反安保実 NEWS 第1号

 視点・論点 A
 自衛隊はどこへ行くのか――新大綱と米軍再編
            池田五律
  



 二〇〇四年一二月一〇日、新「防衛計画の大綱」が安全保障会議と閣議で決定された。「国防の基本方針」が一九七六年に「防衛計画の大綱」に取って代わり、それが一九九五年に新「防衛計画の大綱」に変更されたのだから、正確には、新新「防衛計画の大綱」というべきであろう。よって以下では、七六「大綱」、九五「大綱」、〇四「大綱」という表記を用いたい。

「侵略対処」より「テロ対処」を優先
 九五「大綱」は、冷戦の終焉に対応した安保再定義と連動したものであった。それは、「侵略対処」と「テロ」を含む「大規模災害等各種の事態への対応」を二本柱に、「安全保障環境の構築への貢献」としてPKO、安保対話、国連などによる軍備管理・軍縮分野の活動への協力を挙げていた。それに対し〇四「大綱」は、「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」、九五「大綱」のいう「各種事態対処」を第一に挙げ、「侵略対処」を第二に降ろし、しかもその「可能性は低下している」とした。代わって「国際的な安全保障環境のための主体的・積極的な取り組み」を強調し、PKOと「国連も含む国際機関等が行う軍備管理・軍縮分野の活動への協力」を併記している。
 「新たな脅威や多様な事態」の中身は、弾道ミサイル攻撃、ゲリラ攻撃、島嶼部への侵略、周辺海空域の警戒監視の順に挙げられ、最後に大規模災害等となっている。これだけからしても、自衛隊の役割が「テロ対処」に転換したことは明確だ。国際協力に関しては、「国連等による」から「国連も含む」と国連の比重が低下している。一方、「テロや弾道ミサイル等の新たな脅威や多様な事態の予防や対応のための国際的取組みを効果的に進める上でも重要な役割を果たしている」から日米安保を強化すると、国際協力とは対米協力であることが明確化された。つまり、アメリカ主導の有志同盟による「対テロ戦争」に積極参戦することを〇四「大綱」は打ち出したわけだ。なお、〇四「大綱」に合わせ、「武器輸出三原則」を緩和してミサイル防衛の日米共同開発・生産を推進することも打ち出された。

三軍統合運用と中央即応集団創設
 この「対テロ戦争」参戦に伴い、七六「大綱」以来の「侵略対処」のための「最小限防衛力」整備を根拠づけてきた「基盤的防衛力構想」の位置づけが低下した。代わって、即応性、機動性、柔軟性および多目的性を備えた「多機能弾力的防衛力」の拡充という新たな軍拡の論理が導入された。この新「防衛力」の基盤になるのが、情報機能だ。その強化と共に、陸海空三自衛隊統合運用が進められる。〇五年度には統合幕僚長が創設される。その軸になる陸上自衛隊では、防衛庁長官直属の「対テロ」、「対ゲリラ」、即応海外派兵部隊で構成された中央即応集団が創設され、総隊制が導入される。海上自衛隊も地方隊を廃止し、機動部隊である自衛艦隊に編入し、護衛艦の効率的運用を図り、外洋海軍化に向かう。そして航空自衛隊では、航空総隊司令官がミサイル迎撃の発射指揮を執ることになる。
 座間に移転するといわれる米陸軍第一軍団司令部は、極東有事において米太平洋軍の指揮を執ることになると思われるが、これと統合幕僚長を支える中央即応集団司令部との調整で指揮の一体化が図られることになろう。そして、航空自衛隊に管轄が移管された横田に移る航空自衛隊総隊司令部がミサイル防衛も含む周辺空域警戒監視の指揮を執る。また、海上自衛隊が周辺海域警戒監視を担う。これらによって、米軍は世界規模で展開している「対テロ戦争」により集中できるとともに、「極東」での予防先制攻撃力も拡充できる。
 米軍再配置という新たな安保再定義と一体の〇四「大綱」に基づく自衛隊再編を許してはならない。
(いけだ いつのり/派兵チェック編集委員会)

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