【資料3】
障害者が入所している福祉施設等の公的施設における人権侵害と望ましい人権救済制度


DPI障害者権利擁護センター
@ 密室的人権侵害の実態

事例1から(言語・肢体障害、身障1級、男(42歳))
 施設では、施設長や理事長が絶対的な権限を持っており、職員や障害者が反発するといじめに会う。障害者の場合、介助の手を抜かれたり、病院などに鞍替えさせられる場合もある。家族も他に行く所がない状況のため、はっきりと物が言えない。このように、施設利用者は施設から気に入られなければ、本人の意向とは無関係に退所や措置替え(別施設に移すこと)が行われることがある。また、家族から酷い仕打ちを受けていた場合は、施設利用者の権利意識は弱くならざるをえない。
事例2から(肢体障害、身障1級、男(65歳))
 施設では、4人部屋なのにカーテンすらなく、移動式の衝立て一つしかない。同室者のプライバシーは全くなく、部屋にはドアもないので、廊下からも丸見えである。施設側に苦情を言うと、居室が狭くなるとの理由で却下され、逆に、持ち物を制限するよう締め付けられた。このようにプライベートな空間が非常に限られていて、私的なことまで対し干渉を受ける。また、個人の持ち物まで干渉を受けうることも多々あり、個人の権利が保障されているとはとてもいえない。

A 現行の救済制度は適切に機能しているか

・ 現状では、こうした問題に直接的に対応できる救済制度は存在しない。

・ 補足
→社会福祉法(2000年通常国会において採択)に対するDPI日本会議の修正意見からの抜粋
<苦情解決の仕組みについて>
「福祉サービスの利用の援助及び利用者等からの苦情の解決」にあたっては、セルフアドボカシーを基本に、多様なネットワークの連携によるチェック機能の強化と苦情相談や権利侵害に対応する権利擁護システムの整備が急務になっている。
(1) 都道府県社会福祉協議会に設置される「運営適正化委員会」による苦情解決の対応は、「事業者段階での解決が困難な事項」となっており、基本は「事業者段階での当事者間での解決」になっている。「第三者立ち会いの下での話し合い」という体制は示されているが、事業者段階で解決できなかった場合に、「福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情の解決のあっせんを行う」(第八十五条)となっているが、第三者機関の役割の確保と明確化という観点から、サービス提供者の「同意を得て」は、 削除すべき。
(2) 都道府県社会福祉協議会の組織構成からみて、施設経営等の事業者会員の割合が高いことから、利益相反の問題が伴うため、第三者機関としての独立性と権限についての明確な担保が必要。
(3) 都道府県の条例や要綱に基づく第三者委員会を設置して、勧告等を含む権限を明確に規定することを提案する。第三者委員会の構成には、利用者代表と事業者代表の双方をを含む方が、かえって公平・公正性の確保が期待できる。

B 望ましい救済制度のあり方

・ 地域横断型の障害当事者・弁護士・市民などで構成する福祉オンブズマン連絡会が存在し、各入所施設に担当オンブズマンを配置し、定期的にオンブズマンが施設を訪問して入所者の苦情や不満等を聞く。
・ 施設側に対して、本人の側にたって事情聴取(調査)、あっせん、勧告ができるようにする。
・ 入所者本人と施設側の責任者及び加害者との間に、オンブズマンまたは第3者が入って事実関係を確認した上で話し合いをおこない、オンブズマンまたは第3者によるあっせん・勧告が受けられなければ、オンブズマンまたは第3者は、所管する地域の行政機関に報告して行政機関としての判断を求める。一方で行政から独立した地方の人権救済機関に本人が申し立てできるように支援する人権ソーシャルワーカーを養成・配置する。

C 参照すべき諸外国の制度とその運用実態
 「自立した生活を送る主体は、あくまでも本人であり、本人が「自立した生活」を望んで選択し、自己決定したのであれば、家族などの援助が困難かどうかに関わらず、本人が「自立した生活」を送れるように権利を擁護し、必要なケアを適切に行うことが原則であるという観点が必要。
〔カナダのオンタリオ州でつくられたアドボカシー法(1992年)の場合〕
・ 州政府がアドボカシー委員会を設置して運営についての財政的援助をおこない、オンタリオ州の全域にわたってアドボカシー・サービスを提供している。このアドボカシー・サービスの柱のひとつとしての【権利のアドバイス】に関しては、次のようなサービスが提供されている。
ア) 意思決定に関する力を失う危険にある人々に情報を提供する。
イ) 医療・お金の使い方・生活のしかたに関する数々の権利についての情報を提供する。
ウ) 法律上の権利、そしてその権利が侵された場合のヒアリングや法律扶助について、人々が情報をもっているかを確認する。
エ) 「自分では決定できない」という判断をされたことに対して、本人がそれに異議をとなえたい場合に、必要な法律的援助を受けられるようにする。

以上。


 

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