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JCA-NET声明: サイバースパイ・サイバー攻撃法案の廃案を改めて訴えます――参議院における審議入りを目前にしてインターネットにおけるコミュニケーションの権利団体として――
(English)
JCA-NETは、インターネットを主要な活動の場する任意団体です。JCA-NETはインターネットサービスを提供することにより、様々な課題に取り組む市民の活動や、平和、経済、社会公正、人権、環境、持続可能性に関わる世界中の運動との連携を目指して活動してます。私たちにとって、こうした活動を支える上での情報発信の自由と、この自由を支える通信の秘密やプライバシーの権利は最重要の権利であり、この権利への侵害は私たちの活動の死活問題でもあります。
政府が「サイバー対処能⼒強化法案及び同整備法案」と呼ぶ法案を私たちは、サイバースパイ・サイバー攻撃法案と呼びます。(以下法案と略記) 法案は、官民連携による通信情報などの収集において民間事業者を政府に協力させる法的な枠組を提起しており、通信事業者は政府にユーザーの通信情報を提供することを半ば義務づけられることになりかねません。強制ではないとか、通信内容は収集しないなど、様々な弁解が聞かれますが、こうした「言い訳」には技術的な裏付けも歯止めもありません。一旦導入されれば、官民連携の情報共有がシステムとして定着し、将来の更なる改悪の基盤になるでしょう。こうなってしまえば、民間事業者は、実質的に政府にユーザーの通信情報を提供することを事実上強制させられることは目にみえています。
JCA-NETは会員のインターネットサービスを民間の市民電子情報網(POEM)に委託しています。POEMは、JCA-NETの運動の趣旨を理解し長年にわたってJCA-NETのインターネットサービスを支えてきた民間の通信事業者です。本法案はユーザーのプライバシーの権利を尊重する良心的な通信事業者にとって大きな負担を強いることになるでしょう。JCA-NETはPOEMが本法案が求めるような通信情報の提供について事実上強制されたり協力を強いられるような事態に陥ることを望んでいません。POEMへの政府の不当な要求があった場合は、JCA-NETは会員ユーザーの政府による権利侵害を黙って見過すことはないでしょう。
一般に、本法案が将来的に目指しているのは、通信事業者などが取得している通信情報を政府がより容易に収集できるようにするものです。従来の通信関連法規では違法とされている行為を本法案は合法化する意図をもっています。そしてユーザーには政府などの情報収集行為は秘匿されたままです。だから私たちは、この法案をサイバースパイ法案と呼ぶのです。たとえ本法案に盛り込まれていなかったり、本法案では対象とされていない通信情報であっても、いったん法案が成立した後に繰り返されるであろう一連の法改正によって、ますます多くの通信情報の収集が合法化され、更なる民間への事実上の強制的な協力措置へと向うでしょう。
また、JCA-NETは進歩的コミュニケーション協会(APC)の日本の加盟団体として、国外の多くのインターネットの権利団体と連携して活動しています。本法案は、国外においてもスパイ行為を行なえるような内容を含んでいます。JCA-NETは日本政府が私たちの仲間に対して情報収集を行ないうるような法案を認めることはできません。
すべての通信事業者の皆さんに訴えます。本法案に反対の声を上げてください。通信事業者は、ユーザーのプライバシーの権利、憲法で保障された通信の秘密の権利を断固として守ることを約束してください。そして、法案への反対の意思を表明してください。本法案のこれまでの審議ではサイバー攻撃の深刻化ばかりが繰り返し主張されていますが、このことを理由にしてユーザーの通信の秘密やプライバシーの権利を後回しにしてよいとは絶対に言えません。
最後に、本法案は、JCA-NETの活動の根幹を大きく揺がすものであり廃案とすべきことを再度強調し、衆議院段階で賛成した野党各党にも再考することを強く求めます。
2025年4月20日 JCA-NET理事会