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JCA-NETは、下記の取り組みに賛同しました。
https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/
2023年5月「G7広島サミットを問う市民のつどい」提案
賛同人(団体)になってください
この取り組みの呼びかけ人、賛同人(団体)等は、ページの最後に記載されています。
G7サミットを広島で開催することの政治的目的は何なのか
78年前に米軍が原爆無差別大量殺戮という由々しい「人道に対する罪」を犯した広島という都市で、来年5月にG7首脳会談(以下、G7サミット)を開く政治的目的は何なのであろうか。議長国となる日本が広島を開催地に選んだ目的は何なのであろうか。
広島は2008年9月に開かれたG8下院議長会合、2016年4月のG7外相会合の開催地にも選ばれ、2016年5月にはオバマ大統領が「慰霊」と称して平和公園を訪れた。ところが、いずれの場合も、原爆無差別大量殺戮に対して最も責任の重い米国政府の代表をはじめ、マンハッタン原爆開発計画に参加した英国、カナダを含む7カ国(あるは8カ国)の代表も、おざなりの慰霊のために平和公園を訪れるだけの「政治的な見世物」に終わっている。
かくして、オバマと安倍が広島の犠牲者の霊を政治的に利用し、米国も日本も、それぞれが戦時中に犯した戦争犯罪の犠牲者に対しての謝罪は一切せずに、結局は広島を日米軍事同盟の強化のために利用したのと同様、来年も再び、広島が欺瞞的で汚い政治目的のために利用され、市民が踊らされるだけという結果になるであろうことは初めから目に見えている。
「唯一の戦争被爆国」を売り物にしながら、「最終的な核廃絶」というごまかしの表現で市民を騙し続け、実際には米国の拡大核抑止力に全面的に依拠し続けている日本政府。その日本政府の岸田首相が自分の選挙区である広島市をG7サミットに選んだのも、見せかけは「反核」という姿勢を欺瞞的に表示するための政治的たくらみ以外の何ものでもない。あるいは、ロシア・中国・朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の「核の脅威」をことさらに強調することで、核抑止力を正当化し、市民の間に無自覚のうちにその正当化を浸透させてしまおうと岸田政権は考えているのかもしれない。
よって、名称だけの「国際平和文化都市」広島で開く会議が発表する公式声明文に、「被爆者の霊」があたかもG7にお墨付きを与えたかのような、欺瞞的な印象を世界に向けて発信することがG7サミットの一番の目的なのである。
G7という7カ国の経済大国グループが設置されたのは、1973年のオイルショックとそれに原因する世界不況に直面して、7カ国が自分たちの経済利益を守り且つ拡大していくための共通の政治経済方針を決定し、協力しあうことを確認するためであった。したがって、その設置以来、全ての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている国連という場での決定を、自分たちにとって都合の悪い場合には拒否または無視する形で、世界の重要な出来事に対して影響力を及ぼし、恣意的に介入するという政策を引き続きとり続けてきた。その結果、実は、G7にこそ地球温暖化などの環境破壊、原油高騰、金融危機、食糧・農業危機、戦争と貧困など、様々な危機を作り出している重大な責任があるにも関わらず、全く問題解決の能力がないこと、このことを私たちは問題にしなければならない。
ところが岸田政権の日本は、安倍政権の政策をほとんどそのまま継承し、ますますG7の決定に、とりわけ軍事面での決定に、全面的に日本を組み込んでいこうという政策を強化しつつある。
G7、NATOとウクライナ侵略戦争の歴史的背景
G7(=米英仏独伊日加+欧州連合)は、歴史的には、カナダ以外の6カ国が20世紀前半までの帝国主義時代における列強国=軍事大国であり、今も米英独仏日の5ヶ国の各国の年間軍事費は世界のトップ10を占めている(日本は9番目)。しかも米英仏3カ国が核兵器保有国で、日本を除いた6カ国がNATO加盟国である。したがってG7とNATOは緊密に重複しており、その両方の主導権を握っているのは、あらためて言うまでもなく米国。つまり、米国の最も重要な国家政策であるパックス・アメリカーナ(覇権主義による世界支配の下での「平和維持」)を支え推進することが、G7とNATOの二大組織の重要な役割の一つである。
1999年以来NATOの軍事活動は、毎回、その行動範囲が、西欧を中心としたNATO加盟国地域をはるかに超えて、中東や東欧地域をはじめ世界各地に広がり、様々な武器開発と購入にも多額の資金が投入されてきた。この行動範囲と活動の広がりは、とりわけ2001年の9/11同時多発テロから始まったブッシュ政権の「対テロ戦争」に、密接に協力する形で進められてきた。
米国とNATOは、東欧への拡大政策に沿って、2014年からはウクライナへの最新式の武器の供与と軍事訓練・合同演習などを通して、NATOの支配下にウクライナ軍を事実上統合させる戦略を着実に推進してきた。この背景には、2014年のウクライナの民衆蜂起による政権交代を受けたプーチン政権のクリミア併合、それに続く東部ドンバス地域の内戦もあった。2022年2月の、ロシアの非道なウクライナへの侵略戦争開始につながった要因として、こうしたロシア、NATOとG7のこれまでの動きを忘れてはならない。
端的に言えば、一方では東欧に向けての米国の挑発的な覇権拡大主義、他方でNATO内に分裂が起きるものと誤信してウクライナの強制的再統合を目論んだ、プーチンのロシア帝国復活の野望。この両者の帝国主義的な対立の根を根本から取り除く必要がある。
この侵略戦争の結果、無数のウクライナの人々のみならず、戦争に駆り出されたロシアの人々も犠牲者となり、戦争の影響で食糧が入手できなくなった数百万人にのぼる数のアフリカやアジアの人々が餓死の危機にさらされている。そのうえ、このまま戦争が長引き戦況がさらに悪化すれば、小型核兵器の使用という最大の危機が起きることも十分ありうる。また原発が繰り返し軍事攻撃目標となっており、いつ原発大事故が起きてもおかしくない。こうした現在の状況を打破するには、戦争当事国のみならずグローバルな反戦・平和運動と外交による交渉での、相互的な妥協による戦争終結によるほかに道はない。
中国・ロシア封じ込めのためのNATOのインド太平洋進出計画と日本
そんな状況の中で、ドイツで行われたG7サミットに続き、6月29〜30日にはスペインのマドリッドでNATO首脳会合が開催された。ここに、NATOの主要パートナー国として、インド太平洋地域の日本、豪州、ニュージーランド、韓国が招かれた。これは、NATOの「新戦略構想」が、インド太平洋地域のいわゆる「自由主義諸国」との軍事協力のもとに、中国、ロシア、朝鮮を欧州側とインド太平洋側の両地域から強力な軍事力で囲い込み、封じ込めるという、文字通りのグローバル化戦略となっていることを示している。しかも、その「戦略地域」のなかには先端技術、サイバー空間、さらには宇宙空間までもが入れられている。
このNATOの「新戦略構想」は、最近実施されたRIMPAC(環太平洋諸国海軍合同演習)にすでに強く反映されている。2年に1回行われる世界最大の海戦演習であるRIMPACは、今回は6月29日から始まり、8月4日まで行われた。日本を含む26カ国から2万5千人を超える兵員と、38隻の戦艦、170の航空機、4隻の潜水艦が参加し、さらに9カ国からの陸上部隊が水陸両用車による上陸演習を行った。
26の参加国の中の、(イタリアを除く)6カ国がG7のメンバーであり、6カ国(米国、英国、フランス、デンマーク、オランダ、カナダ)がNATOメンバー国。5カ国(日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、コロンビア)がNATOのグローバル・パートナーとなっている。すなわちRIMPAC参加国の42パーセントがNATOと緊密に繋がっている。
こうした米国主導のRIMPACの目的は、中国、朝鮮との戦争を想定する米国主導の同盟諸国軍による軍事演習を展開することで、中国、朝鮮さらにはロシアに対して威嚇を行うことであった。この威嚇は、すでに米軍のインド太平洋地域における広範囲で活発な行動に対抗して、同じように敵対的な軍事活動を強力に展開している中国・朝鮮との緊迫状況をさらに悪化させこそすれ、緊張緩和には全く役立たない。
実際、RIMPAC終了3日後の8月7日から4日間にわたり、中国は、ナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問に合わせて、台湾を取り囲む6カ所の海空域で合計66機の戦闘機・爆撃機と14隻の艦艇を使って大規模な軍事演習を行った。さらに8月4日には、台湾の周辺海域に向けて11発の弾道ミサイルを発射するという、実に無謀な示威活動を展開した。かくして、アジア太平洋地域も、状況はむしろ冷戦時代よりも危機的である。
こんな状況の中でNATOは、2014年に日本政府(安倍政権)が、憲法に明らかに違反する集団的自衛権を容認したことを、高く評価している。その集団自衛権の行使との関連で、NATOはとりわけ「ヘリコプター搭載護衛艦」と称する「いずも」が、2020年にステルス多用途戦闘機F-35Bの発着を可能にする「改修」(=事実上の「空母」化)を行ったことも積極的に評価している。かくして、NATO=米軍ならびにその同盟軍との集団的軍事活動への「自衛隊」の積極的な参加が、着々と推進されている。岸田首相の公約の一つである「敵地攻撃能力の向上」も、「自衛の範囲」というメチャクチャな論理の下、このNATOへの統合化のための一戦略として、誰もが違憲と明確に理解していながら欺瞞的に進められている政策である。
このように、岸田内閣は、安倍内閣の憲法のあからさまな空洞化をそのまま受け継ぎ、それをさらに押し進めていると同時に、5月のバイデン米大統領との会談では、防衛予算=軍事予算の大幅増大(=GDP1%をNATO諸国と同じレベルの2%にまで引き上げること)を約束した。これが現実化されれば、日本の軍事予算は約11兆3千億円にもなり、今年度より一挙におよそ5兆1千億円の増額枠を認めることになる。この増額は、皮肉なことには憲法9条をもつ日本が、米中に次ぐ世界第3位の軍事大国になることを確実にする。しかもその金額の大部分が、米国からの高額のさまざまな武器の爆買いに当てられることになる。
現実には、これだけの巨額の予算を急遽準備するためには税収でまかなう他はない。よって、消費税を現在の10%から最低でも12%に引き上げる必要があり、その重い負担が市民一人一人に課せられることになり、すでに日々の生活費高騰に苦しんでいる多くの一般市民、とりわけ母子家庭や高齢者の生活がさらに逼迫することは目に見えている。
7月10日の参議院選挙の惨憺たる結果、以上のような日本の軍事大国化=一般市民のさらなる貧困化、憲法改悪と東アジア地域のさらなる不安定化・軍事衝突勃発の危険性は一挙に高まりつつある。かくして、日本は今や、歴史的に極めて重大な分岐点に立たされている。
G7広島サミット批判に向けて市民の力の結集を!
来年5月に広島で開催が予定されているG7サミットでは、したがって、インド太平洋地域諸国、とりわけG7のメンバー国である日本、さらには韓国やオーストラリアの軍事力を、米軍・NATOの軍事力に統合し、それを中国・ロシア・朝鮮の封じ込めという「新戦略構想」のために極力利用するという米国とNATOによる政策の、いっそうの強化がはかられると考えられる。この「新戦略構想」には、もちろん、核抑止力が重要な戦略として引き続き維持される。
冒頭で見たように、広島でG7サミットが開催されるからといって、核兵器削減に向けて参加国が真剣に議論するとは全く考えられない。こんな状況を黙って見過ごすことは、広島の市民としての、また日本の市民としての責任を、同時に人間としての責任を、ないがしろにすることを意味している。
そこで、私たちはG7サミットが開かれる1週間前の2023年5月13〜14日に、広島市内でG7広島サミットを徹底的に批判する大規模な市民集会を開催することを提案し、実現に向けてこれから活動を展開していくための呼びかけをここに行う。
なお、私たちはG7各国政府に対して、とりわけ次のような要求を行う。
G7を即時解散し、広島でのサミット開催も中止し、あくまでも国連の場での議論と決定に基づいて世界の安定と平和構築を目指すこと。
バイデン大統領は、広島・長崎への原爆無差別大量虐殺と、東京をはじめその他の多くの市町村への焼夷弾無差別爆撃殺傷行為が由々しい「人道に対する罪」であったことを真摯に認め、被害者ならびにその親族に謝罪すべきである。同時に、核抑止力(=核兵器保有)が「平和に対する罪」であることも明確に認め、核兵器を即刻廃棄すべきである。
日本がアジア太平洋で侵略戦争を行いその戦争を長期化させた結果、米国の焼夷弾・原爆無差別大量虐殺を誘引した責任が日本にもあったことを、岸田首相は明確に認めるべきである。その自覚に基づいて、日本、韓国をはじめ今も日本国内外に在住するすべての犠牲者のための医療福祉政策を充実させるべきである。同時に、速やかに核禁止条約に署名し批准すべきである。
岸田首相は、日本軍国主義によるアジア太平洋侵略戦争の加害責任を誠実に認め、戦争中に日本軍や日本政府がアジア太平洋各地で犯した残虐な戦争犯罪行為や人権侵害の多数の被害者ならびにその親族に謝罪すべきである。
岸田内閣は日米軍事同盟を廃棄し、NATOへの加担を止め、沖縄をはじめ日本各地に設置されている米軍基地の即刻撤去を米国政府に要求すべきである。日米の軍事関係を、日米両国市民の真に平和的で文化的な多様な交流の連繋に基づく、人間味溢れる国際関係へと変更すべきである。
G7各国政府は、軍拡でロシア・中国・朝鮮を封じ込めることをやめ、それらの国々との平和的共存を目指して、外交交渉を粘り強くすすめていくべきである。また、そのためには、ロシア軍がウクライナ侵略戦争遂行をただちにやめ、ウクライナ大統領・ゼレンスキーとロシア大統領・プーチンが和平交渉のテーブルに1日も早くつくように、各国首脳も奮励努力しなければならない。
国連憲章では、大小にかかわらず各国が同権であり、国連が「そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている」ことを明確に謳っている。したがって、国連加盟国であるG7各国もこの国連憲章をあくまでも尊重し、「国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない」ことを肝に銘じて行動すべきである。同時に、国連機構がこの国連憲章に真に沿うようなものとなるように改正することに努力すべきである。
G7各国政府は、気候危機を発生させ且つ今もその危機状況をさらに悪化させている、いわゆる「先進工業諸国」としての責任を自覚し、生物多様性を保持、発展させ、環境保護に努め、脱原発と化石燃料極力削減による脱炭素社会実現に向けて懸命の努力をしなければならない。また、気候変動による巨大な災害に見舞われているパキスタンやアフリカ諸国をはじめとするグローバルサウス諸国の債務を無条件に帳消しすること。それが地球上の人類と他のあらゆる生物・植物に対する私たちの重大な責任であることを、明瞭に認識する必要がある。
2022年9月25日
「G7広島サミットを問う市民のつどい」実行委員会