2011年11月21日

【声 明】携帯電話GPSを利用した被疑者の位置確認情報取得に反対します

盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会
 日本消費者連盟気付
 TEL090-2669-4219                 
ネットワーク反監視プロジェクト  
 TEL070-5553-5495

政府・総務省は、11月2日、改定「個人情報保護に関するガイドライン」を公
布・施行し、通信事業者に協力させて携帯電話のGPS機能の利用により、被疑者
の居場所の確認を行うこととしました。通信事業者は、その携帯を有する被疑
者に位置情報の取得を通知しなければならないとされていますが、通信事業者
による通知とは、携帯への画面表示や振動、音などでGPSによる位置情報の取得
を被疑者に知らせるというものです。

これまで、容疑者の居場所は携帯電話の基地局情報を利用しておこなわれて
きましたが、特定できるのは都市で数百メートル四方(PHSで100メートル)、
地方で数キロの範囲にとどまっていました。携帯電話のGPS機能を使えば、建物
内、道路上の人物をピンポイントで把握できます。この携帯電話のGPSを利用し
た位置情報取得には、二つの点で市民の権利を侵害する重大な問題があります。

一つは、これが立法化されていないということです。そもそも誰がどこにい
るのかという位置情報は人の動きを示す重要な個人情報であり、市民のプライ
バシー権の根幹となる問題です。しかし、この重大な問題が国会で議論されず、
捜査当局の捜査優先という既成事実のうえに、総務省によるガイドラインの
「改正」などで処理されたのです。犯罪捜査であれ、市民の位置情報の取得が
許されるのか否か、許されるとすればどういう条件、手続きのもとで可能なの
か、国会で根本から議論されなくてはなりません。「ガイドラインの改正」な
どという小手先の対応で処理されてはならないはずです。

もう一つの問題は、通信事業者の協力をえるには裁判所の令状が必要とされ
ていますが、これが検証令状であるということです。そもそも「検証」とは事
実発見のために場所、物、人の身体などの状況を調べる処分であり、通信を対
象とするものではありません。しかも、検証令状による捜査は、捜索・差押さ
え令状などと比較して事後報告の規定がなく、不服申し立てができないなど、
人権に係わる問題があります。

1999年に世論の強い反対を押しきって盗聴法(「犯罪捜査のための通信傍受
に関する法律」)が制定されましたが、それ以前、盗聴は裁判所の発付する検
証令状と、捜査当局による違法盗聴によって行われてきました。また、本年制
定されたコンピュータ監視法をめぐる国会での議論で、当時の江田法務大臣が
通信履歴のリアルタイム盗聴を検証令状によって行うことを明言しています。
このように捜査当局は、世論の反対が強い捜査手法や捜査権限の強化を国会で
立法化せず、裁判所の発付する検証令状によって実現してきたのです。検証令
状を利用した捜査当局の捜査手法は厳しく批判されなくてはなりません。

通信技術の発達により、市民のプライバシーは大きく脅かされています。プ
ライバシーをいかに守るか、国民的議論が求められているのです。私たちは、
市民のプライバシーを侵害する、検証令状による位置確認情報の取得に強く反
対します。

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