強制連行中国人側が逆転敗訴(新潟訴訟)

 戦時中、強制連行され新潟港で働かされた中国人元労働者11人と遺族が、国とリンコーコーポレーション(新潟市)を相手に計2億7500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が14日、東京高裁であった。安倍嘉人裁判長は、国と同社に計8800万円の支払いを命じた1審新潟地裁判決を取り消し、中国人側の請求を棄却した。中国人側は上告する方針。

 全国13地裁で提訴された一連の強制連行訴訟で、国と企業双方の責任を認めた唯一の判決が取り消されたことから、他の訴訟にも大きな影響を及ぼすとみられる。

 判決は、国と同社が「身体、自由にかかわる権利を違法に侵害した」と強制連行、強制労働の事実を認定した上で、中国人側に損害賠償請求権が認められるかどうかについて検討.
 国については、国家賠償法施行前の国の責任を問わない「国家無答責」を適用した。仮に責任があったとしても、賠償請求権は権利が存続する20年の「除斥期間」を過ぎたとして退けた。
 同社については、劣悪な条件下で労働を強いた「安全配慮義務違反があった」と認めながらも、それに基づく賠償請求権は10年の「時効」により消滅したとした。
 争点の一つとなっていた、1972年の日中共同声明によって中国国民が賠償請求権を放棄したとみなすかどうかについては、判断しなかった。
 2004年3月の1審判決は「国家無答責」について「重大な人権侵害が行われた事案では、正義・公平の観点から相当性を欠く」として適用しなかった。さらに国と同社に安全配慮義務違反があったことを認め、「不誠実な態度」などを理由に「時効」を認めなかった。

 判決によると、11人は1944年、日本政府によって中国から新潟港に強制連行され、当時の新潟港運(現リンコーコーポレーション)で終戦まで強制労働に従事させられた。すでに5人が死亡している。

新潟日報2007年3月14日