(目的)
第1条 この法律は、すべて者による差別を禁止し、もって、人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 1 この法律において、「社会的身分」とは、出生によって決定される社会的な地位を言う。
2 | この法律において、「人種等」とは、人種、皮膚の色、民族、国籍、門地又は社会的身分を言う。 |
3 | この法律において、「人種集団」とは、特定の人種等を共有するものから構成される集団をいう。 |
4 | この法律において、「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他の法令により公務に従事するものを言う。 |
第3条 1 この法律において、「人種差別」とは、人種等に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先(以下、「区別等」という。)であって、平等の立場での人権を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの(公務員によって行われるものであるが、その他の者によって行われるものであるかを問わない。)をいう。
2 | この法律は、国籍(ある者が過去又は現在有する国籍を含む。)に基づく合理的な区別等には適用されない。 |
3 | この法律において、人権の平等な享有又は行使を確保するため、保護を必要としている特定の人種等によって構成される集団又はそれに属する者の適切な進歩を確保することのみを目的として、その結果として、必要に応じてとられる特別措置は、人種差別とみなさない。但し、この特別措置は、その結果として、異なる人種等によって構成される集団に対して別個の権利を維持することとなってはならず、また、その目的が達成された後は継続してはならない。 |
(一般的差別禁止規定)
第4条 何人も、人種差別を受けない。
(雇用)
第5条 1 公務員及び事業主は、労働者の募集、採用、昇進、教育訓練、住宅資金の貸し付けその他これに準ずる福利厚生の措置であって厚生労働省令で定めるもの、定年、解雇その他労働関係に関する事項について、人種差別をしてはならない。
2 | 前項の規定は、労働者の採用及び雇用の継続について、事業の性質上、特定の人種等に基づく区別等が真に必要である場合には、適用しない。但し、当該区別等の必要性は、当該区別等を行おうとする者において、これを証明しなければならない。 |
3 | 第1項の規定は、自己又はその家族が全部又は一部を使用し又は占有する住宅を事業所とするものであって、雇用者が10名を超えないものには、適用しない。 |
(住居)
第6条 1 何人も、自己若しくは家族のための住居又は事業用の家屋若しくは施設の購入若しくは賃貸その他の利用の申込み、又は所有若しくは賃貸その他の利用、又は処分において、人種差別を受けない。
2 | 前項の規定は、自己又は家族が全部又は一部を利用し又は占有する住居、家屋、又は施設については、適用しない。 |
(物品又は役務の提供)
第7条 1 何人も、輸送機関、ホテル、飲食店、喫茶店、公園等一般公衆の使用を目的するあらゆる場所又はサービスを利用することについて、人種差別を受けない。
2 | 一般公衆の使用を目的としない場所又はサービスの利用について、人種等に基づいて区別等を行う場合には、当該区別等を行おうとする者において、当該区別の必要性を証明しなくてはならない。 |
(団体への加入)
第8条 1 何人も、次に掲げる団体への加入又は退会、構成員□の維持又は変更、
当該団体が供与する物品、権利又は役務の享受において、人種差別を受けない。
一 定款、寄附行為その他団体の設立に係る文章を有するもの
二 団体の構成員となるべきものが20名を超えるもの
2 | 前項の規定は、団体の目的を実現するために真に必要な区別等であって、人種に等に基づいて行われるものには、適用しない。但し、団体の目的の真実性及び区別等と当該目的の合理的関連性は、当該区別等を行おうとする者において、証明しなければならない。 |
(差別的言動)
第9条 何人も、特定のものに対し、その者の有する人種等の属性を理由として侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動をしてはならない。
(差別煽動)
第10条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 | 人種等の共通の属性を有する不特定多数のものに対して当該属性を理由として人種差別を助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報の頒布、掲示その他これらに類する方法で公然と摘示する行為。 |
二 | 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として人種差別をする意思を広告、掲示その他に類する方法で公然と表示する行為。 |
(公務員による差別煽動)
第11条 1 公務員は、人種差別を助長し、又は扇動してはならない。
2 | 前項の適用において、「扇動」とは、特定の行為を実行させる目的をもって、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいう。 |
3 | 第一項の適用において、「助長」とは、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、特定の行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいう。 |
(不利益取扱い)
第12条 この法律が定める権利を行使し又は権利の侵害を申し立てた者は、当該権利の行使又は当該申立を理由として、不利益を受けない。