反安保実 NEWS 第2号

 視点・論点 @
 「災害救援」という政治の断面から
  ――アチェの絶望を希望につなぐために
            ●杉原浩司 

  


 累計約一六〇〇人と過去最大規模の「災害救援」派兵となったスマトラ島沖地震・津波被害での自衛隊の活動が三月九日までに終了した。インドネシア・アチェ州において、食糧・医療品や建設車両などの輸送、けが人診察や予防接種、マラリア予防のための消毒なども行ったという。指揮官は、「緊急援助は終わった」と述べ、インドネシア国軍・政府が言及していた三月二六日という「期限」を守っての撤収となった。
 自衛隊のプレゼンスと「救援作戦」は極めて明確な裏の意図に貫かれている。
 「不安定の孤」における「対テロ戦争」演習と当該国政府・軍との連携やアクセスの確保などを狙った米軍の展開にリンクする形で、三軍統合運用をテストしながら、新防衛大綱がめざす「島しょ防衛」などのシミュレーションを行うこと。
 シーレーンの要所であるマラッカ海峡付近に登場することにより、PSI(拡散防止構想)、OPK(海洋平和維持活動)などでの展開に向けたプレゼンスを見せつけること。(今夏にマラッカ海峡で行われるPSI臨検演習に自衛隊は護衛艦、P3C、AWACSを参加させる。また今年の東南アジア最大級の合同軍事演習「コブラゴールド」に、自衛隊が初めて正式参加する。
 さらには、利権と引き替えにODAなどでインドネシア政権を支え続けるとともに、アチェで超国籍企業エクソンモービルなどが独占的に採掘する液化天然ガスの多くを輸入する日本としての「国益」も背景にあるだろう。
 このおよそ不純な動機に貫かれた「救援作戦」を、「純粋な人道支援」として容認してしまう日本共産党には本当に猛省を促したい。
 そもそも、国家の利害を最も直接的に表現する軍隊は、中立性と公平性という被災者救援が持つべき性格に、およそ最も遠い存在である。むしろそれは「火事場泥棒」(「琉球新報」社説、1月7日)として、「救援」を名目に政治・軍事的成果こそを狙う存在だ。
 既に、ブッシュ政権はC一三〇輸送機の部品供与再開に続いて九二年から中断していたインドネシアに対する軍事訓練=「国際軍事教育訓練計画(IMET)」の支援を全面的に再開すると発表した。
 津波前、アチェは事実上の軍事戒厳令下にあり、外国人の立ち入りは厳しく制限された。「密室」下のアチェで国軍による暴力が吹き荒れた。津波後、多数の外国人が入ったことで、制限はあるものの「悲しいが、今のアチェには停戦中のような自由がある」(地元民)状況が訪れた。「対テロ戦争」促進のための軍事訓練再開というブッシュ政権にとっての「自由の拡大」とは、アチェの人々にとって「自由の抹殺」につながるものだ。
 インドネシア政府が、外国人のアチェからの排除の最初の節目と位置づける三月二六日は目前だ。私たちがすべきことははっきりしている。
 第一に、未だ緊急援助段階にある被災者も存在する中、災害救援のみならず、アチェにとっての平和と自由のための「監視の眼」でもある外国人の追い立てをやめさせること。NGO、国際機関、ジャーナリストがとどまり続けられるようインドネシア政府や日本政府に圧力をかけるべきだ。
 第二に、軍事演習として行われた「救援作戦」の事態を暴き、「人道」の仮面をはがすこと。
 第三に、軍隊による「救援作戦」ではなく、非軍事・文民による災害救援システムを整備すること。今こそ「サンダーバード」(水島朝穂ら『きみはサンダーバードを知っているか』日本評論社)=国際救助隊の創設を訴えるべきだ。ドイツでは七万六〇〇〇人の市民が登録するTHW(緊急技術救援隊)という被災者の目線に立った非軍事の救援組織が存在する(二月二五日「報道ステーション」)。自治体の先行的なイニシアチブも試みられるべきだ。
 限られた歴史の瞬間を活かすための行動を!
  (すぎはら こうじ/核とミサイル防衛にNO! キャンペーン)

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