六月二日付「毎日新聞」は、「普天間の米軍ヘリ部隊 嘉手納移設固まる 辺野古案白紙に」、「厚木の艦載機は岩国へ」という見出しを掲げた。米陸軍第1軍団司令部の座間移転、横田基地の自衛隊への管轄移管と航空自衛隊航空総隊司令部の同基地への移転は、ほぼ固まったともいう。だが、そういったことが日米両政府の協議で取り上げられているではあろうが、具体像はハッキリしない。
機密保全強化や再編による負担増への反発回避が、その背景にあろう。だがそれ以上に、アメリカの世界戦略がまたもや大きく変わろうとしていることが背景にあるのではないだろうか。
アメリカでは、来年二月に、「四年ごとの国防見直し」(QDR)が発表される。前回のQDRは、9・11直後の発表となったため、「テロとの戦い」が応急的に強調されたが、実質的にはそれ以前に準備されたものであった。しかも、その後のイラク戦争とイラク情勢の混迷もある。米軍のトランスフォーメーションを進めてきたラムズフェルド国防長官の意に反して正規兵の増員もせざるを得なくなった。そうした変化への対応が、今回のQDRには反映されることになる。
米本土を防衛し、「不安定な弧」の四地域を念頭に、その二正面での大規模戦域戦争を同時に戦い、その一つで決定的に勝利するという1]4]2]1戦略も変更される可能性がある。特に、中東と朝鮮半島を想定した九三年以来の「二正面戦略の見直し」が検討されている。朝鮮半島と中国の軍備拡大への対応を軸に、「日本、グアム、ハワイ」を軸に戦力を強化するという説もある。だが、抑止力は強化されても、六者協議の枠組みもあり、次は北朝鮮攻撃というシナリオは短絡だ。中国に対しても、米中戦争でなく、中台紛争対処などを主に想定するものであろう。それを想定した日米の作戦計画作りも、それを作ること自体の抑止効果をねらっているのであろう。となれば、本格的に「対テロ」が基軸に据えられることになる。
それは、陸海空海兵四軍の統合運用を強化し、同盟国軍隊とのそれも強化して、本土防衛を強化しつつ緊急展開力をアップさせるトランスフォーメーションを加速させる。そこから、在日米軍基地の四軍統合使用、自衛隊との共同使用も導き出される。いずれにしても、宇宙も含む情報戦の要である三沢の維持、緊急展開の基盤となる座間]相模原]横須賀を一体とした基地強化は間違いない。対中、対朝鮮半島をにらみ、沖縄米軍基地は整理されても機能は強化されるだろう。佐世保、岩国の基地強化の動きも警戒を要する。
しかし、地域に縛られることなく、能力に応じて世界に緊急展開するというのがトランスフォーメーションの眼目だ。それを象徴するのが、座間に移転するともいわれている米陸軍第一軍団司令部である。これは前方運用司令部であり、その下でIT化・多機能化・軽薄短小化された戦闘部隊が指揮され、有事には、この上にアジア太平洋地域を包括する戦域運用司令部が据えられるという寸法だ。
自衛隊との共同使用、統合運用を代表するのが、横田の自衛隊移管、航空自衛隊航空総隊司令部移転、日米共同作戦センター設置だ。これによって、緊急展開力と先制攻撃への反撃として想定される弾道弾攻撃に対するミサイル防衛が強化され、抑止力はいっそう強化される。こうしたことは、自衛隊の内外での米軍との共同作戦能力の向上にもつながる。「テロ対処」や海外派兵専門部隊を中軸とした陸自の中央即応集団創設が、その代表だ。
巨視的な米世界戦略見直しとそれと連動した自衛隊再編をにらみつつ、米軍再配置を批判していかねばならない。
(いけだ いつのり/派兵チェック編集委員会)
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