1982年/49分/カラー 制作:映像集団「8の会」
企画:全日本運輸一般労働組合関西地区生コン支部
制作:広垣豊 制作補:安東民兒
監督:近江道広 脚本:高橋一郎 撮影:原博司
録音:小林一彦・大星慶祐 編集:安藤信一
題字:石井清子 作画:松山啓子
調音:村上誠 録音スタジオ:大貴スタジオ
制作進行:木下五郎・村井真知子
機材:関西映像 車輛:壱燈社
スチル提供:樋口健二・共同通信社・子どもたちに 世界に!被爆の記録を贈る会
ナレーション:南風洋子(劇団民芸)
登場人物:
斎藤征二(運輸一般関西地区生コン支部 原子力発電所分会長)
名和通雄(同 書記長)
村居国雄(滋賀県在住)
松本直治(富山市在住)
野坂静雄(高知県窪川町 郷土をよくする会 会長)
沢山たづ子(高浜の海と子どもたちを守る会) ほか
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レベル7の事故を起こし、今も収束に向けて楽観を許さない福島第一原発。水素爆発の瞬間や白煙・黒煙を吹く様子がテレビ中継され、信じがたい光景に息をのんだ人も多いはずです。周囲の空間線量は急上昇し、床に鉄板を敷いた自衛隊ヘリでも、原発上空にはとどまれませんでした。そんな危険な現場へと、避難所や近隣から呼び戻され、収束作業に入る労働者たちがいました。高線量の瓦礫が散乱し、状況がつかめず手探りのような作業であることが伝えられました。彼らを「Fukushima 50」と英雄のように取り上げる海外メディアもありました。
だが、彼らは労働者です。あくまでも労働契約により、安全衛生が守られる中で働き、その労働の対価としての賃金を得るものでなければなりません。労働法に基づく労働者の正当な権利がなければなりません。しかし、そもそも原発労働自体が「奴隷労働」と呼ばれるような労働であることは、既に周知のことです。そしてこの国では、原発労働者とりわけ下請労働者が、被曝労働者としての労働運動を展開した事例はほとんど皆無でした。
その中で、歴史的に唯一、原発下請労働者を組織して活動した労働組合がありました。1981年の敦賀原発の事故隠しを契機に結成された「全日本運輸一般労働組合原子力発電所分会」(斉藤征二分会長)です。同分会は労働条件の改善として20項目の要求を事業所・日本原電と元請・関電興業に突き付けました。そして、労働者とその家族のいる地域で情宣活動を展開し、さらに原発のある全国各地へと展開して、原発とそこで働く労働者、そして地域の問題を訴えました。この『原発はいま』は、その原発分会の活動と地域住民の取り組みを撮った記録映画です。
福島原発事故の後、全国で原発を止めようとする運動が展開されています。しかしそれは、単に原発が止まればよいわけではなく、貧困と格差の下で原発を受け入れざるを得ないような地域をなくすこと、命と削って行うような差別的な労働をこの社会から一掃することでなければなりません。原発労働者に対する理不尽さは、国策である原子力事業の様々な不正義を象徴的に表すものです。この映画は、まさに今、全国各地で見られるべき映画と言えるのではないでしょうか。