ゴビンダさんから支援者の皆さまへ

2002年3月23日の集会にあてた、ゴビンダさんからのメッセージです。

 私を支えて下さっている日本、ネパールはじめ外国の数多くの皆様、人権擁護の活動をされている団体、個人、またジャーナリスト、有識者の方々に対して、私、ゴビンダから尊敬と感謝の気持ちを表したいと思います。これまで皆様から受けた同情と支援、数々の暖かいお心づかいに重ねてお礼申し上げます。
 今日は、志ある皆様が私の一日も早い釈放を願って裁判所に働きかけて下さるよう訴えたいと思います。
 本日、2002年3月23日は、私が身に憶えのない罪で捕われ狭い部屋に閉じ込められてから、ちょうど5年目にあたります。
 もし私が日本人であったり、あるいは白い皮膚をもつ人間であったなら、このように牢獄に閉じ込められることにはならなかったでしょう。しかし私はネパール人であり、それゆえに加えられた不正義に対し注意が払われることもなく、見過ごされてしまったのだと思います。日本の拘置所にいる私のことが少しずつ知られるようになっても、本国ネパールでは未だ、私を救おうと立ち上がる人はいません。欧米人であったならば、今頃は家で暮らすことが出来ていたことでしょう。
 東京地裁が無罪判決を下したあとも釈放せず、新証拠も全くないままに再勾留を決めた東京高裁の判断は、恥知らずで卑しむべき偏見に満ちたものと言わねばなりません。小さな貧しい国の人間であるから何をしても構わないとばかりに軽んじているのです。日本がネパールにとっての援助国であるからでありましょう。これに対してネパール政府は耳を閉ざすばかりで関わりをもとうとはしません。
 「日本には『臭いものには蓋をしろ』という諺があるが、この事件が正にそうであり、私たち日本人は真実を隠そうと、ひとりの貧しい国の無実の青年を罠に陥れた」と、ある日本人が言っていましたが、その通りだと思います。
 日本のように世界でも有数の豊かな国、教養ある人々が暮らす国の高等裁判所の判事といえば立派で尊敬さるべきものであるのに、そこから下された判決は偏見に満ちた自殺的とも言えるものでした。
 そこで明らかになったことは、警察によって一度、裁判のプロセスにのせられた被告人は、罪を犯していようがいまいが、また証拠があろうがなかろうが有罪にされてしまう、ということです。盲目的とも言える偏見に囚われた裁判官が日本の裁判所には数多くいるということ、その例として東京高裁での私への判決を挙げることが出来るでしょう。
 ここでは無実の人間が正義をまっとうすることは極めて難しいことなのです。裁判所が無罪判決を下しても勾留する。有罪判決でももちろん勾留する。なんと恣意的で恥ずべき日本の裁判なのでしょうか。人権への重大な侵害です。
 あなた方、英知に満ちて尊敬すべき皆様に聞いていただきたい。
 警察が10日程度経過したものであるとした物証は、その警察鑑定に基づいても20日以上経過したと考えるほうが合理的であると東京地裁の三人の判事は評価しました。私もまた真実、そのようであることを法廷で証言いたしました。にもかかわらず、東京高裁では鑑定のやり直しさえせずに事件当日のものであると判じています。なんという偏見に満ち、愚かなことでしょう。  ですから、皆様、どうか最高裁に対して正しく再鑑定するように訴えて下さい。  地裁において評価されなかった証拠を高裁はどのように何を根拠にくつがえし、私を有罪としたのでしょうか。最高裁はどうかこの有罪判決を破棄し、地裁での正しい証拠評価に立ち戻って下さい。無実の人間を証拠もなしに勾留し続けることは人権への侵害です。不法なことと言わねばなりません。最高裁は一日も早く真実に基づく判決を下し、私を家族のもとに帰してくれるよう、お願いいたします。
 拘置所は人間的な扱いをしてくれません。今年の1月よりほかの収容者と話すことを禁じられています。過去5年間にわたり週に3日、30分ほど他の収容者と会うことが出来ましたが、それも出来なくなりました。
 最近では私の健康状態もよくありません。眠るためにと薬を飲みますが眠ることが出来ません。よく眠れないままに食べた食事は消化不良を起こし、胃や腸を傷めている疑いがあります。24時間、休むことなく痛みますが医者はよく検査をしてくれません。
 自分の生まれた土地や家族と離れ、悪いことをしていないのに偽りの罪を着せられ、狭い部屋に閉じ込められたまま時を過ごす。一日として安らかな眠りを得たことはありません。
 もし、あなたが何も悪いことをしていないのに、今の私の立場に置かれたとしたらどうなるかを想像してみて下さい。私は無実です。これは冤罪です。
 今、真実を不実が覆いかくしています。この不実に対し最後は真実が勝利することを祈っております。
 最後になりますが、私の無実を信じ、支援をし続けてくれる尊敬さるべき皆様、全てに対し、お礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。

あなたの無実の弟、ゴビンダより
2002年3月23日