西日本新聞
中国人被害者へ挑戦」 強制連行広島訴訟 来月最高裁が弁論 北京で支援者声明
【北京1日傍示文昭】戦時中、広島県内の水力発電所の建設現場で過酷な労働を強いられたとして、中国人元労働者2人と3遺族が施工業者の西松建設(東京)に損害賠償を求めた訴訟の支援者が1日、北京市内で記者会見した。最高裁第二小法廷が3月16日に同訴訟の弁論を開くことを決め、同社に全額の賠償を命じた広島高裁判決(2004年7月)が見直される見通しとなったことを踏まえ、支援者は「中国人被害者に対する重大な挑戦だ」とする声明を発表した。
会見したのは、田中宏・龍谷大経済学部教授ら日中両国の支援者。広島高裁判決は「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」とした1972年の日中共同声明について、個人の賠償請求権は放棄されていないとの判断を示し、中国人強制連行をめぐる訴訟では高裁で初めて原告勝訴の判決を言い渡した。一方、第二小法廷は個人損害賠償権が放棄されたかどうかについて弁論を開くと通知しており、原告逆転敗訴となる可能性が高い。
田中教授らは「最高裁が個人請求権がないと判断すれば、すべての関連訴訟の敗訴が確実になる」と指摘した上で、「中国人被害者の正当な賠償請求権を永遠に封印しようとするもので、判決が出てからでは遅い。その前に中国人は深く憂慮していることを日本に伝えてほしい」と訴えた。
=2007/02/01付 西日本新聞朝刊=
北海道新聞
西松強制労働訴訟 請求権封印を懸念 上告受理 日中の団体が反発 2007/02/02
08:13
【北京1日志村治】第二次大戦中に強制連行され、広島県の水力発電所建設工事で過酷な労働を強いられたとして中国人元労働者らが西松建設(東京)を相手に損害賠償を求めて起こした裁判で、最高裁が西松建設側の上告を受理し、原告逆転敗訴の可能性が出てきたことを受け、強制連行問題に取り組んでいる日中の団体「花岡受難者聯誼(れんぎ)会」は一日、北京市内で記者会見し、「中国人戦争被害者の賠償請求権が永遠に封印されてしまう」と訴えた。
最高裁第二小法廷が三月十六日に開くことを決定した上告審弁論では原告、被告側双方の意見を聞く。上告審では中国人個人の損害賠償請求権が一九七二年の日中共同声明などで放棄されたかどうかについて、最高裁が初の判断を下す見通し。放棄されたと判断された場合、故劉連仁さんの強制連行訴訟(東京高裁で敗訴、遺族が上告中)など一連の強制労働訴訟や従軍慰安婦訴訟に影響を与えるのは必至だ。会見では花岡事件の関係者らが「上告審弁論の結果を非常に懸念している」との声明文を読み上げた。