反安保実 NEWS 第11号

巻頭言●「制裁挙国一致」ムードに抗する多様な運動を!
       ◆天野恵一(事務局)     

  



 朝鮮民主主義人民共和国(「北朝鮮」)は、十月九日、地下核実験を「成功裏に行った」と発表。これに対して安倍政権は、ミサイル発射実験の件で実行していた「制裁」をさらにエスカレーション。
 「北朝鮮」籍船舶の入港と「北朝鮮」からの輸入を全面禁止、「北朝鮮」籍を有する者の入国を原則禁止する政策をすぐうちだしたのだ。そして、国連の安全保障理事会で議長国であった日本は、ミサイル騒ぎの時は失敗した軍事行動(四二条)をもおりこんでいる国連憲章七章に基づく制裁決議を、武力行使については排除すべきだとする中国等のブレーキをかわし、「両論併記」で全会一致採択にもちこんだ。アメリカがイラク攻撃を正当化したのと同じ内容の決議が、日本のリーダーシップによって生み出されてしまったのだ。『読売新聞』(十月一三日)は、こう語っている。
 「最終案には結局、米国が当初盛り込んだ制裁措置の大半が、一部の表現こそ弱まったものの残った。米国にとっては、これまで独自に、あるいは有志連合で進めてきた制裁が今後は安保理決議という『錦の御旗』のもとで進められることになる」。
 安倍政権は、アメリカが行う「北朝鮮」船舶検査に対する支援として自衛隊の参加をすぐ口にしだし、そのための「特措法」づくりと、当面の緊急対応策としては「周辺事態」法を適用することでのりきるという方針を明らかにした。
 こうした、戦争をつくりだしてしまう可能性が大きい動きを加速している安倍政権を全マスコミも野党も、基本的な線でバックアップする「制裁挙国一致体制」が「北の核」への恐怖に煽られて、つくりだされてしまったのだ。
 「安倍首相は、国会などで『いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に当たるのか、個別具体的な事例に即して研究する』と繰り返し言明している。同盟の信頼性を高めるために、当然、必要なことだ。/だが、今、国際社会が北朝鮮への制裁に踏み切ろうとし、日米が共同で対処しなければならない局面が現実になろうとしている時だ。『研究』などと、悠長に構えている場合ではあるまい。/船舶検査法に基づいて船舶検査を実施しても、実効性には疑問がある。停戦させるための警告射撃も、拿捕(だほ)もできず、強制力がないからだ。相手船舶が停戦せず、乗船しての検査や航路の変更に応じなければ、単に追尾するしかない。/これでは、日本が船舶検査に参加しても、他国の足手まといになるだけだ。/警告射撃もできないのは、憲法が禁じる武力による威嚇や武力行使に当たるとの理由からだ。国際常識から外れた考え方だ。武器使用の問題として、適切な使用基準を考えるべきではないか。/現実にそぐわない憲法解釈に固執すべきではない」(「日本の安全を損ねる憲法解釈」『読売新聞』「社説」、一〇月一五日)。
 平和憲法が邪魔だ、解釈をかえて戦争(戦闘)できるように急げ、この「社説」は、そう主張しているのだ。個別的自衛権に分類できるというケースを研究して、集団的自衛権を合憲とする解釈変更をしなくても、事実上(一部分の)集団的自衛権の行使を合憲化していこうという安倍の方法では、まにあわない。まるごとの解釈改憲を急げ、というわけである。
 「改憲」を公言してスタートした安倍首相は、靖国神社参拝(歴史認識)問題に関しては極右の素顔をかくす狡猾で曖昧な論理(参拝を明らかにしない、村山談話・河野談話を政権としても個人としても認める)を駆使して、中国・韓国との首脳会談を実現し、その外交を「北制裁」政策の一大ステップとして政治的に活用した。アメリカ追従の極右ナショナリストという素顔がここでは正直に示されている。確かに核実験は許されない。しかし「北朝鮮」をにらんだ、すぐにでも核弾頭を搭載できる米軍のミサイルが日本に存在している事実など、まったく無視した「北の核」恐怖キャンペーンは戦争をつくりだすだけの欺瞞的キャンペーンだ。
 こうした「制裁挙国一致」ムードに風穴をあける多様な運動を、一二月二日に名古屋・小牧で行われる「あいちの空と大地を戦争につかうな全国集会」をもステップとして、全国各地でつくりだそう。

新しい反安保行動をつくる実行委員会(反安保実X)
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