石川源嗣著『労働組合で社会を変える』を読んで 感想・書評・推薦 *筆者の了解を得て掲載しています 肩書きは掲載当時のものです |
仲村実 (管理職ユニオン・関西 書記長) |
「労働運動で社会を変える」という書物について この書物は、「本書は私の属する全国一般労働組合東京東部労働組合の活動についての 報告と総括である」と“はじめに”で述べられています。内容的には、東京東部労組の活動を通しての石川さんの実践報告と組織活動の方向性と今後の視点といえます。 石川さんは1942年生まれだから73才、私は67才、それぞれの人生をかけて労働運動を突っ走ってきた世代です。何を次世代に伝えていくかという世代です。 東京東部労組初代委員長の足立実さんとは、私も親しくお付き合いさせていただきました。 「敢然と闘い敢然と勝利する」という東部労組の精神が、足立大先輩、石川さんらの世代、そして次世代にこれまた引き継がれています。この10年間程の地域合同労組、地域ユニオン運動では、注目され発展してきた労働組合の一つだと思っています。すでに多くの方々が、実践の書として評価されています。私も基本的には同じです。 これまでの階級的労働運動、とりわけ地域合同労組や総評の全国一般運動などで強調された「職場活動と職場組織」、そのことを石川さんは“職場闘争”という形で意義と重要性として強調されています。 第2部“労働組合と職場闘争”の“第2章 職場闘争”の石川さんの主張に対して、私は少し異論があります。石川さんが、兵頭淳史氏から引用している「特殊な専門的職種」は、全日本建設運輸連帯労組近畿地方本部関西地区生コン支部(関生支部)のこと、大阪を中心とする近畿地方の生コン業界を指していると思います。この生コン業界での闘い、その関連としての圧送業界にも拡大している運動が「特殊」とされているところです。地域と業種・職種、産別への組織方針です。関西生コン型運動の評価と、それを学び、他の業種・職種、産別にどう普遍化の努力をするかという問題意識がないというのが残念に思うところです。
第 1 部の“力の思想” 地域合同労組、地域ユニオンの発展の可能性、展望・期待が様々な方から語られてずいぶん経ちました。「まだ脆弱の域を脱していない」と、「『コミュニティ・ユニオン』の優位性を一般論として語る時代は終わっている」との石川さんの現状認識は同感です。 その打開策として、東部労組の大量相談―大量組織化についての実践は優れています。 「憲法があるから団結権が保障されているわけではない」も同感です。私は「活用」論と
3章の「中小零細・非正規労働者と地域ユニオン」では、石川さんは厚労省統計を紹介し、「日本の労働者階級の下層を形成する中小零細企業と非正規雇用で働く労働者を合わせると4400万人(重複部分を含む)ほどで、日本の労働者全体の8割を超える」として、この層が地域合同労組、地域ユニオンの組織化のおもな対象としています。私も、この点は同感です。 また全国の各種のナショナルセンター別の全国一般、地域ユニオンの組織人数をあげ、これらの総数が10万人前後としています。そして労働運動再生の戦略的課題として「大企業職場が資本に完全制圧されている以上、中小企業と非正規労働者が支配階級の弱い環を形成せざるを得ない。しばらくはここを主戦場として闘い、大企業に攻め上がるしかない」とし、「大量の中小零細・非正規労働者を労働組合に向かい入れ、全国に強大な地域合同労組、地域ユニオンを作り上げること」としています。これも同感であり、大賛成です。 1981年1月、総評の組織・理論面に関わっていた清水慎三氏は、労働情報誌で『「日本の労働戦線の組織的空白地帯としての中小零細企業労働者群である」との認識を押さえて、「管理社会に対抗する人間的自立」に価値を置きつつ、労働者の自己主張を中心に連帯の輪を広げる「自立個人加盟労組」の創設』を提起しました。いわゆるゼネラルユニオン構想です。具体的な組織目標として、第2次、第3次産業で大卒高卒の35歳以下に照準を置き、戦前の個人加盟組合員の42万人を目標にと書かれていました。今から30年以上前のことです。 その後、総評が解散し連合が結成されました。経緯はともあれ、ゼネラルユニオンとして地域合同労組、地域ユニオンの組織化の提起、取り組みは戦後労働運動の一貫した課題としてあったと、私は思っています。 私はこの事の実践として、新しい要素として関西生コン型運動を重要な柱にすえるべきだと考え、小さな取り組みですが、管理職ユニオン・関西の中で職種グループの組織化を始めています。関生支部等が呼びかけた“労働運動の再生をめざす懇談会”の業種・職種交流会に積極的に参加しています。 関生型運動は、反独占資本闘争として中小零細の生コン企業を協同組合へ組織し、労働組合が主導権をもつ組織化戦略です。中小企業経営者に対する業界協同組合への組織化と労働組合の業界・産別への組織化・共闘です。業界中小企業経営者との労働者への収奪に対する一面闘争、独占からの収奪に対抗する一面共闘戦略です。
“5 私たちの教訓”、“第4章 労働相談と労働組合”は、東部労組の実践報告が語られています。読者の皆さんも労働現場での活動に大いに活かせてもらいたいと思います。 石川さんは、 労働相談で現れる問題が「労働者のもっとも差し迫った、精鋭な反映であり、時代の最先端の労働問題が凝縮して出ているといえる。労働相談を通して日本の労働者の現状を知る意義は大きい」といいます。ぜひ、 読みこなして応用してもらいたいと思います。
第2部“労働組合と職場闘争” “第1章 なぜ労働組合か”では、組合作りの経験が書かれています。 “第2章 職場闘争”、ここは石川さんに対して少し異論のあるところです。 職場で一人から複数へ、少数から多数への活動は当然必要であり、過去から行われてきたことであり、引き続き現場での闘争は活性化しないといけないと思います。 私も個人加盟労組が、解決型労働組合で終ってはならないと考えて行動していますし、複数化のオルグ活動や職場闘争を軽視するつもりもありません。石川さん同様、職場闘争は重要だと思っています。 “2 職場闘争意義”で否定的に書かれている箇所が、石川さんと私が大きく異なる点です。石川さんは、兵頭淳史氏の「組合の組織原理と労働運動再生への戦略的視点」から引用して、「この兵頭の認識と主張は、私たちの実感と合致している」(80ページ)としています。この部分は、私の異論の重要な部分ですので、以下、石川さんの引用部分を示します。本書の78~82ページです。 『一部の研究者などには、そうした基盤として「職能」や「職種」に期待する見解もあるようです。しかし、今日の日本の産業社会において、「職能」や「職種」が、労働者の連帯の土台となる共通のアイデンティティを提供し、恒常的に経営者と対峙し交渉する単位を形成する条件は、労働供給を労働者集団自身がコントロールしうる可能性のあるようなごく限られた特殊な専門的職種を除けば、残念ながら存在しません。したがって、最終的にめざすべき労働組合組織のあり方が、個人個人が産業レベルの組織に加盟する産業別単一組織であるとしても、労働組合運動の再生・強化へむけてのプロセスにおいて、職場(中小企業においては、しばしばそれは企業と同義になります)に基礎をおく組織化・組織強化を迂回する道はありません。「企業別労組は好ましくない組織原理である」という命題から、企業や職場を単位とする組合組織や交渉ユニットは存在すべきではなく、これからの労働組合の基礎組織は地域や職種にのみもとづく組織であるべきだという結論を導く考え方が存在しますが、このような考え方は現実から遊離したものであることを認識しておくべきでしょう。』 石川さんが、兵頭氏から引用している「特殊な専門的職種」は、先にも述べました関西生コン支部のことです。大阪を中心とする近畿地方の生コン業界を指していると思います。この生コン業界とその関連としての圧送業界にもこの運動が拡大しています。全港湾の大阪支部も中央レベルで雇用・労働条件で産別協定を業界と結んでいます。こうした関西生コン支部や、全港湾の実績・成果を拡大し普遍化する組織戦略こそ必要なのだと、私は思っています。 関西生コン支部 を少し紹介しておきます。 組織の特質は、純粋な個人加盟ユニオンであることと、組合の決定権の所在にあります。関西生コン支部は「決定権をもつ統一的指導機関」であるとしています。欧米の労働組合もまた末端の組織ではなく、これらの上部の組織に執行権・財政権・人事権が集中しています。生コン業界全体の経営者を相手にして、強力な産業別統一闘争を展開していくことができるその組織的保障が、企業単位の分散性を排する支部の統一的指導性なのです。 第二は、関西生コン支部の運動についてです。ヨーロッパ型ユニオンの運動と同じように、企業横断的な労働条件を設定し、到達闘争から基準を業界の各企業がそろえることを強制させていこうとすることです。そのために集団交渉を行い、ストライキを展開してきました。職種別賃金という基準を設定し、これに各企業が合わせるようにさせるために集団交渉方式を追求してきたのです。 第三は、事業協同組合と労働組合との関係についてです。重層的下請構造や背景資本による個別企業の支配などによって、大企業の中小企業に対する収奪構造が存在します。また新規参入などによって過当競争が引き起こされ、そのなかで中小企業の経営基盤は極めて脆弱です。このような経営環境のもとで中小企業労働者の大幅な労働条件の向上をはかるためにはどのような方法があるのかという問題追求の結果なのです。 大企業に挟撃される形の生コン業界が生き残るには、中小企業が結束する以外にないのです。その方法が中小企業協同組合です。関西の生コン企業は、協同組合をつくって「共同受注」と「共同販売」を追求してきました。ゼネコンからの生コンの受注は協同組合が共同して受けます。そして、協同組合が販売価格を設定して、ゼネコンに「共同販売」をします。これは独占禁止法に違反しません。 関西生コン支部は経営者に生コンの安値販売を阻止するには、協同組合という方式によって「企業間競争の規制」を実現する以外にはないことを闘争と説得によって理解させてきました。一面闘争・一面共闘です。この経営基盤の安定によって賃上げの原資を確保することができます。その闘い・運動の結果が、今日の関西地方における生コン労働者の労働条件と社会的地位の向上をもたらしたのです。
“第3部 労働組合を考える”では、金属機械労組港合同田中機械支部大和田委員長のことが取り上げられています。 いまは亡き大和田幸治さん著の「企業の塀をこえて」(2001年12月発行)の中で、地域拠点活動の基本を述べています。『われわれのめざす地域合同労組と「地域ユニオン」と呼ばれている個人加盟の地域労組との違いは、拠点をつくるという方針をもっているかどうかというところにあります。たしかに地域ユニオンは、解雇だとか権利侵害とかに直面した労働者を救済するという活動をしています。しかし、それだけであれば、単なる駆け込み寺です。有効な戦略・戦術を立てて大きな敵に立ち向かったり、敵の攻撃の根源に向けて闘っていくことはできません。また、労働者個人の相談を受けていくと組織は何十人、何百人となっていくけれども、人数が増えれば増えるほど、オルグが一人のままだと組織を維持し、有効な闘いを組んでいくことができないという矛盾を抱えます』、『地域合同労組を「駆け込み寺」にとどめるのではなく、《闘いの砦》にするということです。一般的に労働組合の強さ・弱さは、主体的立場を堅持して活動するオルグの質と数、労働者の連帯感とその意識性、財政・統率力と闘争的結集力で判断できるといえます』とあります。 石川さんと同様、駆け込み寺、解決型ユニオンにとどまらず、組織するユニオンとして大いに学ばなければとされているし、私も同感です。 “第2章 御用組合と闘う”は、石川さんの豊富な体験には及びませんが、私も体験があります。大いに参考にすべきだと思います。
“第4部 労働組合で社会を変える“ ここは、対談形式です。石川さんの東部労組加盟から専従書記長に、東部労組を一躍全国に有名にした大久保製壜闘争、労働相談活動が語られています。社会変革における労働組合運動の戦略の問には、組織内の労働学校でマルクス、レーニンの活用、ストライキ闘争、ロシア革命や中国革命における闘争形態や組織形態から学ぶ必要性が示されていますが、具体的なカリキュラムは残念ながらよくわかりません。 今後の方向としては、「連合内部の良心的な仲間が力を持ち、闘いを起こし、労働者の利益を守ることのできる労働組合に変えることを心から願っています」と希望を語り、「支配階級の弱い環を形成している中小企業と非正規労働者の領域が主戦場」とされています。 労働運動の危機打開のカギと東部労組の経験から、「労働者の認識」「労働者の現状に合致した運動と組織」「労働相談活動」「職場闘争」の4つについて語られています。石川さんが全国に講演に引っ張りだこのエキスです。 労働運動の弱体、停滞局面にあって、中小零細企業での労働運動、非正規労働者の組織化に活かし学ぶ点が多く語られています。とにかく読んで活用してください。
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水谷 研次(team rodojoho) |
2015/7/1 労働情報(2014.12.1号) 書評 『労働組合で社会を変える』 東京東部労組の石川源嗣さん(現・副委員長)が『労働組合で社会を変える』を出版した。 大久保製びん闘争をはじめ、下町地区労時代からの40年に及び活動を共にしてきた同業者」として、そのタフさに敬服する。70歳を越えた今なお現役で労働運動の第一線を担う信念が、この本には綴られている。前著の『ひとのために生きよう!団結の道』はマニユアル本に近かったが、今回は「労働組合の魂」を訴えている。 冒頭から三菱長崎造船労組の解散を紹介し、労働運動の危機は「構造的」であり、「弥縫(びほう)策では再生できない」と指摘する。そして「現場の労働者に通用する労働組合運動を職場にどう作っていくのか」、具体的な事例を次々にあげている。労働組合の基本は「助け合い」であり、「労働相談に誠実に対応すること」から「職場の仲間とのふれあい」「素朴な正義感の訴えかけ」「いかに仲間の不満を引き出せるか」など、現実にあった職場事例が次々に登場する。 「一人組合員の活動方法」や「ゼンセンの組織介入といかに対決するか」など、内情暴露に近い表現も多々あり、石川さんの豊富な体験が凝縮されていると同時に、個人史も語られる面白さがある。個人的には、共に担った失敗談も語って欲しかったが(苦笑)、前向きに受け止めたい。 「労働組合運動の危機」が叫ばれて久しいが、未だその突破策は見出せてはいない。しかし、この書を読めば「労働組合の可能性」に確信を持てる。一人ではか弱い労働者であっても、団結の力は、不条理を打ち砕く。こんな社会を変えられる実践の必読書だ。そして、石川さんは常に現場の虐げられても立ち上がる労働者と共にいる。
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弁護士 指宿昭一 |
2015/6/28 書評 石川源嗣著(世界書院)『労働組合で社会を変える』 弁護士 指宿昭一(いぶすきしょういち) 「労働組合で社会を変える」というタイトルからして、今の時勢に挑戦的な姿勢を感じる。ある意味、古典的で原則的な、このタイトルがとても新鮮に感じられるのは、なぜだろうか。現代の労働運動は低調で、力がなく、役に立たず、古臭いというイメージに対して、社会を変える力のある労働運動のあり方を正面から提起しているからだろうと思う。「労働運動は全ての社会運動の基礎」と断言し、強い確信を持って日本労働運動の再生に実践的に取り組む著者の執念が伝わってくるタイトルである。 著者の石川源嗣氏は全労協全国一般東京東部労組副委員長。1980年以降、地域合同労組である東部労組の専従として闘ってきた第一線の指導者であり活動家である。 本書には、日本労働運動再生の戦略と戦術が具体的に示されている。数多くの労働相談から労働組合結成を進め、また、労働者の要求に基づく職場闘争から組合員の拡大と多数派形成を目指す。このような闘いによって、地域合同労組で中小企業労働者と非正規労働者の組織化を進めることが、社会を変えるための労働運動再生の道であるという提起に、私は賛同する。この提起は東部労組の実践に支えられているから力強く、イメージがしやすい。 地域合同労組やコミュニティユニオンの活動が労働運動再生の力として期待されてから久しい。しかし、多くの合同労組等の活動は、多様な労働者の不満や要求につき、労働相談を通じて組織化し、事件化し、社会問題化することには成功しつつも、そこから組合員のいる職場に労働組合組織を打ち立て、職場闘争を通じて拡大していくということには成功しているとはいえないだろう。著者は、「労働組合の再生の要は、『労働相談から組織化へ』活動と職場闘争の結合にあると思う。」と述べているが(78頁)、私もまさにそこが課題であると思う。本書は、その課題の克服のため、豊富な実践例を通じた方法論の提起もされている。 そして、何よりも、本書からは、労働運動再生に向けた著者の強い「執念」が伝わってくる。労働運動の現状を嘆くのではなく、確信を持って前進させていこうという「執念」である。私も、本書に学び、労働弁護士として、「執念」を持って労働運動再生に取り組まなければならないと思う。そして、労働運動再生を願う多くの弁護士に、特に、労働運動の経験のない若手弁護士に本書を読んで、いただきたい。 季刊・労働者の権利(VoI.309/2015 .4) ------------------------------ 東京東部労組副委員長の石川源嗣さんの「労働組合で社会を変える」を読んだ。 日本労働運動再生の戦略が見えてくる本。 数多くの労働相談から労働組合結成を進め、また、労働者の要求に基づく職場闘争から組合員の拡大と多数派形成を目指す。 原則的でシンプルな戦略の提起だと思う。 我々労働弁護士も、こういう労働組合の闘いに呼応できる活動を築かなければと強く思った。 ――― ――― ――― 東京東部労組副委員長の石川源嗣さんの新刊「労働組合で社会を変える」(世界書院)を読んだ。 日本労働運動再生の戦略が具体的に示されている。数多くの労働相談から労働組合結成を進め、また、労働者の要求に基づく職場闘争から組合員の拡大と多数 派形成を目指す。 このような闘いによって、合同労組で中小企業労働者と非正規労働者の組織化を進めることが、社会を変えるための労働運動再生の道であると いう提起には賛成である。また、この提起は東部労組の実践に支えられているから力強く、イメージがしやすい。 この書籍からは、石川さんの労働運動再生の強い「執念」を感じる。 私も、労働弁護士として、「執念」を持って労働運動再生に取り組まなければならないと強く思った。 |
旭 凡太郎(プロレタリア通信) |
2015/3/31 このたび全国一般東京東部労組副委員長である石川源嗣氏が著書「労働組合で社会を変える」を「情況出版」より出版された。まことに切れ味よい労働組合組織ー活動論であり是非とも一読をすすめたい。 東京東部労組は最近ではデイベンロイでの工場閉鎖反対・雇用確保の闘い、阪急トラベルサポートの搭乗業務にみなし労働制の適用不可・不当解雇撤回闘争、東京メトロ駅売店の非正規女性の組合のストライキ決起・非正規労働者の六五才定年制適用反対と継続雇用実現(労働契約法20条にもとずく差別批判の裁判闘争も起こした)と続いている。また学習塾市進での不当な五一才解雇反対スト等が続いている。そして自主生産(高砂産業)、非正規労働者の正規化や、ワタミ裁判、ゼンセン同盟との対立等先端の多様な闘争・争議を組織している。もちろん70年代来の障害者差別・不当解雇をめぐる大久保製壜闘争の長期争議・解決を経てきている。また東部労組は大量の労働相談活動を特色としている。労働相談は年間八〇〇〇件をこえ、相談の65%程度が正社員(いわゆるブラック企業、周辺社員か)である。 こうした活動を基礎に年五つくらい新たな支部結成している。 労働相談はリーマンショック以降それまでの不動の一位だった「賃金」をおさえて解雇が一位になった、「いじめ、嫌がらせ」とともに三大相談を形成しているという。なかでも時代を反映した典型例として「辞めたいのに辞めさせてくれない」という相談の増加があるという(二〇〇六年から) こうしたことから労働組合と「力の思想」との一体性ということが強調される。 それを前提とした組合結成ー申し入れ行動・団体交渉ー現場・職場の役割の強調ー資本と労働の非和解性と力関係(現場における資本・労働の関係から社会的強制力)によって労働条件と社会を変える、といった活動が実例をともないつつ展開されている。 それらは、とりわけ新自由主義的労働支配のもとでの石川氏や東部労組の活動にもとずく、当書でももっとも迫力のあるところである。 すなわち「力の思想」、「闘いと組織による変革の思想の復権」「資本は社会によって強制されなければ労働者の健康と寿命に対し、何らの考慮も払わない」(P18)と。「戦後労働運動の労使の攻防戦のなかで…大企業労組はほぼ完全に会社側に制圧された」 ( p19) 労働運動再生のかぎは「現場にこだわること」、日本の労働者は「8割が中小、非正規労働」、「賃労働と資本の関係が続く限り労働者にたいする搾取と抑圧が続くわけで、…資本家にたいする労働者の反抗もずっと続く」(P20~21)と。 (それと同時に、「大きな」政治の分野で負けたら…労働条件や権利は吹っ飛ぶ、だから政治闘争に参加…」(p216)といった観点がふまえられている) もちろんこの「力の思想」は力学的なものではなく、「労働者が力の主体である」「レーニンは経済闘争や自然発生的闘争…を重視し源泉とした」「すべての歴史は階級間の力関係で決まる」(P28)といったように労働者階級ということと同義なわけである。 また「現場にこだわること」とは「労働者が立ち上がるのは賃上げだけではない」「職場の中の圧迫」「もう少し自由な空気」「職場でも社会でも正規の構成員としての処遇を求めてきた」(p99)ということを指していることにも留意したい。すなわち「現場」とは労働力の購入を前提にしての、資本の指揮・命令・独裁の貫徹の場であること。労働者の要求はそこにおける自由や、構成員たる権利を意味する事、共同的で平等な自己決定主体たることの要求であることを意味する。 そしてこの「職場闘争」といった場合、旧来的には大企業・正規労働者の闘争を基本としてきた。今日的には非正規労働(問題)を不可欠・中心的なものとしている。(東部労組でも非正規労働者の正社員化を勝ち取った例の報告がある。2014・9「東部労働者」) それは大企業職場・労働運動の敗北・資本による制圧といったことの結果なわけである。 同時に今後、企業内正規~非正規から、下請けをふくめた連関、さらには諸職業・階層関係という問題をも労働運動が課題としてゆかざるをえないということを意味する。 それは、同時に当書で展開されている幾つかの論点、といったこととも関連する。
当書ではいくつかの論(争)点が設定されている。 ・「労働組合運動はすべての社会運動の基礎をなす」(p215) ・大企業職場が資本に完全に制圧されている以上、中小企業と非正規労働者が支配階級の弱い環を構成せざるをえない」「しばらくはここを主戦場として闘い、大企業に攻め上がる」(p49) ・「今まで否定的にしか言われてこなかった「企業内労組」そして職場闘争の新しいとらえかえしの必要」(p250) ・「私たちもこの『富国』つまり生産力至上主義に反対する闘いに腰の入った取り組みができなかった」(3・11以降)「エネルギー政策の転換にとどまらない、社会と運動のあり方、生活の見直しという価値観・思想の転換が迫られている」(P183)……。 まずもってこの「生産力至上主義」と「大企業職場の資本による制圧」といったことが現状をとらえる場合の前提となる。 それは(戦後革命、生産管理闘争を経ての)戦後の未曾有の長期にわたる(一九五〇~七〇年代)生産力発展、自動車・電機等大量生産・大量消費ということであった。そこでの自動機械化と、管理や科学技術の主導権化が進み、資本の指揮命令の強化とそのもとでの階層制・労働の単純化・差別構造が進み、こうした「資本の生産性向上こそ賃上げ・生活向上」といった価値観を生みだしていった。 資本が生産管理闘争をふくむ戦後労働運動と対決し、弱体化した経営権を回復し労働者を支配するにあたって武器としたのはこうした「生産性向上」至上といった路線であった。労働者の職場規制・職場闘争にたいしては「生産阻害者」「会社倒産運動」といった宣伝をし、攻撃してきたわけである。こうしたなか輸出大資本のもとでの労働運動は一九五〇年代をとうして後退してきたわけである。たとえば戦後輸出巨大産業に発展する初期の自動車産業のもとで、日産分会は、「労働者の完全雇用と生活維持をめざし、人事に関する同意約款をふくむ…労働協約をかちとり」「経営の民主化」「生産を基盤とした職場活動」という方針だった。(「労働組合の職場規制」) これにたいし反対派はこうした分会の方向は「企業をして首切り、工場閉鎖の危機においこんだ」「われわれは生産性の向上に積極的に協力する」と批判し、一九五三年分会は少数派に転落、反対派は全一支配するにいたる。こうした攻防はこの時期民間巨大資本を覆った。 日本では職場規制型労働運動に対する資本の攻勢は自動車、鉄鋼…さらには炭労・三井三池等民間基幹産業を覆った。 こうした生産性向上への労働者の従属・資本の支配はこの段階までは(一九八〇年代)終身雇用、年功賃金ー生産性インデックス賃金の枠を維持できたし、QC運動等を組織できた。又官公労等職場規制・中小等総評労働運動もまだ残っていて資本は制約されていた。 こうしたなか一九八〇年代バブル期、最後の職場規制型労働運動(国労)を民営化のもと解体におい込み、総評解散へと追い込み労働支配・資本の専制は歯止めを失い自己運動をはじめたのである。同時に戦後資本主義の未曾有の発展・高度成長が終焉し、過剰生産と飽和と国際競争激化のもとで、契約型労働運動(日本では職場規制型労働運動)も破棄・攻撃されるにいたった。規制緩和・解雇自由が進み、非正規労働が支配的となった。 こうしたなかから、一つには戦後一時代を風靡した、石川氏のいう「生産力至上主義」といった価値観の瓦解がはじまった。(3・11で加速した) (それにかわって「労働者の生活」、それも「力の思想」の源泉たる「主体としての労働者階級」ということである。賃金・時間の保障はもちろん、社会、生活、労働全般にわたって判断し、知識し、共同決定してゆくということを「至上」とするということである) そしてバブル期にいたる大企業職場の資本による制圧、バブル崩壊以降加速した中小・非正規労働者への矛盾の転嫁、労働支配の劣化・安定的労働支配の瓦解のなかで、石川氏のいう「中小・非正規労働が資本主義の弱い環」「運動の閉鎖情況を打破する突破口として中小企業・非正規労働者を対象とした労働組合運動(p249)」といった考えが浮上してきた。実際一九八〇年代からユニオン運動、反失業の運動が独自の位置を占め始めた。こうした中例えば埼京ユニオン嘉山将人氏は(国労の一月の大会のあと)「いよいよ俺たちの出番だという感じがしました。」「労働者が中心になって中小零細の経営者とも徒党を組んで…」(「労働情報」2001・5・1)とか、「非正規労働者や中小の労働者、「マジョリテイ(多数派)であるにかかわらず、マイノリテイ(少数派)である私たちが前に出てという新しい時代」(全統一・鳥井一平氏 同2001・2・1)等、時代の転換は意識されていった。 こうしたなかそれでは「大企業」「官公」の労働者階級(組合)の現状は、といった場合にも、非正規労働の組織化を進めているかが大きな基準となる。そうした意味では自治労「官製ワーキンプア研究会」や荒川、港区での取り組みは重要といえる。また国労では高崎地本(地域ユニオン、交通ユニオン)や、千葉地本があるという。(社会評論、2013・秋、 国鉄新聞) 水道も昨年非正規労働組織化を決定・始めたという。 (輸出大企業下でも、非正規労働拡大にとどまらず、電機等一四万人リストラ、評価主義、残業代ゼロ、過労死、追い出し部屋等日本的経営・労働支配の劣化、瓦解と資本の独裁は進行しているが) われわれは二〇〇五年連合選挙でのユニオン系の鴨桃代さんの善戦(323:107)を知っており、中小・非正規労働者の現実を表現し、代表する運動が全面・主軸化する時代を予感する。こうした意味で労働組合は「あらゆる社会運動の基礎」といえる。
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松永哲次(東京都学校事務職員労働組合(東学)副委員長) |
2015/2/3 石川源嗣さんの「労働組合で社会を変える」読んで、元気をもらいました。 先日、石川さんの著書「労働組合で社会を変える」を読む機会があり、この本は我々東学 組合員の高齢化・退職による組合員の減少と場合によっては職場組合の消滅が急激に進行 御多分に漏れず、我々東学も、組合員の激減と高年齢化が進行しています。団塊の世代の なお、厳しい情勢だけではなく、一筋の明るい光も見えてきています。東京都の小中学校 東京都学校事務職員労働組合(東学)副委員長・松永哲次
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横田 厚 (ユニオンくしろ・元国労釧路闘争団) |
2015/ 1/ 31 読了後、「実践のための理論書」であるとの第一印象でした。 必ず読後感をつけています。 「本書は東部労組の活動についての報告と総括である」といわれるように、ここに身を置き長きにわたりその第一線で、闘争の渦中に立ち指導してきた半生の手記でもありましょう。 私自身を振り返り、ユニオン運動を省みるとき「大企業職場が資本に完全に制圧されている以上、中小企業と非正規労働者が支配階級の弱い環を形成せざるを得ない。 しばらくはここを主戦場として闘い、大企業に攻め上がるほかない。いま大量の中小零細・非正規労働者を労働組合に迎え入れ、全国に強大な地域合同労組、地域ユニオンを作り上げることは、労働組合再生の課題である」と著者は力を込めて訴えています。 「国鉄分割・民営化反対」「解雇撤回・JR復帰」の闘いを経験してきた者として、当時、労使協調にからめ捕られていた大手単産は、「国労のようになるな」と支援を拒んできました。 もちろん大手単産の良心的組合員の支援のあったことは周知のとおりです。 しかし、東京都知事選、原発、消費税などの対応を熟考すれば、労使協調などと言うのははきれいごとで、まさに労使隷属の現状でしょう。 また著者は「労働相談で現れる問題が、労働者のもっとも差し迫った、時代の最先端の矛盾の精鋭な反映であることはまちがいがない。労働相談を通して日本の労働者の問題を考えるのは現実的であり、有効な方向であると思う」といいます。 その量、信頼性、対処方などユニオン運動にとっての具体的なテーゼとして在る、といっても過言ではありません。 最後に「労働組合運動の戦略的意義の中身。 労働組合運動はすべての社会運動の基礎をなす。労働組合の運動は、労使 ( 資 ) の矛盾の恒常的な現れ、資本主義のもとではいつでも必要な、どのような時にもなくてはならない闘いである。東部労組のスローガンに、『小さく勝って、大きく負ける』というのがある。 政治、戦争、憲法…負けたら、職場でかちとった権利や労働条件はいっぺんに吹っ飛んでしまう。労使 ( 資 ) の矛盾帯、職場で闘争力を強める」と労働者の政治意識の高揚を求めています。労働運動は資本との闘いであり、その戦闘力、政治思想の確立は職場の闘いにある、と高唱しています。同感と言うほかありません。 締めくくりに「東部労組のスローガン『会議は命』」。実践者らしい著者の一言。 あらためて、読後感ノートを再読して、ふっと、吉村昭の「天狗争乱」が浮かびました。 国労闘争団で、時々オルグの席などで、天狗党の話をしたことがあります。もちろん、尊王攘夷を支持するのではなく、千人といわれる数と、鉄の軍律。闘争団員もちょうど千人でした。青かったのかも知りませんが、懐かしく思います。 石川さんの「労働組合で社会を変える」にも通底する話かと、妙に納得しました。
ユニオンくしろ・元国労釧路闘争団 横田 厚 2015 年 1 月 23 日 猛吹雪の日
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佐々木有美 (ビデオプレス) |
石川源嗣さま こんにちは。感想が遅くなってすみません。 東部労組とのお付き合いは、弥生運送の組合作りを取材してからなので、もう 15 、 6 年になります。 組合運動にはまったく経験がなく、学生時代に少しマルクス主義の文献を読んだのと、国鉄闘争にかかわったくらいがわたしの運動経験です。 今、凄まじいファッショ化、戦争国家化の中で、ともすれば無力感にさいなまれる日々が続いています。 労働相談を通した地道な職場組合運動作りに邁進する東部労組、そのぶれない原則主義に、勇気づけられる思いです。 まとまらない感想ですみません。これからもどうぞよろしくお願いします。 2015 年 1 月 17 日 佐々木有美 |
森崎 巌(全労働省労働組合) |
2015/01/05 石川 源嗣 様
日頃から、たいへんお世話になっております。 過日は、『労働組合で社会を変える』をお送りいただき、ありがとうございます。たいへん興味深く読ませていただきました。 とくに組織化のとりくみと要求前進のとりくみを一体で進めることの重要性は、今日の労働運動の中で一層強調されるべきことではないかと感じます。 また、数多くの「実践」から導かれる多くの教訓は、全労働省労働組合という「企業内組合」の経験にてらしても頷ける部分が多く、今後に取り組みに活かしていきたいと感じています。 近年の組織化のとりくみを通じて感じるのは、若者だけに止まらない国民の意識の大きな変化です。拙著『現代人の意識と労働組合の未来』(2006年)で当時指摘した「自己中心、現実中心」という意識傾向だけでなく、価値相対主義の一層の広がりも「選択しない傾向」を助長しているに感じます。もとより、教育又は学習によって克服できるとの指摘もあろうかと思いますが、組織化の取り組みもまた「現実」を出発点とした思考と戦略が必要ではないかと思っています。 御礼がたいへん遅くなってしまったことをお詫びするとともに、多くの示唆をいただいたことに感謝申し上げます。 今後とも、よろしくお願いします。 森崎 巌(全労働省労働組合)
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但馬けいこ(LANN編集長) |
2015/01/04 石川さま 気ぜわしい年末には読みきれなかった「労働組合で社会を変える」を、やっと読むことができました。 この2年ほど、労働組合書記のような多忙な日々を送っているので、考えさせられることがとても大きい書籍でした。 ケアワーカーズユニオンは、30代が中心です。働き盛り・家族持ちが多く、また小さい組合のため、専従を養うほどの財力もないため、自営業で比較的時間に融通のきく私が、書記長仕事を引き受けています。どうすれば、世の中を変えていけるような組合つくりをしていけるのか、走り回っている私も当然ですが、職場に根を張って多数派になろうと頑張っている彼女・彼らたちにも、試行錯誤の課題です。 職場の多数派への道に、岩盤のように立ちふさがるのは、経営の横暴だけでなく、職場の労働者たちの様々な意識です。 分会活動で苦労して、少し立ち止まっている組合活動家たちに、ぜひとも読ませてやりたいと思います。 感想を、ということだったので、次の時代には、この書籍はどう語られるのだろうか、など考えながら読みました。 1970年代には、資本主義は終わりの始まりに入っていく。 世の中を変えていこうとした時に、社会あるいは所有の根底をつくりあげている労働の場での活動が重要、というのは極めて先見的です。 そして、これらの言葉は、組合経験の浅い、または組合経験のない若い人々に、どう届くのだろうか。 職場、労働の場での資本独裁と専横、その恐さを労働者は肌感覚で知っていて、立ち向かってどうなるの、どうにもならんやん、という諦らめや恐怖、依存、おもねり、無関心…が蔓延する中で、どう「労働組合で社会を変える」という言葉を届かせていくのか。 春には職場の人権で講演をなさるとのこと。団体交渉などが入らなければいいのに…と心配しながら心待ちにしています。 それまでに若い組合経験の浅い活動家が、一人でも読了して感想を言ってくれると、私が感じた最後の課題、この本の言葉はどう届いているのだろうか、の断片がご報告できるかもしれません。 最後に、LANNの拙いインタビューを収録していただき、ありがとうございました。今年はLANN準備期の集大成号を出す予定なので、また違う角度で石川さんの言葉を読者に伝えたいと思います。 とりとめない感想をご容赦ください。これに懲りず、今後ともよろしくお願いいたします。 |
松本 耕三(全港湾労働組合委員長) |
2014/11/13 東部労組の石川源嗣副委員長の著作、「労働組合で社会を変える」を全国の組合役員・活動家にお勧めしたい。組合員の説得活動で苦労する組合役員・活動家にとって参考になる実例をもとにした指針が豊富に載っている。日常活動にすぐさま活用できる。注文はinfo@toburoso.org まで。 労働組合で社会を変える② 本書は、石川氏がこれまで東部労組の機関紙などに掲載した小文章をテーマごとに分けて引用する形で構成している。エッセイ集を読むように、どこから読んでも面白い。一つ一つが短い文章なので、作業の休憩時間に手を取って読むことにも適している。組合活動家向けである。 労働組合で社会を変える③ 「第2部労働組合と職場闘争」で労働組合の日常活動の教訓が述べられている。「落ちるところまで落ちれば労働者は立ち上がる、というのは絶対にありえない」との一節。「落ちるところまで・・」とオルグをあきらめてきた役員、説得をさぼる言い訳にガツンと来る一言である。 労働組合で社会を変える④ 実は組合役員の多くが「労働者は落ちるところまで落ちなければ組合を必要としない」と思っている。明らかに間違いなのだが、納得しない。なかなか根深いものがある。本書は、具体的成果を上げてきた広島電鉄労組の経験を例にしている。コリをほぐすためには貴重である。 労働組合で社会を変える⑤ 日常活動の組合員の説得活動について、「一回あたって、これはだめだなと腹を立てるようなら、最初からやらないほうがいい。いったん狙いを定めたら何年かかってもいいというぐらいの根性であたること」。組合役員は根性がなければだめだという当然のことが、新鮮に感じる。 労働組合で社会を変える⑥ 本書は学校の教科書のように、一ページ、一ページ暗記しながら覚える必要はない。第1部では、労働運動の基本的な考え方、思想を日常活動に関連付けて解説する。第2部では労働組合の日常活動をエッセイタッチで実例をもとに書いてある。第3部ではインタビューのなかで、 労働組合で社会を変える⑦ 日常活動の経験が述べられている。学校で辟易したつめこみ学習はもうこりごりという人も、本書では、エッセイタッチの記事、マルクス主義の引用、インタビューなど様々な形式で労働運動の極意が語られている。読み続きていくうちに、自然とたたかい方が身についてくる。 労働組合で社会を変える⑧ 近年労働組合の組織率は低下し、労働運動は衰退の一途をたどっているといわれている。しかし、一方で「残業手当も支払われない」「休みも取れない」職場で働き、ワ-キングプアなどと呼ばれる低賃金で働かせられる労働者が増大している。 労働組合で社会を変える⑨ 労働者の雇用と生活を守り、権利侵害を救済するための運動と組織、労働組合はますます必要な社会となっている。にもかかわらず、なぜ労働組合は減っているのか。答えは簡単である。困っている未組織労働者を救済することができないからだ。 労働組合で社会を変える⑩ 企業内組合だけで活動してきた役員こそ本書を読んでほしい。いまある労使関係は昔からあったものではない。先輩たちがたたかいとってきたものだ。今ある現状に甘えているならば、あっというまに大多数の未組織労働者と同じ状態になっていく。 労働組合で社会を変える⑪ 今つくられている労使関係だけしかわからない労組役員では、未組織労働者の面倒を見ることはできない。それは労働組合が衰退することだ。労働組合役員が、未組織労働者の問題を対応し組織化できる体制を作ることは急務である。 労働組合で社会を変える⑫長年、労働相談から組合作りを指導してきた東部労組石川副委員長の著書「労働組合で社会を変える」は、労働組合活動のイロハから世直しまでを勉強することができる実践的教科書だ。全国の組合役員・活動家におすすめの一冊である。注文はinfo@toburoso.org
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野村 貴(洛南ユニオン委員長) |
2014/11/05
石川様 「労働組合で社会を変える」を送っていただきありがとうございました。 とりあえずざっと読みました。贈呈してもらったので、もっと丁寧に読んで感想を送らなければならないと思っているのですが、いつになるかわからないので、失礼とは思いながらも感想を述べさせてもらいます。 ①階級的労働運動の再建でも、新たな労働運動の創出でも、それらを目指すうえで最低限の水準、基礎的水準として石川さんが提起しているような水準での労働 組合運動の実態がなければ論外ということが、石川さんの豊富な経験、理論的知見から繰り返し述べられていると思いました。その点で出発点としてきっちり踏 まえるべき地平、ここから以外は出発できない地平の確固たる提示、だと思いました。 具体的には 1)労働組合と力の思想 2)職場闘争の意義の確認 3)中小企業労働者と非正規労働者への依拠 4)小さく勝って大きく負けるな ②「労働組合で社会を変える」と言った場合、どのような社会をつくるのか、それにいたる統一戦線などの政治プロセス、などが政党の綱領なり、ナショナルセ ンターの行動綱領などの形で明らかにされなければ、労働者の賃上げ闘争を共に闘いながら、現在の資本主義と労働者の非和解性、搾取の仕組みなどを説明し、 それに変わる社会はどのような社会なのか、その担い手は誰なのか、更に、その実現の政治的プロセスなどを明らかにして、労働者を闘いの主体、労働者階級へ と形成していくことはできないと考えています。 ③石川さんは②は当然と理解しながらも、労働組合運動から展開するということもあり、また様々な諸事情を考慮したうえで、領域を限定して書かれているとい うだろうと考えています。むしろ①を強調せんがために意識的に書かれなかったのかなとも思います。①がある程度、実現されなければ、石川さんも言われてい るように②は砂上の楼閣です。また②の内容の半分は①の直接的な実践の総括として生み出されるものだと考えます。 ④石川さんの提起が出発点、最低限の基準と考えるとかなり「ため息」が出ます。 それでも自分の感覚が、石川さんとあまり変わらないことが実感できて、励まされました。充分な読み込みもせずに勝手な感想を並べ立てて申し訳ありませんでした。
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大重光太郎(獨協大学教授) |
2014/10/29 石川源嗣 さま 獨協大学の大重です。 職場での力を強くすべきとの主張は、長年の労働運動のご経験に裏打ちされており、とても説得力がありました。 「いつも心に硫酸を」という言葉も、衝撃的でした。 また拙稿から引用してくださり、ありがとうございました。 随分と前にいただきながら、お礼がたいへん遅れてしまいました。申し訳ありません。
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川上徹(同時代社) |
2014/10/26 石川源嗣様 御著ご恵送くださりありがとうございました。 「頑丈」を取り柄にしてきたぼくでしたが、今春以来、年齢相当の病を得て、以前に比べて6~7割程度の身体力で過ごしている昨今です。御礼遅れたお詫びかたがた言い訳の次第です。 石川源嗣の衰えぬ情熱と、熱に浮かされぬ「視力」を感じさせる本です。石川さんとは、彼の学生時代末期のころの運動時代を少しばかり重なって生きてきた、いわば古い戦友です。生年も二年しか違わず、同時代の感覚・空気を共有しているという安心感がある。 その後、それぞれの道を歩み、40年近く経ったときに再会して出来たのが『人のために…』(『ひとのために生きよう!団結への道-労働相談と組合づくりマニュアル』)でした。 「振り返ってみて、旋盤工・フライス工の時代がいちばん給料もよかったですね」と語る快活な笑顔を見て、アッ、この人はまっすぐに生きてきたんだ、と安心もし納得もした記憶があります。この人は普通の「人間の速度」でものを感じ考えてきた人だ、と。 本書(まだ斜め読みの箇所が多々あるけれど)で展開されている「労働相談」「組織化活動」は圧巻と思う。労働運動の現場をほとんど知らないぼくにだって分かる。 「人のつながり」の原初の「糸結び」みたいなもの、と想像します。これがずたずたになっている時代にあって、下町をアメーバーのように泳いでいる──そんな光景が浮かびます。 それともう一つ。「第一章」にはハッとさせられました。石川さんが紹介している白井聡のいう、「〈力〉の論理」がはばかられ、忌避される「思想的閉塞感」 というもの、これに似た感覚をぼくも持っているのですが、同時に、このままだったら本当の「オワリ」なんだよな、という焦燥感もあるのです。 でも、石川さんの言うとおり、「個別」の資本家との闘いの中でしか生きた「人のつながり」はできないのだ。「階級」の連帯を信じ講釈するヒマがあるなら、本書で著者が紹介しているたくさんのエピソードを読んだ方がズツト励まされると思うのです。 今後の健闘を祈ります。
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北 健一 (ジャーナリスト) |
2014/10/25 きょうの新聞・印刷・出版の3単産主催の文字活字シンポでも、パネリストの一人(大手書店の若い書店員さん)がこの本を推奨してました。 司会だったので、私も書評を書いたことを一言ふれました。 -------------------------------------------------- レイバーネット掲載
厳しい現場を踏んできた人の手になる労働組合論は、やはりおもしろい。ページを開くと、ぐいぐい引き込まれてしまいました。東京東部労組・石川源嗣さんの『労働組合で社会を変える』(世界書院)のことです。 本書の魅力は、なんといっても、石川さんが仲間たちと歩んできた波乱万丈の経験、現場の攻防やその渦中の労働者の想いの活写にあります。 たとえば産廃運送会社での組合誕生の瞬間。庸車と呼ばれることもある、車持ち込みの請負的関係で働いていた運転手を社員にするという。みんな喜んでいたら、実は1年間の有期雇用でした。更新期限が近づくと、会社は言います。更新してほしければ、労働条件を下げる----。 有期雇用の更新時に「労働条件の不利益変更」を持ち出し、嫌なら更新しないぞと脅かす。労働法の教科書では「変更解約告知の問題」として説かれ、裁 判例の立場も分かれる難しい問題ですが、不安を抱えて集まった60人を前に、石川さんは組合結成を訴えかけます。「その時は、120個を超える目玉でみん なの視線が僕に突き刺さってくるんですよ。チリチリするような」 東部労組ならではの「その後」は本書を読んでほしいのですが、石川さんたちの運動を貫く代行主義批判とか、「度胸」「人情」「腕づく」が、「力を忘れた労働運動」への厳しい指摘と併せ、すっと理解できます。 もっとも、石川さんのいわれる「階級観点」や連合評価については、私は違う意見(というよりスタンス?)を持っています。経営者の攻撃に勝つための 理論武装の「核心問題が、労働者と資本家の利害は対立している、資本家に幻想を持つな、階級闘争で解決するという階級観点にある」という枠組みでこんにち の労働組合運動を位置づけるのは、無理があると思うからです。労働条件の労使対等決定とディーセント・ワークは、階級闘争モデルに立たなくてもめざせるの ではないでしょうか。 他方、本書のメッセージで特に考えさせられ、共感したのが、職場闘争の再評価です。産別や個人加盟を重視する論者の一部には職場を軽視する傾向があ り、その方が先進的なようなイメージもあります。しかし石川さんは、東部労組の経験に加え、ドイツ産別労組についての論文など最新の研究成果とも対話しな がら、「職場闘争の新しいとらえかえしが必要」と主張します。 「カギはやはり地域合同労組・ユニオンの強化にあると思います。そしてそのユニオンの強化の内実は、ユニオンを構成する最も基礎組織である職場支部(労働組合)の拡大強化に行き着きます」 企業主義を警戒するあまり、企業内の組織化をあきらめるのは本末転倒ではないのか。いろいろ異論もある論点ですが、労働条件が決まる基礎的な場で労働者が手をつなぐことの大切さが腑に落ちます。 巻末に収録したインタビューが伝える、一人の青年が工場に入ってフライス工になり、労働者の信頼をつかんでいくプロセスも感動的です。たとえば、江東区内の工場で若き日の石川さんが最初に組合結成に参加し「丸裸で決起したので、いいようにやられてしま」った悔しい経験は、東部労組による組合(職場支 部)結成に活かされているのでしょう。 『労働情報』の前田裕晤代表は、本書の帯に「労働運動関係者には必読書」と書いていますが、たしかにそう思います。この厳しい時代。心に太陽を失わず、労働運動の現場で頑張っている多くの人の手に取られ、社会を変えるための議論に一石を投じることを念じています。 --------------------------------------------- 2014/10/15 厳しい現場を踏んできた人の手になる労働組合論は、やはりおもしろい。 ページを開くとぐいぐい引き込まれてしまいました。 石川さんのいわれる「階級観点」や連合評価など、意見(というよりスタンス?)が違う点もあるのですが、そんなことより、現場の攻防やその渦中の労働者の 想いの描写に引き込まれます。 たとえば産廃運送会社での組合誕生の瞬間など目に浮かぶよう。 産別や個人加盟を重視する論者の一部には職場を軽視する傾向がありますが、石川さんは東部労組の経験に加え、最新の研究成果とも対話しつつ「職場闘争の新 しいとらえかえしが必要」と主張します。 議論は分かれるでしょうが、この点がとても重要と思いました。 巻末に収録したインタビューによって、一人の青年が 工場に入ってフライス工になり、失敗もくぐりながら労働者の信頼をつかんでいくプロセスも感動的です。 現場で頑張っている多くの人の手に取られ、議論に一石を投じる労作と思います。
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伊藤みどり(働く女性の全国センター〈ACW2〉副代表) |
2014年10月15日 石川さん、「労働組合で社会を変えるありがとうございました。今から読むのが楽しみです。 代行主義を批判するところは、一緒です、石川さんのような、現場の中へ入って活動をしようと思ったところは、私も一緒で、いつか大いに意見交換したいところです。 早々に、読んで学んで感想を書かせていただきたいと思います。 2014年10月23日 本当に、私も、読了しました。
2014年10月24日 石川源嗣 様 伊藤みどり 労働組合で社会を変える 情況新書 を読んで 最近、東部労組の組合員が、輝いて見える。特に、メトロコマース支部の組合員の活躍ぶりに目を見張ります。そんな中で、東部労組は、どんな活動の仕方をしてきたか知るためにも、この本を読んでみました。 共感するところから、まず、感想を書きます。女性ユニオン東京も、労働組合の絶対的な組織原則は、「当事者ができることを決して代行しない。」「救済型の組織から、一人ひとりの力を発揮できる組織=サラダボール型を目指そう」と言ってきました。女性だけでも、組合を作り、団体交渉ができるということを実践してきました。しかし、時が経ち、非正規雇用が増えてくる中で専従が代行的になって来てしまったことも否めない事実です。 そんな中で、東部労組の職場を基礎にした仲間作り、新人組合員教育、初めての組合結成通知の時の経営者からの不当労働行為を予想した事前の徹底したロールプレイも含んだ教育。とても実践的でインターシップとして学びたいところです。 法律制度政策だけに活動を狭める傾向は是正されるべきで、あくまでも闘いの基礎は、職場の闘いにあることというところも強く同意します。これらは、一人ひとりの労働者と対話し労働者の自主的な力を信じていなければできないことです。「一番弱い人の話に耳を傾けよ。自分が一方的にしゃべるのではなく 組合に入ってもらいたい人に話してもらえるように引き出せるかどうかが勝負どころ」などなど。まさに、基礎は「傾聴」からです。「会議は命、みんなで討論、みんなで決定、みんな行動」も、言うは易し行うは難しのこのことを、常に自省しているところも共感できます。 次に、違和感について、マルクス主義による組合員教育についてです。私も、20代の頃、電機労連に加入していて組合の教科書は、まず、マルクスの賃労働と資本でした。 工場労働者であった私には、本当にすんなり入って来たものです。しかし、歴史を見れば明らかですが、ノーメンクラツーラの言葉があるように、マルクスを学んでも労働貴族は生まれ、ソ連の崩壊は、そうした共産党独裁、労働貴族への民衆の不満が蓄積して起きたものだと私は、認識しています。また、産業革命の時代のマルクスは、労働の質が、ここまで自然破壊的に来るとは予想していなかったことだと思います。社会的に無用である原子力発電に典型な労働をどう考えていくのか、社会的に無用な労働はないのか。階級的と一言で、説明してしまうことは労働者自身が思考することを阻害しないのか? 家事、育児など女性の無償労働は、どのように説明できるのか。 今や、西欧文明を「先進国」としてきた人間への警告とも言える時代に、先住民族から学ぶことはないのかなどなど、私には、多くの疑問があります。 ILO の三者構成が、今、危うい状況の中で、私たちは、何をなすべきなのか。それは、思想を上から植え付けるのではなく組合員の知恵を動員しながら自由に議論できること。「納得させる」のではなく、対立意見から変化を生み出すことではないでしょうか? 生意気なことを言いました。最後に、私も20代に工場労働者になり、それ以来、労働者であることと性差別の理不尽さに怒り、今日まできてしまいました。労働組合の変革のために、石川さんが、東部労組の中で女性の権利獲得にも尽力してきたことを知っています。なので、もっともっと、この本を読んで、一緒に、女性から見ても魅力ある労働組合への変革を、私の拙い経験も交えて一緒に考えてみたいと強く望んでいることを伝えて感想にします。
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河添 誠 @kawazoemakoto |
2014/10/23 東部労組の石川源嗣さんからご著書『労働組合で社会を変える』 を頂いた。 感謝。 中小零細企業の職場闘争と非正規労働者の闘争とを丁寧につなげているのが東京東部労組。いつも学ぶところが多い。 その中心的オルグの著書。読んで議論したい。
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松原明(ビデオプレス代表・レイバーネット共同代表) |
2014/10/21 石川源嗣さんの『労働組合で社会を変える』を拝読させていただきました。 階級的原則にしっかり立ちながら、社会構造の変化・現実を見すえて、柔軟に対応している東部労組の姿勢に敬服したところです。 まだまだ厳しい時代が続くと思いますが、的確な運動に大きなチャンスも近づいている気がします。 共にがんばりましょう。
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小谷野毅(全日建連帯労組書記長) |
2014/10/20 拝啓 著書、恵贈賜りありがとうございます。 資本対労働の階級的対決という原点に立った、一貫した論旨に共感します。
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ユニオンくしろ書記長 工藤 和美 |
2014/10/17 東京東部労組 いつも大変お世話になりありがとうございます。
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弁護士 笹山尚人 |
2014/10/11 全国一般東京東部労組 御中 東京法律事務所の弁護士の笹山です。
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呉学殊 (労働政策研究・研修機構 主任研究員) |
2014/10/10 石川さん 御執筆、大変御疲れ様でした。また、ご出版、おめでとうございます。 本当に凄いですが、あれほど御忙しいのに、これほどのご本をご執筆なさって本当に頭が下がります。 ザーッとしか読んでいませんが、一番、心が熱くなったのは、203ページ:「石川さん、ここで労働組合つくりたいので、いっしょにやってくれ」でした。 本当に素晴らしい「労働者」だったのですね。敬服しております。 さて、本のタイトルは、実は、小生がそういうタイトルで本を書きたいとの思いがあったので、私の本のような感じが致します。 多くの人々に読まれてタイトルのとおりの労働組合・社会となって行くことを心より願っております。
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寺間誠治(元全労連組織局長) |
2014/10/09 石川 源嗣さま 本日、「労働組合で社会を変える (情況新書)」を全労連宛に送っていただきました。 本当にありがたく感謝に耐えません。前作の「ひとのために生きよう!団結への道―労働相談と組合づくりマニュアル」を読んだ際も、石川さんの人としての生き方に大いに感動したものでした。 今回も早速勉強し、今後は本書を大勢の他の仲間にも薦めていくつもりです。 引き続く石川さんのご活躍を心から祈念し、お礼とさせていただきます。
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長崎 広(全国一般東京東部労組副委員長 |
石川さんの2冊目が発刊されました。
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