インド洋津波支援を口実とした自衛隊海外派兵に抗議する申し入れ
小泉純一郎・内閣総理大臣 殿
大野功統・防衛庁長官 殿
12月26日にインドネシア・スマトラ島沖で起きた地震とそれに伴う津波によってイ
ンド洋岸諸国に甚大な被害が生じたことは周知のことである。
津波災害直後、小泉政権は、インド洋で「対テロ」戦争支援活動にあたっていた海
上自衛隊のイージス艦「きりしま」など護衛艦二隻と補給艦一隻をタイ沖に派遣し、
1月4日には陸海空自衛隊に「国際緊急援助隊」としての派遣命令を発令し、1月5
日には第一陣が出発した。1月6日には航空自衛隊のC130輸送機が、小牧基地から、
米軍が前線司令部を置いているタイのウタパオ空軍基地に向かった。1月12日には、
海上自衛隊の輸送艦「くにさき」など二隻が陸上自衛隊の輸送ヘリや車輌を積み込み、
スマトラ沖に向け出港した。さらに13日には、護衛艦などが出港した。最大で約1000
名もの自衛隊が派兵され、ウタパオ基地からスマトラ島の拠点まで航空自衛隊輸送機
が輸送した物資を陸上自衛隊ヘリが被災地に輸送し、海上自衛隊輸送艦を陸自ヘリの
発着拠点および隊員宿泊艦とするといった活動を行なうという。
震源地に近いアチェでは分離独立運動とそれを弾圧するインドネシア国軍による紛
争が続いており、インドネシア国軍による人権侵害がかねてから問題とされてきた所
である。インドネシア国軍は、「救援」と対分離独立派への鎮圧作戦を一体のものと
していることを隠していない。また、アメリカ軍も、イラク戦争で高まっている反米
感情を好転させるといった意図に基づいて、「対テロ戦争」の一環として「支援」活
動を行なっている。そして、アメリカはイラク戦争同様の有志同盟方式での「支援」
を進めようとした。1月11日に行なわれた国連の「大津波支援国会議」では国連主導
の支援が確認されたが、アメリカは必要ならば独自行動も辞さないという姿勢を保留
している。
こうした中で、日本政府は、アメリカに先行してインド、オーストラリアなどとの
有志同盟での「支援」構想を打ち出すなど、アメリカの意向に沿った動きを示した。
それには、日本とともに国連常任理事国入りを目指すインドとの連携強化の意図があっ
たともいわれている。また、中国に対抗してアジアに存在感を示すという意図で「支
援」が急がれたとも報じられている。被災民よりも政治大国として存在感を示すこと
を優先しているといわざるを得ない。しかも、アメリカの「対テロ戦争」と一体の
「支援」であることから、「支援」は戦略的なものと受け止められても仕方ない。加
えて、自衛隊の大規模派兵である。軍事力を背景とした存在感を示すために、日本軍
が侵略した地に迷彩服を着た自衛官が「日の丸」を掲げて大量に乗り込むことは、現
地での反発を呼ぶおそれもある。逆にいえば、「災害救援」の名で、今後の軍事的な
派兵の露払いをしようという意図が明白だということだ。
また、今回の派兵は、12月10日に閣議決定された新「防衛計画の大綱」のいう「国
際緊急援助」を主任務にした作戦の第一弾である。新大綱は、「テロ」などの「新た
な脅威」を第一の対象に挙げ、海外派兵の拡大も打ち出している。「国際緊急援助」
もアメリカ軍の「対テロ戦争」と一体のものであることを、今回の派兵は明らかにし
た。米軍前線司令部が置かれたウタパオ基地を輸送拠点としていることはその証左だ。
米軍再配置に伴い座間に司令部を移転するといわれる米第1軍団はインドまでを任務
対象としているといわれており、今回の派兵は米軍再配置をも先取りしたものといえ
よう。
加えて、陸海空三自衛隊を統合運用することは、統合幕僚監部創設を先取りすると
ともに、陸上自衛隊に創設される中央即応集団の中心をなす即応海外派兵部隊による
海外活動に先鞭をつけるものだ。
「対テロ戦争」に向けた自衛隊再編、日米一体化の強化を先取りし、軍事力を背景
とした存在感をアジアに誇示するための派兵を許すわけにはいかない。災害救援は自
衛隊によらない非軍事的支援に徹するべきであり、インド洋津波支援を口実とした自
衛隊海外派兵の中止を要請する。
2005年1月13日
イラクからの自衛隊撤退と沖縄の米軍基地撤去を求める実行委員会(反安保実IX)
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