日本政府は、六月にも、ドイツなどとともに、国連改革案を提出しようとしている。日本が常任理事国という地位を得るための改革という、あまりにもあさましい動きである。
だが、この野望に対し、アジア諸国には根強い反発がある。それは、先頃の中国「反日デモ」でも明らかだ。そこで日本が国連常任理事国入り支持の票田と位置づけているのが、アフリカ諸国である。
その一環として、スーダンへの自衛隊派兵が浮上している。スーダンでは、一九八二年以来、北部に拠点を置く政府と、南部の反政府勢力との内戦が行われてきたが、一月九日、和平協定が結ばれた。それに伴うPKO活動に自衛隊を参加させ、国連による「平和構築」に貢献する姿を見せようというわけだ。NATOも参加を表明しており、国連常任理事国としての資格があることを示すには派兵しないわけにはいかない、というのが政府の本音だろう。
もしこの派兵が行われたら、PKO法成立時点で凍結されていた停戦監視や武装解除などを行う最初のPKO派兵になる。和平協定が結ばれたといっても、利害関係が錯綜する諸勢力が大量の武器を持ったまま存在し続けており、しかも西部のダルフール地方での内戦は激化しているスーダン。そこでの停戦監視や武装解除は、自衛官が死傷する危険が極めて高い任務となる。それでも、「血も流しますから常任理事国の地位を!」というわけだ。
このPKOには、スーダンを「テロ支援国」と見なして制裁してきたアメリカの尻拭いという面もある。南部の石油資源開発を抑え込んできたアメリカが、中国などによるその開発を受け、不安定化政策から石油開発への参入路線に転換したことによって、和平が成立したともいえる。
スーダンPKOには、「石油のための戦争」、「テロとの戦い」に自衛隊を出して、アメリカの日本の国連常任理事国入り支持を確保しようという思惑も伏在している。しかも「危険な任務を行うのだから武器使用基準緩和を」と、海外で本格的に戦える自衛隊への道も開くものだ。これは、有志同盟の多国籍軍での役割ももっと担えるようにしていきますというアピールにもなる。
ODAのばら撒きも、常任理事国入り支持獲得の手段である。スーダンに関しても、日本は四月一一日に開催された支援国会議で1億ドルの拠出を表明した。日本は、アメリカによる「テロ支援国」制裁に追随して一九九二年からスーダンへの援助を打ち切ってきた。その再開協議が、今月、スーダン政府と反政府勢力(スーダン人民解放軍)の両者を呼んで行われる。これには、現地住民を派兵に協力させるという目的もあることも、忘れてはならない。
PKO、ODAとともに、皇室外交も「友好」を演出して常任理事国入り支持を得るという役割を担ってきた。五月七日から天皇・皇后がノルウェーなどを訪問した。ノルウェーは、他の北欧諸国とともに、PKO活動の先達者だ。パレスチナ支援調整会議の議長国を担い、二〇〇〇年に行われたその東京会議では、ノルウェー外相が当時の河野外相と共同議長を務めた。また、スーダンに関しては、ノルウェーの援助団体が、クリントン政権による反政府勢力支援のバイパスの役割を果たしてきたともいう(富田正史『スーダン』、第三書館、二〇〇二年)。
PKO、ODA、皇室外交一体となった国連常任理事国入り策動を批判し、本格的な武器使用を伴う軍事活動を行う自衛隊海外派兵への端緒となるスーダン派兵を許さない運動を作り出すことが必要だ。
(いけだ いつのり/派兵チェック編集委員会)
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