もたついていた、イラクの陸上自衛隊の撤退が小泉首相によって、六月二〇日に正式発表された(二五日から撤退に着手)。なんとかアメリカのOKがとれたのであろう。
「復興支援の成果を着実に根付かせるとともに、イラクとの幅広い長期的なパートナーシップの構築に取り組む」などという小泉の談話がマスコミによってクローズアップされている。イラク戦争開始以来の死者が二五〇〇人を突破している米軍、しかし自衛隊は一人の死者も出していない。浄水・給水・公共施設の復旧の活動は大きな成果をあげたというキャンペーンが、マスメディアおおっているのだ。
私たちは、このキャンペーンが操作的に隠してしまっている事実に注目し続けなければなるまい。
小泉首相は米軍中心のイラク侵略を「大量破壊兵器をどう取り除くかが問題だ」と主張しつつ、すぐに支持してみせた(二〇〇三年三月)。
ところが、米国調査団はイラクで大量破壊兵器を見つけられなかった。そして、それがあるとしたのは戦争を正当化するための情報操作であったことも、ブッシュ大統領自身が認めざるを得ないところに追い込まれた。この大義はアメリカ自身によって根拠がないことが明白になった。そこで小泉も、大義を「イラクの政権交代、民主化」にきりかえた(〇三年一一月)。
この事実は、石油のための侵略加担の正当化のためにそれらしい大義のベールがかぶせられているにすぎないことをハッキリと示している。
この「開戦時に米英を支持した決断は今でも正しいと思う」と公言し続けた小泉の姿勢は、アメリカがやることはどんなに嘘があっても基本的に「正しい」、常にそれについていくという外交姿勢の表明であるにすぎない。
そして、イラク派兵の根拠法であるイラク復興支援特別措置法は、「非戦闘地域」への派遣で、戦場へ戦争するために行くのではない、という論理で組み立てられた。この時、小泉首相は国会で「自衛隊の活動する地域が非戦闘地域だ」と強弁することまでしてのけた。
しかし、そこ(サマワ)はやはり戦場であった。陸自は何度も現地の抵抗グループよる砲撃を受け、陸自の車両を狙った遠隔操作の爆弾まで飛び出し、たいへんな事態が発生しかかったりもした。もはやそこが「非戦闘地域」だとは誰も考えようがない、そういう事態(派兵の根拠法がインチキであること)が公然化した後の撤退決定である。
このハレンチきわまりない政治プロセスを私たちは忘れてはならないのだ。そして、イラクの人々を殺し続けながら、大量の死者を出し続けている米軍の活動と、自衛隊の「復興支援」活動なるものが別々にあったのではなく、それが米軍の活動と一体化した活動であったという事実をも正面から見据えなければなるまい。その点こそが米国に評価されているのだ。だから、陸自の撤退が空自の活動領域の全面拡大を前提になされるという問題は、軽視するわけにはいかないのだ(米国の要請に応えて、バグダッドや北部アルビルへの輸送も引き受けると公言している)。空自の活動は、ストレートに米軍とリンケージした軍事活動であり続けてきたのであり、その活動領域は飛躍的に拡大されるのである(どこが「非戦闘地域」での「非軍事活動」だ!)。インド洋での海自の給油活動も終わっていない。日本は、ズルズルと戦争当事国であり続けている。
「成果」をあげて「平和」のうちに「撤退」というムードの演出に抗して、私たちは、さらに反派兵の声を上げ続けなければならないのだ。
『読売新聞』の社説(六月二一日)は、このように語っている。
「国際社会の平和と安定のため、自衛隊は今後も国際平和協力活動を展開することが肝要である。/だが、新しい事態が生じるたびに立法措置を講じるのでは、迅速に対処できない。自衛隊の国際平和協力活動に関する『恒久法』整備を急がねばならない」(「サマワ撤退が”終わり”ではない」)。
この政府とマスコミの政治路線、「国際社会の平和と安定」という抽象的大義のベールの下に、日本をアメリカと共に戦う恒常的派兵国家にしていこうという野望と対決する私たちの反派兵行動に”終わり”はない。
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