参考資料 人権擁護法案の概要
(人権フォーラム21作成)

1. 人権委員会の組織体制

@ 委員会の性格三条委員会。法務大臣の所轄に属する。委員長及び委員は独立して職権を行使する。
A 委員会の構成委員長+常勤委員+非常勤委員から成る。定数5人。3人が非常勤委員。任期3年。再任可。
B 委員の資格要件人権に関する高い識見を有する学識経験者から選任。一方の性が2名未満になってはならない。
C 委員の任命両議院の同意を経て、総理大臣が任命する。
D 委員の身分保障委員長及び委員は、(1)禁錮以上の刑に処せられたとき、(2)心身の故障又は義務違反・非行が認められたとき、(3)任命に対する両議員の承認が得られなかったときを除いては、罷免されない。(2) の認定は、人権委員会の全員一致(本人は除く)で行う。
E 事務局委員会には事務局を置く。事務局職員には、弁護士となる資格を有する者を加えなければならない。地方には地方事務所を置く。地方事務所の事務は地方法務局長に委任することができる。


2. 救済手続

@ 一般救済手続(1)助言、(2)関係機関・団体の紹介、(3)法律扶助に関するあっせん、(4)その他の援助、(5)加害者への説示・啓発・指導、(6)当事者間の調整、(7)関係行政機関への通告、(8)捜査機関への告発【対象】あらゆる人権侵害
A 一般調査人権侵害の救済又は予防のために必要な調査を行うことができる。関係行政機関に対しては、(1)資料・情報提供要請、(2)意見表明要請、(3)説明要請を行うことができる。
B 特別救済手続(1)調停・仲裁:当事者の一方又は双方が申請することができる。職権調停も可。調停委員会・仲裁委員会は人権委員会の委員及び人権調整委員の中から委員長が3名を指名する。少なくとも一人は弁護士となる資格を有する者でなければならない。【対象】@公務員による差別、A物品・サービス提供における顧客に対する差別、B事業主による労働者に対する差別、C特定の者に対する悪質な差別的言動、D特定の者に対する悪質なセクハラ、E公務員による虐待、F福祉施設・医療施設等の職員による虐待、G学校職員による虐待、H児童虐待、IDV、J高齢者に対する虐待、Kマスメディアによるプライバシー侵害・名誉権侵害・過剰取材(※)、Lその他被害者自らでは排除できない深刻な人権侵害(※)
(2)勧告・公表:行為の中止、被害の救済・予防を勧告できる。勧告に従わない場合は、勧告内容等を公表できる。
(3)訴訟援助:勧告をした事案が訴訟になった場合には、被害者側に資料を閲覧・交付することによって、その訴訟を援助する。人権委員会が訴訟に参加することもできる。
(4)差別助長行為停止勧告・差別助長行為差止請求訴訟:行為の中止や将来同様の行為を行わないことを勧告できる。勧告に従わない場合には、当該行為の中止や将来同様の行為を行わないことを求める訴訟を人権委員会自らが提起することができる。【対象】不特定多数の者に対する差別助長行為(※)
C 特別調査(1)出頭命令・質問、(2)文書・資料提出命令、(3)立入調査を行うことができる。拒否した者には30万円以下の過料を課すことができる。【対象】特別救済手続の対象となる人権侵害行為のうち、※を除いたもの。
D救済手続に
関する特例
(1)労働関係の人権侵害については、厚生労働大臣が人権委員会と同様の調査・救済権限を行使する。(調停・仲裁は紛争調整委員会が行う。)(2)船員労働関係の人権侵害については、国土交通大臣が人権委員会と同様の調査・救済権限を行使する。(調停・仲裁については、船員地方労働委員会が行う。)


3. 特別救済手続の対象となる人権侵害行為の内容

@ 差別人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向を理由とする不当な差別的取扱い。
A 虐待(1)人の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。(2)人にその意に反してわいせつな行為をすること又は人をしてその意に反して猥褻な行為をさせること。(3)人の生命又は身体を保護する責任を負う場合において、その保護を著しく怠り、その人の生命また身体の安全を害すること。(4)人に著しい心理的外傷を与える言動をすること。
B 差別助長行為(1)人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して,当該属性を理由として不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の頒布、掲示その他これに類する方法で公然と摘示する行為であって、これを放置すれば、当該差別行為を助長・誘発するおそれがあきらかであるもの。(2)人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して、当該属性を理由として不当な差別的取扱いをする意思を広告、掲示その他これに類する方法で公然と表示する行為であって、これを放置すれば、当該意思表示を行った者が差別を行うおそれが明らかであるもの。
C メディアによる
人権侵害
(1)報道機関等が報道するに当たり、犯罪被害者、犯罪行為を行った少年、犯罪被害者・加害者の家族の私生活に関する事実をみだりに報道し、その者の名誉又は生活の平穏を著しく害すること。(2)犯罪被害者、犯罪行為を行った少年、犯罪被害者・加害者の家族に対する取材をするに当たり、その者が取材を拒んでいるにもかかわらず、その者に対し、つきまとい、待ち伏せ、電話やファクスの送信などの行為を継続的に又は反復して行い、その者の生活の平穏を著しく害すること。


4. 人権委員会のその他の権能

@ 公聴会の開催必要があると認めるときは、公聴会を開いて、広く一般の意見を聴くことができる。
A 公表法律の適正な運用を図るため、必要な事項を一般に公表することができる。
B 国会への報告毎年、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、事務の処理状況を報告し、その概要を公表しなければならない。
C 意見提出内閣総理大臣や関係行政機関の長、又は内閣総理大臣を経由して国会に対し、必要な事項に関し、意見を提出することができる。
D 国際協力所掌事務に関する国際協力を行う。


 

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