1.30人権擁護推進審議会「東京公聴会」での意見表明要旨
I.人権救済機関(人権委員会)の独立性・多様性・多元性の確保
1. 「中間取りまとめ」では、人権救済機関には「政府からの一定の独立性が不可欠」であるとされており、また人権救済機関の多様性を確保するために、委員の選任においては「国民の多様な意見が反映される方法」を採用し、「委員の選任について、ジェンダー・バランスにも配慮する必要がある」と述べられている。しかし、人権救済機関の独立性、多様性、多元性を確保するためには、これだけでは不十分である。 2. 人権救済機関の独立性・多様性・多元性の確保するためには、以下の点に留意する必要がある。 (1) 設置法および運用上の自律による独立性 * 人権救済機関は法律によって設置すること (2) 財源の自律を通じた独立性・自律性 * 人権救済機関の財源は、設置法上法定すること (3) 人権救済機関の委員の任命・解任手続を通じた独立性・自律性 * 人権救済機関は複数の委員からなる合議制とし、委員の任命・解任要件や手続は設置法上明確に法定すること (4) 委員構成を通じた独立性・多様性・多元性 * 委員を各種マイノリティからの積極的登用し、委員構成に市民社会の多様性・多元性が反映するようにすること←人権侵害・差別を受けがちなマイノリティから信頼される機関とするため⇒【資料1】・【資料3】 (5) 職員体制の充実を通じた独立性 * 人権救済機関事務局職員は、職務の遂行に必要な専門的識見または経験を持つ弁護士、国・自治体の職員、NGO職員等から採用すること (6)国際機構、他国の人権救済機関(国内人権機関)およびNGOとの協力・協働による独立性の確保 II.人権救済機関(人権委員会)の組織体制
1. 「中間取りまとめ」では、中央に置かれた一つの人権救済機関が全国を包括的に所掌する体制になっており、地方には法務局及び地方法務局の人権擁護部門を改組した地方事務局を置くことになっている。 2. しかし、今後期待される分権化社会においては、このような中央一元的な人権救済機関よりも、地方ごとに救済機関を設置する分権型の組織形態が望ましい。人権侵害や差別事案は、人びとの生活の現場で生じる場合が多い。したがって、人権救済機関は地域の実情やその地域が抱える問題点、地域に根付く慣習などに精通した者によって構成されることが求められる。人権救済機関の設置にあたっては、都道府県や政令市にそれぞれ独立した人権委員会を置き、かつ各々の委員会が独自の事務局を備える必要である。 III.まとめ 人権救済機関の独立性・多様性・多元性を確保し、また地方−中央併存型の組織体制とし、市民から信頼され、気軽に人権相談を受け、救済申立ができる存在とすべきである。 【資料1】 国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則)(抄) 構成と独立・多元性の保障 1.国内人権機関の構成およびその構成員の任命は、選挙によるか否かを問わず、人権の伸長と保護に関わる(市民社会の)社会集団の多元的な代表を確保するために必要なあらゆる保障を与える手続に従って行われるものとする。特に、(国内人権機関の構成およびその構成員の任命は)下記の代表とともに、またはその関与を通じて確立される実効的な協力を可能とする勢力によってなされるものとする。 (a)人権に取り組み人種差別と闘うNGO、労働組合、ならびに弁護士、医師、ジャーナリストおよび著名な科学者のような関連する社会的および職業的組織。2.国内人権機関はその活動を円滑に行えるような基盤、特に財源をもつものとする。この財源の目的は、政府から独立で、その独立性に影響しかねない財政統制の下におかれるとのないよう、国内人権機関が自らの職員と土地家屋を持つことを可能とするものでなければならない。 3.真の独立の前提である国内人権機関構成員の安定した権限を確保するため、構成員は一定の任期を定めた公的な決定(an official act)によって任命されるものとする。この任期は、構成員の多元性が確保される限り、更新可能である。 |
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