反安保実 NEWS 第11号
(イラク・レバノン戦争と国連・自衛隊を問う9・29集会報告)
非人道的殺傷兵器の実験場
       山崎久隆
   


 イラクもレバノンもどちらもそうですが、アメリカとイスラエルによる攻撃では、次世代の非人道的な兵器を使用しています。劣化ウランはもちろん含まれている訳ですが、そのほかにも黄燐弾とか電磁波兵器というようなものが出てきている。これらの兵器は当然アメリカが主に開発し、イスラエルがレバノンやあるいはパレスチナで使っている。そういう兵器の使用は、日本では報道されない訳ですけれども、本当に多くの人たちを犠牲にして行なわれている、ということを考え、スクリーンの写真を見ながら報告します。

(1)劣化ウラン弾
 レバノンのテレビ局がイスラエル兵士が砲弾を抱えて歩いているところを撮影しました。イスラエルでさえ永年カットされてきたシーンを、レバノンのテレビ局が放送しました。持っているものが劣化ウラン弾と思われます。劣化ウラン弾を戦車に積み込んでいる証拠の絵ということになる訳です(山崎よりの補足 この講演会の後、写真に映っている弾丸はタングステン弾ではないかという疑問がインターネット上で出されているため、この部分は未確定情報とさせてください)。その劣化ウラン弾を実際に撃つとどうなるか、劣化ウラン弾一二〇ミリを撃った瞬間の映像と着弾した映像を見ると、着弾した部分が光り輝いて、多分三千度の高温でしょう。秒速は一五〇〇メートルです。秒速は重要で、現在の新型戦車の装甲板を撃ち抜くためには秒速一三〇〇メートル以上の速度がないといけないと考えられています。
 TNT火薬に換算して約一・五キログラムが爆発した時の炎上写真が次のことを示します。高温で燃えて、ウラニウムが粉塵となって飛び散り、空中に拡散していき、それが広範な汚染を引き起こし、多くの人たちを殺戮し環境汚染をしていく。
 どういうメカニズムかはまだ良く分かりませんが、イラクにしてもアフガニスタンにしても先天性疾患で生まれた子どもや死産が多い。レバノンやパレスチナでもこれから出てくる恐れがあります。これから世界中から入ってくる救援隊とか兵隊とかが、コソボのときにも見られたことですけれども、ウラニウムに汚染され健康被害を起こすということもありうる。したがって、可及的速やかに調査チームを送って、レバノン及びパレスチナのその地域の汚染状況の確認と防護をしないといけません。
 イラクは事実上入れない状態ですね。海外からの救援隊が入れない。地元のイラクの人たちが活動している。パレスチナ、ヨルダン、ベイルートには入れる。これから沢山の人たちがそこに行って救援することになると思うのですが、やはり劣化ウランのことを考えると、ある程度対策を準備していかないといけないだろうと私は思います。防塵マスク、場合によっては防護服が必要かもしれない。どこが汚染されているのか、どこが汚染されていないのか、の安全の確認も非常に重要です。

(2)クラスター爆弾
 写真は、ADAMというロケットモーターを使って発射するタイプのクラスター爆弾の子爆弾です。直径が大きなもので一〇センチ弱ですね、小さなものでその半分ですから五センチくらい、ちょうど握りこぶしぐらいですね。子どもの手には非常に握り易い大きさです。こういうものを子どもが触って停戦後既に五十何人が死んでいる。イスラエルは停戦の三日前に一〇〇万発もの大量のクラスター爆弾を投下したそうです。また、クラスター爆弾に不発弾が多い(四割)ということが前から問題になっている。クラスター爆弾自身が非人道的な兵器であるばかりでなく、国際法違反ではないか、特に対人地雷禁止条約に抵触するのではないか、と議論されてきました。こんな爆弾が残っているところで再建作業ができるわけがありません。国連は九月上旬までに二万発回収したと発表しました。全体で五〇万発あるので全然追いつかない。イラクでもあったことですけれども、ヨルダンでは正に意図的にかつ大規模にそういうことを狙ってイスラエルがやった。
 直径が約一二センチのボール状のものは、殺戮能力は低く足を飛ばしたりする。恐怖心を起こすことを狙っている。怖いという思いからイスラエルに抵抗しなくなるだろうと。反対に恐怖でなく憎悪の連鎖になるのではないでしょうか。
 こういうクラスター爆弾により、幅二〇〇メートル、差し渡し六五〇メートル、だいたい学校の校庭が三つぐらい入るエリアにいる人たちが全部殺されます。

(3)リン弾
 リン弾とは燐が入った爆弾です。黄燐弾が第1次大戦時に使われ、これを人に向かって使うのは非常に残虐な、激しく人を燃やすので、違法であると禁止されました。煙が出ている部分について言うならば毒性がある煙幕ですが、燃えている部分を見ると人が焼け爛れている。これを使うことは非人道的な武器で違法であると考えられています。ファルージャで使われ、今回はまたイスラエル軍がレバノンでリン弾を使っていると非難されています。

(4)電磁波兵器
 電磁波兵器も使われた。群衆に対して電磁波を出している、そうすると皮膚表面から〇・四ミリのところが九〇度以上の高温になります。電子レンジと同じですね。電子レンジで身体を熱せられるので、非常に熱いという感覚を持つのでみんな逃げ出す。アクティブ・ディナイアル・システムというのは、積極的に群衆を蹴散らすシステムです。しかしその出力を上げれば、容易に人を殺す殺傷兵器になるのです。ハンディタイプも研究開発されている。これも、イスラエルがアメリカから導入してレバノンで使っている。もちろんイラクでも使われたという報告があります。明らかに人体実験そのものですね。

 最後に日本との関係です。この電磁波兵器が日本にあるという証拠はありませんが、劣化ウラン弾に関しては少なくとも二〜三〇万発、あるいはアメリカ陸軍が広島県内に沢山貯蔵していることは間違いない。劣化ウランの移送ルートをみると、二〇〇一年に韓国と日本で合わせて数百万発の劣化ウラン弾を貯蔵していたことが確認されている。そういう風に日本を経由してイラクやパレスチナに劣化ウラン弾が送られているということを考えに入れて、こういう問題に対応していかないといけない。イスラエルが使っている劣化ウラン弾は、イスラエル製のものとアメリカ製のものがある。一二〇ミリの劣化ウラン弾のうち、最新鋭のタイプ3というものは、アメリカのATK(アライアント・テックシステムズ)社が提供していた。このATK社はハネウェルの子会社ですが、既にイスラエルに工場を作って、そこでイスラエルのIMI(イスラエル・ミリタリー・インダストリアル)社と合弁でこういう兵器の開発や生産をしている。したがって軍隊もそうですが軍需産業もイスラエルとアメリカが一体化しています。そのATK社は、原子力産業の中でもアメリカの新しいウラン濃縮システムを最近になって受注しました。濃縮ウランを日本へも多く供給しているUSEC社という会社とも提携しています。恐らく、ミサイル防衛ともなりますと、このATK社は、ミサイルロケットブースターの開発でも大手で、日本にミサイルブースターを売り込んでいます。三菱重工も関係してくる。つまり、軍需産業の側では日本とアメリカとイスラエルとがどんどん群れをなして繋がっている。これは戦争犯罪に日本が荷担することになる。それを何とかとめていかなければいけません。

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