「米国のミサイル防衛戦略は、中国のごく小規模の核抑止力を無効にし、米国の核による先制第一撃能力を万能にする目的で、構築されつつある。」(ブルース・ギャグノン「危険な宇宙レースの道を歩み出した日本」、『世界』七月号=必読です!)
六月十六日、中国は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行なった。中国系香港紙は「核を使った先制攻撃に対する反撃能力を高めた」と報じた。
一方、カナダは軍拡反対の世論を受けて、二月末にMDへの不参加を決定。米国主導のMD網に遂にヒビが入った。
こうした世界の現実から、日本の国会はまるで遮断されているかのようだ。「文民統制」という戦後日本の軍事力抑制の基本原理の一つが、MDを口実にさしたる抵抗もなく、議論らしい議論もないままに今まさに崩されんとしている。その底流にあるのは、まるで自らが無垢な被害者=イノセント・ネーション(!?)であるかのような虚像。「攻撃される日本」というあまりに主観的な自己認識。
「ミサイル迎撃」名目で武力行使=開戦権限を自衛隊指揮官に丸投げする自衛隊法改悪案を含む「防衛庁設置法等に関する改正案」は、六月十四日に衆議院を通過。そして、七月十四日=「キャンペーン2005」正式発足の日に気合を入れるかのように、参議院外交防衛委員会で可決(二〇日の本会議を経て成立)しようとしている。
追求してきた国会請願デモも、受け入れ側政党との日程調整などがうまくいかず結局実現せず。目立った意志表示のできぬまま成立目前となった。この間の国会審議を追いかけてきて、何よりも現実の厳しさが骨身に沁みた。衆議院の委員会はMD反対派の社共両党はそもそも不在。参議院も各一人のみで参考人すら呼べない。衆院の参考人は金田秀昭、神保謙、柴山太の強硬派三人、昨日七月十二日に質疑が行なわれた参院は、三菱重工の航空宇宙事業本部の西山淳一と東洋英和女学院大学の石川卓(森本敏編、日本国際問題研究所刊『ミサイル防衛』に執筆)の二人だった。
このところ大野防衛庁長官が盛んに引用する昨年の朝日の世論調査、六七%がMD導入に賛成とのデータに即して言えば、残り三分の一の反対派の声が国会でも正当に反映されるべきなのだが、見る影もない。
MDを止めようとすれば、少なくとも民主党に亀裂を入れ、MD導入容認の路線を変更させることが不可欠なのだが、その道のりもまだまだ遠そうだ。国会事後承認などの修正案を与党に受け入れさせ、「賛成」に回りたかった前原誠司ら民主党安保・外交部会の執行部は、衆議院での修正協議が不調に終わると、与党側と話をつけ、自らの存在証明を図るかのごとく附帯決議を画策。しかも、党内のMD慎重派とおぼしき委員には、採決まで附帯決議案を見せないという「非民主的」荒技に出た。十四項目に及ぶ決議には、三軍統合運用やMD以外の軍拡さえ促進する踏み込んだ内容がこれでもかと並んでいる。
こうした無惨な情景は、私に愚直な結論を思いつかせている。一つは、少なくとも参考人に反対派が登場するような(例えば藤岡惇さん、梅林宏道さん、川崎哲さんなどか)国会を、私たち自身の手で取り戻すこと。もう一つは、明文改憲反対の拡大と解釈改憲反対の縮小という反比例のジレンマを克服すること。そのために何を始めたらいいのか。皆さんはどう考えますか?そして、最後に一言。「MD反対!今こそ旬」。
(すぎはら こうじ/核とミサイル防衛にNO!キャンペーン2005)
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