反安保実 NEWS 第4号

視点・論点D 
「憲法調査会報告書」批判
      ●天野恵一

  

 衆参両議院の憲法調査会の最終報告書がまとめられ、四月一五日に衆議院で、参議院では四月二〇日に採択されてしまった。自民・公明・民主が賛成、共産・社民が反対であった。
 この憲法調査会は、戦後はじめて国会に設置されたものであり、以前の内閣に設置されたものとは性格が違うものである。一九九七年、国会法に第一〇二条の6(「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うため、各議院に憲法調査会を設ける」)をプラスして、つくりだされたものである。調査が目的であり、改憲のプランづくりではない、ということが確認され、「議案提出権がないことを確認する」という「申し合わせ」をしてスタートしたものだ。ところが、この報告書自体が、まず憲法「改正」のための国民投票法案の付託委員会に「調査会」をつくりかえ(国会法の改「正」)、その上で、憲法の第一次的な有権解釈を行う役割を担う機関とすべきであるという主張が多いと「報告」している。そして、小泉政権は国民投票法案づくりに向かっているのである。
 国会法の性格規定を無視し、国会での「申し合わせ」に違反する結論を、この報告書は公然と提出しているのである。事実上、改憲のための論議をする「調査会」として運営し続け、その成果を「報告」としてまとめ、「調査会」自体を改憲のための公然たる機関とするための改組も提案して見せているのだ。
 この、改憲反対の政党や「国民」をだます手口を、あたりまえのように行使していることに、彼等の改憲の内容の、まったく反民主主義的な意思がよく示されているといえよう。
 さて報告書の内容であるが、参議院の方は、「共通またはおおむね共通の認識が得られたもの(自民、民主、公明、共産、社民で意見が一致)、「すう勢である意見(自民、民主、公明で一致)」、「意見が分かれた主要なもの(自民、民主、公明でも一致せず)」の三つに区分して、レポートする方法が取られている。衆議院の方は、少数意見、多数意見の区別はあるがそういう方法はとられておらず、両院の報告書はレポートの方法が統一されていない。
 しかし、具体的内容の性格は、基本的にほぼ同一といえよう。スペースの関係もある、こだわるべき「違い」もあるが、ここでは、それが概括的にどういうものであるのかという点のみを論ずる。
 まず、論議されているのは、憲法全体である。だから、特定の条文を変えたい、加えたいという部分的な修正が目差されているわけではない。国家の基本構造全体のつくりかえがプランニングされているのである。特権的な存在である支配者の恣意的で強権的な支配を許さないように人々の人権を守り、権力者を規制する原理を、民衆の人権を足蹴にする国家主義的原理に転換する。この立憲主義原理を破壊する新たな憲法(原理)づくりという基本的な方向は、一応ひっこめられている自民党の「憲法改正草案」(これにも改憲をしようという権力者のホンネが、もっともわかりやすく示されていた)と同じである。
 各論的に、この「改正草案」と比較して考えればわかりやすいが、自民党の内部の対立はもちろん民主党や公明党との対立で、改憲できなくなるようなことがないように、かなり妥協的な論議(結論)がつくりだされている。
 この点は、「改正草案」の「参院不要論」的主張(この点が議員の利害が絡み、自民党内でも強い反対があった)は、まったくなくなっていることにもよく示されている。
 また、天皇の「元首化」規定は、しなくてもよいのではという意見が多数だったり、九条についても、「集団的自衛権」を行使できる軍隊と明記しないでよいのではという主張が多数だったという点にも、それは表現されている。
 ようするに、天皇制国家主義づくり、アメリカとともに世界で戦争ができる国家づくりというホンネむき出しのままでは、国会内の多数派になるのは困難だし、国民の反発も強かろう。だから表面的にソフトムードでいこう。こういうダマシの手口がよく読める内容だ。
 私たちは、この改憲プランの内容はもちろん手口についても鋭く批判し続ける運動を持続しなければならない。
 (あまの やすかず/反安保実)

  イラクからの自衛隊撤退と沖縄の米軍基地撤去を求める実行委員会(反安保実IX)
 東京都千代田区三崎町3-1-18 市民のひろば気付
  TEL:03-5275-5989/FAX:03-3234-4118 
  メール:hananpojitsu@jca.apc.org
 URL:http://www.jca.apc.org/hananpojitsu/
 郵便振替口座  口座番号:00160-2-36988  加入者名:新しい反安保行動をつくる実行委員会

戻り