防衛庁長官 大野功統 様
防衛庁設置法等の一部を改正する法律案の廃案を求める申し入れ
今国会に、「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」が提出されています。
この法律案の内容は、?統合幕僚監部を設置し統合幕僚長を置く、?統合幕僚会議
の下に置かれていた情報本部を防衛庁本庁の下に置く、?弾道ミサイル等に対する破
壊措置を防衛庁長官が命じることができるようにする、というものです。
統合幕僚監部の設置は、陸海空三自衛隊の統合運用を図るためのものだといわれて
います。陸上自衛隊では、防衛庁長官直属の中央即応集団が編成されると報じられて
います。この中央即応集団は、対ゲリラ・コマンドゥ作戦を担う特殊作戦群、核・化
学・生物兵器対処部隊、即応海外派兵待機部隊などで編成されるといわれています。
統合運用の強化も、こうした「対テロ対処」態勢を強化し、いつでも海外派兵ができ
るようにすることの一環として、目論まれているものです。
イラク攻撃をはじめ、世界規模で「テロとの戦い」という名で破壊と殺戮を欲しい
ままに行っているアメリカ軍は、陸海空軍および海兵隊の統合運用を行っています。
自衛隊もイラク派兵など、アメリカが進める「対テロ戦争」の一翼を担っています。
自衛隊の統合運用の強化は、既に統合運用を行っているアメリカ軍と足並みを合わせ、
さらにアメリカが進める「対テロ戦争」に加担しようとするものといわざるを得ませ
ん。
統合運用の強化は、「対テロ戦争」を推進する態勢を強化するための米軍再配置と
も密接に関わると思われます。米軍再配置の一環として、座間に米陸軍第1軍団司令
部が移転する動きがあると報じられています。イラク戦争を担った米中央軍の統合作
戦を指揮したのは陸軍司令部であったことに鑑みれば、第1軍団司令部が太平洋軍の
統合作戦の中枢を担うと想定されます。2004年、2005年の日米共同方面隊指揮所演習
(ヤマサクラ)では、第1軍団司令官が統裁官を務めました。そうしたことからすれ
ば、統合幕僚監部設置・統合幕僚長ポストの新設は、米陸軍第1軍団座間移転ととも
に、アジア太平洋地域での戦争遂行態勢を強化するものであることは間違いありませ
ん。それどころか、アメリカ軍が、朝鮮民主主義人民共和国に対して、イラク戦争の
ような「予防先制攻撃」を引き起こす危険性を高めるものです。加えて、日米が中国
脅威論を強調しているなかでのこの動きは、中国との緊張も激化させかねません。
また、統合幕僚会議の下に置かれていた情報本部を防衛庁本庁の下に置く改変も、
情報戦・諜報戦を重視する「対テロ戦争」を遂行する態勢を強化するためのものです。
しかも、自衛隊各部隊に情報団を配備するという動きがあると報じられています。情
報戦・諜報戦とは、デマを流したりして不安と恐怖を煽ったり、民衆の動向を監視・
調査したりするものです。そうした作戦を担う機関を設置することは、民衆の自由と
権利を著しく脅かすものといわざるを得ません。そして、こうした再編の先には、情
報本部が収集・分析した情報に基づいて統合幕僚監部が意思決定を迅速に行うという
危機管理体制の強化が図られると思われます。しかし、情報戦で得られた情報に基づ
いて統合司令部が迅速に戦争を行えるということが、大量破壊兵器開発の証拠もなく
イラク戦争をアメリカ軍が強行したことにつながったことからすれば、こうしたトッ
プダウン型の危機管理体制の強化こそが戦争を容易にしてしまうことは明らかです。
さらに、弾道ミサイル破壊命令の新設は、ミサイル防衛推進の一環です。ミサイル
防衛は、その実効性が疑わしいにもかかわらず、多大な費用を要し、軍需産業を潤す
だけのものです。また、憲法が禁じる集団的自衛権に抵触するという指摘もなされて
います。しかも次世代ミサイル防衛システムの日米共同研究・開発が進められていま
すが、アメリカは生産・配備しながら研究・開発を進めるとしており、これに関わる
武器輸出三原則の緩和が行われました。これをきっかけに、さらに武器輸出が緩和さ
れるおそれもあります。
しかも防衛庁設置法等の一部を改正する法律案は、長官が内閣総理大臣の承認を得
て命令をするとともに、「長官は、事態が急変し、内閣総理大臣の承認を得られない
場合には、あらかじめ長官が作成し内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要綱に従い、
自衛隊部隊に命令をすることができる」と、緊急事態での迎撃ミサイル発射命令の権
限を現場指揮官に委ねています。緊急事態を理由に現場指揮官に武力行使の権限を委
譲してしまうことは、文民統制を弱め、安易な武力行使を生じさせかねません。
以上から、私たちは、以下を申し入れます。
一、「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」を廃案にすること
一、 統合幕僚監部の新設など「対テロ戦争」のための陸海空三自衛隊の統合運用強化をやめること
一、 情報本部を防衛庁本庁の下に置くなどの情報戦強化をやめること
一、 アメリカ軍と一体となった「対テロ戦争」の推進を見直し、イラクから即時撤退すること
一、アメリカが進めるミサイル防衛構想から離脱すること
2005年3月21日
「自衛隊法改悪を許さない3・21討論集会」参加者一同
[連絡先]イラクからの自衛隊撤退と沖縄の米軍基地の撤去を求める実行委員会
東京都千代田区三崎町3-1-18 近江ビル4F 電話:03-5275-5989
イラクからの自衛隊撤退と沖縄の米軍基地撤去を求める実行委員会(反安保実IX)
東京都千代田区三崎町3-1-18 市民のひろば気付
TEL:03-5275-5989/FAX:03-3234-4118
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