札幌公聴会での意見表明要旨(1月30日)


大学講師 有道 出人(あるどう でびと) debito@debito.org

 やがて世界と日本は21世紀を迎える。世の中がますますグローバル化しつつあり、ひいてはボーダレス経済の発展に伴い、移民者の流れが盛んになっている。日本もその影響を受けないわけにはゆかない。現代の日本において、90年代の冒頭に外国人登録者数は100万人を超え、96年には全国人口比においては1%を超えてきた。しかし、日本に永住する外国人数、私の表現では「国際住民」数が史上最高に達したと主張できるが、多くの面で日本社会は社会的に、そして、法的に開放的であるとはいえない。この講座の中では、まず、日本社会に見られる排他的傾向を具体的に検証したい。次に、日本、特に北海道を日本人、そして非日本人にとって共に住みやすい故郷にするにはどうするべきなのかを考えてみたい。

I 日本の外国人・国際住民に対する排他的姿勢


1) 外国人に犯罪が転化される場合

イ) 2000年2月25日の『週間朝日』に次のような広告が掲載された。「あなたの防犯対策は大丈夫ですか。いま、外国人窃盗団による被害が急増中」という見出しで美和ロック(株)は、外国人に対する読者の恐怖をあおり、自社製品の販売促進を狙っている。このように外国人、特に不法滞在外国人イコール凶悪犯罪者という偏見を前提とした広告が野放しになっている。欧米ではこのような人種的偏見をあおるような広告は犯罪行為であり、法的に追及されるだろう。次のホームページに詳しい資料が掲載されている。
www.debito.org/TheCommunity/communityissues.html#gaijinimages
 ロ) 2000年4月9日、東京都知事である石原慎太郎氏は自衛隊員に対する訓示の中で、「外国人の凶悪な犯罪が繰り返されており」と言い、大災害の際には暴徒と化した「三国人」に対して防犯が自衛隊活動の任務であると言った。石原氏は「不法滞在外国人」を特に指摘していたが、実際の防犯活動の際、如何なる方法で合法の外国人と不法滞在外国人を見分けるのか不明のままであった。また、5月1日の産経新聞では一面で「外国人犯罪再び急増」との記事を掲載し、日本人の犯罪率の推移、及び増える外国人登録者数と犯罪率との比較を載せていなかった。ただ単に、犯罪件数の増加のみで上記のような見出しで報道する姿勢に問題を感じる。石原氏の言動については次のホームページを参照。
www.imadr.org
 ハ) 日本の警察庁も人騒がせな戦略に訴える場合もある。以下の警察庁のホームページに「しのび寄る国際犯罪組織」の見出しの下に、様々な海外窃盗団が日本に侵略していることを示唆する図面が掲載されている。また、本年2月には、ブラジル人などの外国人住民が多い地域に対して静岡県警察本部は「来日外国人犯罪の特徴・犯罪被害に遭わないために」という小冊子を出版、配布した。商店に様々な防犯上のアドバイスを与える中で、「犯人の外国人グループは2人から4人で行動」、「グループが乗ってきた車を確認し、ナンバーを警察に通報」など、外国人を最初から犯罪者として見なしている記述が目立つ。警察が防犯意識を明確に持つことは問題ないが、一般市民にその見方をそのまま流布する姿勢には危険を感じる。
www.npa.go.jp/koho2/mado_3.htm
www.debito.org/The Community/shizuokakeisatsuhandbook.html

2) 外国人が法的に排他的扱いを受ける場合
もちろん、世界住の全ての国は当該国の国籍を有する者と他国籍を持つ国内滞在者を同一に待遇するわけではない。しかし、日本には経済発展を達成した先進国としては外国籍を持つ滞在者に対して例外的なルールを持ち、意外なところで[国際住民]に対して不利益を与えている。
 イ) 日本の戸籍制度においては国際結婚の配偶者は「透明人間」扱いとなっている。日本で正式に結婚していてもその一方の配偶者が外国人であるならば、戸籍謄本では「妻」か「夫」の記載欄には未記入となっている。そのままでは母子・父子家庭に見られてしまい、特に福祉行政の場面では誤解の原因となる。
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 ロ) 現行法では住民票にも外国人は不記載である。OECDの国の中で国籍者=住民の立法は日本のみでる。このような待遇は、住民税を納入している国際住民に対して失礼であり、自身などの自然災害の際には救済の対象とならないばかりか、行方不明者のリストにも載ってこない。帰化する前の様子は 
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 ハ) 現在日本では日本国籍は血統主義(jus sanguinis)によって与えられている。すなわち日本人の血が入っていない子供は法的には日本人と認められない。アジアの中で血統主義の立場を堅持しているのは日本が唯一ではないが、先進国ではスイスを除いて出生主義(jus soli)の立場を取っており、その国で生まれた子供は自動的にその国の国籍が与えられる。1996年の全国統計によると、外国人登録者の中で韓国・朝鮮籍の外国人は46.4%(道内43.2%)、中国人16.4%(道内18.7%)である。もし、殆どの韓国系の人々と中国系の人々の過半数が日本で生まれたと仮定すれば、外国人登録者の半分以上は日本生まれということになる。日本で生まれ育っているにもかかわらず、数世代に渡って外国人扱いされていることになる。このような現状に問題がないであろうか。
 ニ) それでは何故長期滞在の外国人は帰化申請しないのであろうか。実は、近年日本への帰化者数は年間一万五千人を下回った。1993年には11、146人であった。私は帰化申請者である問う経験をもとに述べるが、帰化条件を満たすことは難しく、日本への帰化申請には非常な困難が伴うことを指摘したい。戸籍を獲得するために必要な書類の作成は非常に煩雑であり、その他に、両国籍の所有を認めない等の条件も厳しいと思う。また、法務省の調査員が素行調査のため自宅訪問や近隣の調査を行い、申請者の日本人社会への同化の程度を判断する。調査員の「違和感がある」などの主観的な判断で帰化申請が却下されることもあるし、単なるスピード違反歴を理由に却下されることもある。本年6月の毎日新聞によると、89年イタリアから帰化したゾージ氏が母国で殺人容疑者であることが後に判明し、今後法務省は素行調査を一層厳格にする方針を打ち出したようだ。私個人の視点から言えば、生まれながらの日本人でさえ日本人になるのは難しい。帰化を望む外人に対して条件の一層の緩和が望ましい。
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3) 外国人が経済的な面で排他的扱いを受ける場合。 外国人であるがゆえに国際住民であっても経済的に様々な不利益を蒙っている。例えば、クレジットカードや住宅ローンは永住者以外は自動的に却下される。ここでは2つの経済的差別に焦点を当てておこう。
www.debito.org/TheCommunity/communityissues.html
 イ) 外国人教員に対する雇用条件面での問題。 日本の大学では常勤にもかかわらず外国人教員にのみ任期制を導入している。文部省統計要覧(平成9年)によると、96年度国立、公立、私立大学・短大それぞれの常勤雇用の「外国人教員」数はそれぞれ、1442人、275人、3137人である。文部省に問い合わせたが、その中で任期制に基づいている数は不明である。アイヴァン・ホール著の『知の鎖国』(毎日新聞社、98年)によると、たいていの日本の大学では外国人教員の雇用に関しては様々な制限が加えられている。「日本にいる外国人学者は渡り鳥のままである。実際、短期の「交換」訪問者であろうが、数十年も滞在した者であろうが、短期契約という回転扉にとらわれたままである。」(p.122)その規制には様々な形態があるが、35歳までのような年齢制限、雇用期間三年間などの雇用契約制限、基本給は高いがボーナス無しなどの給与制限が一般的である。これらの雇用条件は外国人教員のみに適用される場合が多く、日本人教員はこのような不利益から解放されている。非常に差別的な雇用契約といえる。ホール氏と私の共同研究によると、殆どの日本の国公立の大学は外国人教員に対して「外国人教師(1年契約)、外国人教員(大抵三年契約)」の条件をつけて常勤者として採用している。しかし、殆どの日本人の大学はその常勤教員に対して任期制度を採っていない。このような雇用制度は永住を希望する外国人にとって大変不利である。例えば、私は北洋銀行に住宅ローンを申し込んだ時、却下の理由が「外国人教員は生活不安定であるから」であった。問題のある外国人教師、教員制度を実施している大学のリストは以下のホームページに挙げてある。
www.debito.org/blacklist.html
 ロ) 人種・国籍に関する差別行為の禁止法。 これが如何なる大きな問題であるかが、最近の道内の事件で明らかになった。7年以上前にロシア船員によって被害を受けた小樽の温泉「オスパ」は、「Japanese Only」という看板を掲示して外国人全員を入浴禁止にした。その際、国際結婚の外国人配偶者も入場禁止とするものだった。そのため家族そろっての入浴ができなくなった。その後、2年前の開店時より小樽の温泉「湯の花」も外国人の入浴を禁じ、その後、小樽市の「温泉パノラマ」と稚内市の「湯らん銭」も外国人に門を閉ざした。しかし、後者は外国人専用の別施設「外人風呂」を設置した。過去2年間、このような外国人排斥の動きは他の市町村や他の業界に広がっている。稚内市ではスポーツ店や理髪店、根室市では温泉も同じような行動に出ている。本年7月には紋別市の紋別飲料店組合はロシア語で「日本人専用」の掲示を始めたが、法務局人権擁護部が差別行為として警告を発した。現在のところ、「温泉パノラマ」とスポーツ店は差別的表示を撤回した。しかし、このような差別的行為は法的には取り締まることは出来ない。私は小樽市や、北海道庁、道知事には人種差別禁止条例を制定するように陳情してきたが今だに継続審議のレベルにとどまっている。このような差別的行為は明らかに憲法違反であり、国際条約違反である。法務省によると、外国人の人権については憲法及び世界人権宣言などによって保障されている。しかも、96年1月、日本は「あらゆる人種差別の撤廃に関する条約」が発効して、第二条第一項の下、「遅滞なく」人種差別を撤廃する政策を制定する義務があるにもかかわらず、いまだ制定に至らない。しかも、昨年私本人は帰化になっても湯の花が「外見がまだ外国人だから入場禁止」と言った。よって、司法的な声明のために、2001年2月1日より、札幌地裁にて湯の花を相手にして人種差別のもとで提訴する。
www.debito.org/nihongotimeline.html
www.debito.org/nihongo.html


II. 国際住民のために、21世紀日本及び日本法務省はどうすべきか

現在日本は急激な老齢化の進行の中で移民の労働力が必要となっている。日本の出産率が低いために、年金制度を維持するためにも海外から移民を導入して納税者人口を増やさなければならない。でも、外国人にとって今まで以上にバリアーフリーで住み易い社会にしなければ海外からの移民は定着しないと思う。国際住民にとって住み易い地域社会の創造に向けて私なりの提案をしたい。

 イ) 人種・国籍による差別撤廃法の制定:遅滞なく民間会社やマスコミにもその法律の精神を徹底、厳密に実施する。
 ロ) 法務局人権擁護部を法律上で強化し、罰則規定も含め法体系を整備する。
 ハ) 地方で人権オンブズマン制度を設置し、効率的に運用し、罰則する権限も与える。
 ニ) 大学等の教育機関における外国人に対する任期制を廃止し、日本人との均等雇用制度を導入する。
 ホ) 国籍に関係なく、日本に住む外国人を戸籍謄本と住民票に記載する
 ヘ) 帰化申請の条件を緩和し、素行調査を廃止し、複数国籍の所有を認める。
 ト) 日本で生まれた子供には日本の国籍を与えるという出生地主義を導入し、永住件取得の条件の緩和、再入国許可の無料化を実施する。
 チ) 経済、金融アクセスの面での外国人住民に対する規制を緩和する。
 リ) 政府も国際住民の受け入れと定着に関する歓迎と前向きの姿勢を打ち出し、外国人風の移民者であっても日本人として待遇する政策を打ち出す。
 ヌ)永住者に参政権を与える。(現在、圧倒的に永住者は日本生まれである。正常国ならば本国生れなら本国の国籍を有するし、そのため既に参政権もあるわけである。)
 ル)国際児のために、国民・住民・国籍などに関する血統主義意識をなくして、政府レベルでも公に「日本人は法的な様子であり、外見が違っても日本人及び住民である」を助長する。
 ヲ)外国人が社会問題である様な意識を中和するために、「外国人も日本にきちんと納税または社会貢献しているので、外国人も住民として尊重しよう。」などを政府のレベルでも意識高揚する。


※ 本文の記述を転載した際に、一部間違いがございましたので、2002年2月22日に修正いたしました。上記の本文は修正したものです。有道出人様にご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。

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