【声明】アメリカの「終わりなき対テロ戦争」に組み込まれるな
 ――「米軍再編」最終報告を破棄せよ! 


【声明】アメリカの「終わりなき対テロ戦争」に組み込まれるな
――「米軍再編」最終報告を破棄せよ!

新しい反安保行動をつくる実行委員会10期
東京都千代田区三崎町3-1-18 近江ビル4F 「市民のひろば」気付
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(1)日米同盟の「新たな段階」とは何か
 5月1日、ワシントンで開催された日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、いわゆ
る「米軍再編」最終報告(「共同発表」文と「日米ロードマップ」)が発表された。
昨年2月の「戦略共有」と「役割分担」に関する合意、10月の「日米同盟・未来のた
めの変革と再編」と題する「中間報告」を経て、それらとセットのものとして打ち出
された「最終報告」は、まさに日米軍事同盟が「新たな段階」へ踏み出すことを宣言
するものであった。
 「新たな段階」とは何か。それは「2プラス2」会談後に行われた共同記者会見での
ラムズフェルド米国防長官の発言で、明瞭になっている。
 「それ(最終報告)により、太平洋における安定的で持続可能な米軍の前方展開に
もとづく同盟の永続的な能力を確保する」「われわれは日本の自衛隊の再編も同時に
行い、それが米側の再編を補完し、以前にまして作戦上の調整を図ることになるよう
にした。われわれは関心と熱意をすべて振り向け、役割や任務の分担が確実にできる
ようにする。そうした分担は、両国がいっそう統合し、より均衡のとれた能力を投入
することを基本とする」。
 「米軍再編」を「補完」する自衛隊の再編というこのラムズフェルド発言と、「日
米同盟が、地域及び世界の平和と安全を高める上で極めて重要な役割を引き続き果た
す、協力を拡大したい」とする「共同発表」文をあわせて考えるならば、今回の「米
軍再編」合意の全体像が明瞭に浮かび上がってくる。
 日米同盟の「新たな段階」とは、「9・11」を重要な転機とし、アフガニスタンと
イラクへの侵略戦争と占領支配で現実化した米国の先制攻撃的な「対テロ」グローバ
ル戦争に自衛隊を実戦部隊として組み込むためのものである。すでに自衛隊はアフガ
ン戦争でインド洋、アラビア海にイージス護衛艦や補給艦を派遣し、米国を中心とし
た多国籍軍への支援活動を行っている。またイラク占領軍の一員として陸上自衛隊と
航空自衛隊を派遣している。世界大に広がる戦場で情報・指揮・戦闘機能を共有する
「日米同盟の新たな段階」とは、すなわち国連や国際法をも踏みにじって遂行される
米国の一方的な先制的侵略戦争に、自衛隊が米軍指揮下の一部隊として参戦すること
なのである。

(2)今や安保条約すら足かせとなった
 これは言うまでもなく、現行の日米安全保障条約の枠組みをも完全に超えた、条約
改定の調印や国会での批准もない、日米安保条約の抜本的な作り替えだと言わなけれ
ばならない。1996年4月の橋本・クリントン会談による「日米安全保障共同宣言」は、
ポスト冷戦期において、旧来の安保条約における「極東」条項を、事実上アジア太平
洋全域にまで拡大するものだった。しかしこの日米安保「新宣言」は、「日米安全保
障条約を基盤とする両国間の安全保障上の関係が…21世紀に向けてアジア太平洋地域
において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続ける」と述べていた。
形式上、国連憲章と国連の「集団的安全保障」を基礎にした「日米安全保障条約」に
ついて、ここでは依然として言及されていた。
 しかし昨年10月の「中間報告」では冒頭に「日米安全保障体制を中核とする日米同
盟は、アジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎である」という文章が置
かれており、「日米安全保障条約」が「日米安全保障体制」に書き換えられている。
そして「最終報告」の「共同発表」では、「日米安全保障関係を中核とする日米同盟
は、日本の安全及びアジア太平洋地域における平和と安全にとって不可欠の基礎であ
り」という文言になっている。全く同一の内容である「アジア太平洋地域の平和と安
全」という理念の基礎が、「日米安全保障条約」から「日米安全保障体制」あるいは
「日米安全保障関係」にすりかわり「日米安全保障条約」という言葉そのものが後景
に退いているという事実は、「日米同盟の新段階」が、「日米安保条約」の条文その
ものをもはや足かせとしてしか扱っていないという現実を物語っている。
 こうした安保条約の実質的改定が、国会審議もないままに「2プラス2」での合意に
よって行われるのは、議会制民主主義の初歩的ルールすら完全に踏みにじるものであ
る。

(3)「負担軽減」とは傲慢で脅迫的な基地の新たな押し付け
 「日米ロードマップ」は、「抑止力の維持」と「基地負担の軽減」を両立させるこ
とを主眼とした、というのが小泉政権の言い分である。しかし、普天間飛行場の名護・
キャンプシュワブ沿岸への移設、海兵隊8000人とその家族のグアム移転、そして嘉手
納以南の一部の米軍基地の「返還」という合意は、決して沖縄の人びとにとっての
「負担軽減」を意味しない。それは米国の世界的な戦略上の利害に基づいた基地の再
編・強化にほかならない。辺野古地域の住民たちにとって、それは生活と環境の破壊、
平和に暮らす権利の侵害であり、さらに在沖米軍基地の自衛隊との共同使用は、沖縄
のすべての人びとにとって新たな攻撃でもある。沖縄の基地はまさに新しい攻撃的な
軍事戦略の下で、米日の一体化した作戦・出撃の拠点として再編・強化されようとし
ている。
 しかも、こうした新しい攻撃は「負担軽減」を口実に、日本側の負担=すなわち日
本に住む人びとの重い負担によって実現されることになっている。米海兵隊のグアム
移転は「沖縄住民の強い希望を認識しつつ」という恩きせがましい理屈をつけて「こ
れらの兵力の移転が可能となるよう、日本は60・9億ドルをを負担する」とされてい
る。
 さらに「パッケージ方式」を名目に次のような傲慢で脅迫的な言葉が連ねられてい
る。「特に、嘉手納以南の統合及び土地の返還は、第3海兵機動展開部隊要員及びそ
の家族の沖縄からグアムへの移転完了にかかっている」。「沖縄からグアムへの第3
海兵機動展開部隊の移転は、1 普天間飛行場代替施設の完成に向けた具体的な進展、
2 グアムにおける所要の施設及びインフラ整備のための日本の資金的貢献に懸かっ
ている」。
 つまり、「危険な普天間基地の返還を求めるのなら、まず辺野古に新しい基地を作っ
てからだ。他の基地の返還が必要ならば、グアム移転のためのカネを出せ」というわ
けだ。まさに居直り強盗の論理である。

(4)「軍事一体化」を体現する基地の共同運用と統合司令部の建設
 「ロードマップ」が語る座間、横田、岩国などの「本土」米軍基地の再編、自衛隊
基地の日米共同使用もまた、米国のグローバルな「対テロ」戦争戦略への自衛隊の実
戦的な組み込みである。横須賀の米原子力空母の母港化も、こうした全体としての米
軍再編の流れの中で捉える必要があることは言うまでもない。
 キャンプ座間へは、2008米会計年度までに「米陸軍司令部の改編」=米陸軍第1軍
団司令部が移転され、2012年度までに陸上自衛隊中央即応集団司令部が移転する。そ
して米軍相模総合補給廠には「戦闘指揮訓練センター」などの施設が建設される。
 横田基地には、2010年度までに航空自衛隊航空総隊司令部が移転し、「横田の共同
統合運用調整所は、防空及びミサイル防衛に関する調整を併置して行う機能を含む」。
すなわち横田は空軍とミサイル防衛の分野での日米の統合司令中枢となるのだ。そし
て航空自衛隊の車力基地には米軍のXバンド・レーダー・システムが建設される。
 米空母艦載機の厚木から岩国への移転については2014年までの完了が合意された。
また嘉手納のKC130空中給油機についても「司令部、整備支援施設及び家族支援施設
とともに岩国飛行場を拠点とする」ことが明記された。岩国基地は配備される航空機
数において東アジア最大の空軍基地となろうとしている。
 これらの基地再編は、米軍と自衛隊とが共有した戦略・情報・司令機能にもとづい
て米軍と一元的な指揮の下で一体として運用されることを意味する。三沢、岩国、嘉
手納の三つの米軍基地の航空機は、千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原の各航空
自衛隊基地からの訓練に参加し、「(日米)双方は、将来の共同訓練・演習のための
自衛隊施設の使用拡大に向けて取り組む」とされていることに、それが示されている。
 これらの「基地共同使用」とは、決して日米対等の「共同使用」ではない。そこに
は自衛隊の「独自性」が存在する余地はない。「日米同盟」のグローバルな「新たな
段階」とは、このようなあからさまな軍事的従属性を特徴としている。そしてふたた
び、これらの「米軍再編」にともなう3兆円と言われる膨大な負担は、日本に住むす
べての人びとに強制されることになるのである。

(5)アジア太平洋・全世界の米軍再編反対の闘いと連携し、新しい反安保闘争を
 ここで明らかにしたように、今回の「米軍再編」は、米国の世界的な「対テロ」先
制攻撃戦争への自衛隊の組み込みであり、現行日米安保条約の実質的な全面改定を伴っ
た新々日米安保体制であり、「中国の軍事的脅威」を見据えた日米同盟の戦略的再配
置という性格をも持っている。それは、東アジアにおける米韓・米日という二国間安
保から、米戦略の下での日本・韓国の軍事力の統一的でフレキシブルな運用も意味す
る。私たちはさらに、NATOが日本、オーストラリアとの「国際平和活動」や「災害救
援活動」での協力を提案している事実や、辺野古の新米軍基地を英豪両国が使用する
可能性についても取り沙汰されていることに注意する必要がある。
 このような世界的な性格を持った「米軍再編」が、日本の莫大な財政負担を伴いな
がら、地元住民、自治体の意向を無視し、国会での審議も経ず、秘密裏に「合意」さ
れたことを絶対に認めることはできない。しかもこうした「米軍再編」の動きは、憲
法9条改悪を中心とした改憲の政治日程の加速化、戦争国家を支える周辺事態法、有
事法制の成立、さらには教育基本法改悪、共謀罪などの人権・民主主義破壊の攻撃と
一体のものであり、それを促進する重要な要因なのである。
 すでに沖縄をはじめとして、座間、相模原、岩国、鹿屋など「米軍再編」による基
地負担の対象となる地域では、政府の各自治体に対するすさまじい圧力にもかかわら
ず、自治体ぐるみの反対運動が大きな広がりをもって展開されている。韓国の平澤、
グアム、フィリピンをはじめとして世界各地で米軍基地反対の運動が拡大している。
 私たちは、いまこそ、アジア、世界の人びととともに、イラク・アフガンからの占
領軍の撤退を求める運動とならんで、「米軍再編」計画の破棄、全米軍基地のアジア
太平洋からの撤去を求める新たな反安保行動を築き上げていくことを訴える。
 「米軍再編」反対の闘いと憲法改悪阻止の運動を結びつけ、平和のための大きなう
ねりを作りだそう。
 
2006年5月30日

 

 新しい反安保行動をつくる実行委員会第10期(反安保実X)
 東京都千代田区三崎町3-1-18 市民のひろば気付
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 メール:hananpojitsu@jca.apc.org
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