によって率直かつ建設的に議論された。フィジーとインドネシアの人権委員会の代表がこのテーマについて演説した。その中で、それぞれの機関が市民的・政治的危機を取り扱うさいに直面する困難と課題について詳細に述べた。スリランカの代表は、経済・社会状況と深刻な国家危機を踏まえて、発展途上国の国内人権機関が直面している特有の課題について注意を払った。両代表、とくにフィジー代表は、マイノリティと最も権利を侵害されやすい集団の人権保護に関して、包括的な民主主義という理念を啓発すること、ならびに彼らの経済・社会過程への参加を保護することの重要性について述べた。その後の議論で、 フォーラムメンバーはこれらは、民主主義制度の歴史が浅い社会のみならず、伝統的に民主主義制度をとる社会にとっても課題であることに合意した。フォーラムメンバーはまた、民主主義と法の支配は必要であるが、それ自体では人権を守るためには十分でないことにも言及した。フォーラムメンバーは、国連、特に国連人権高等弁務官との協力とにより、国内人権機関、フォーラムの各メンバー、および人権一般に影響する危機に対する地域的対応を進めるにあたり、フォーラムは重要な役割を果たしうることを考慮した。フォーラムメンバーは、関係するメンバー機関の要請により、このようなタイプの状況に対応するための指針を事務局が策定するよう要請した。 11.国内人権機関に関する高等弁務官特別アドバイサーおよびフォーラム事務局長は、2000年3月に北京で合意された主要な要素に基づき、また近年創設された国内人権機関のニーズとその創設を検討している諸国からの要請をとくに配慮しつつ、アジア・太平洋地域における人権の促進と保護に向けた取り組みを調整する必要性を強調した。フォーラムメンバーは、利用可能な技術、知識、経験そして資源が最大限に利用されるようにするため、社会のすべてのセクターとの協力の重要性、ならびにNGOとの協力を含む地域的協力を引き続き強化する必要性を再確認した。 12.加えて、フォーラムメンバーは事務局が準備した背景文書における数々の論点に取り組み、同文書における勧告を支持した。これらの論点は、「国連グローバルコンパクトにおける国内人権機関の役割」、「国内人権機関と政府の活動と責任」、「女性と人権」そして「国内人権機関の主導による公開調査の実施」であった。フォーラムはまた、アジア・太平洋地域における子どもの兵士としての利用および国内避難民の状況に関する最近のワークショップ代表からの報告を検討し、ワークショップの報告と最終文書において国内人権機関に向けられた勧告に留意した。 13.フォーラムは国内人権機関の新設に関する提案された指針について議論した。フォーラムは事務局が改善し指針案についてのコメントを6週間以内に求めること決定し、事務局に対し、改訂された指針検討し承認するため、すべてのメンバーにそれを配布することを要請した。 14.フォーラムは5月7日から9日にかけてスバで行われた女性の人権に関するワークショップでの国内人権機関の役割に関する最終文書、特にパラグラフ17における行動勧告を受け入れ、これを支持した。またフォーラムは国内人権機関に向けられた勧告に留意し、その勧告の実施を事務局に委ねた。次回のフォーラムの年次会合では、これらの勧告に対し取られた行動に関する報告をフォーラムメンバーから受けとるものとされた。 15.フォーラムは法律家諮問評議会の就任式を歓迎し、評議会のメンバーに対し指名受諾について謝意を表明した。評議会は第4回年次会合にしたがいフォーラムが評議会に委ねた死刑およびインターネット上の子どもポルノグラフィーに関して暫定報告を提出した。国連人権高等弁務官国内人権機関特別アドバイサーは、域内における人権という大目的を押し進めるにあたっての評議会の重要性に留意した。フォーラムは評議会に対し、その暫定報告の提出について謝意を表明し、その最終報告を検討し採択するため、フォーラムメンバーに回付することを事務局に要請した。 16.フォーラムは、東チモールにおける「人権が根づく社会作りのためのプログラム」(human rights capacity building program)の企画要請を同国人民代表から受理した。 フォーラムは事務局に対して、国連人権高等弁務官、国際連合東チモール暫定統治機構(UNTAET)、関係する政府そしてNGOと協議し、この要請に対する対応案を進展させるよう要請した。 17.スリランカ人権委員会は約12ヶ月以内に行われる第6回アジア・太平洋地域国内人権機関フォーラム年次会合の開催地としての指名を快諾した。 (訳:山科真澄/神戸大学大学院国際協力研究科修士課程)
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