■なぜ今、「防衛省」昇格なのか?
今年の通常国会で防衛庁の省昇格を目指した、防衛省設置法案が上程されようとしています。昨年衆院選での自民党のマニフェストのひとつであり、有事法制の次に位置付けられた重要法案とされています。しかしなぜ今防衛省なのか、なぜそんなに急ぐのか、という疑問がマスコミなどに多く出ています。
確かに憲法改悪推し進める小泉政権にとって、国民投票法案と一体として防衛省昇格を打ち出すことは挑発的に見えます。またその必要性についても、はっきり国民に見せていません。
推進側は、次の二つを利点として打ち出しています。自衛隊員の士気が上がること、もうひとつは内閣の外局から独立することによって防衛出動や自衛隊の運用、法律制定のための閣議開催を直接求めることができることなどです。
自衛隊員の士気が上がるということには省昇格を機に、自衛隊から「自衛軍」への昇格という伏線があるのでしょう。2年程前の防衛省設置を推進する国会議員の会合で、海上幕僚長が「自衛隊では国際社会ではわけがわからない、ジャパンネービーと呼んでもらいたい」と挨拶したそうです。自衛隊将校団の士気が上がるということに、実質的な意味があるとは思えません。第一、国際社会では自衛隊はアーミーとして認識されています。映画で有名なイージス護衛艦は、きちんとミサイル巡洋艦と英訳されています。自民党の法案提出方針に「国の独立と平和のために働く自衛官に国民が敬意と感謝の念を持つように勤める」とされているように、国内政治的な意味のほうが強いでしょう。
■日米軍事一体化が促進
しかし本質的な問題は、後者の方にあると考えることができます。これに公明党のとんでもない「対案」が加わります。
これまで防衛庁は曲がりなりにも、内閣府の管理下に置かれ、首相の直接の指揮下に置かれていたわけですが、これにはシビリアンコントロールの徹底という意味合いがあります。ある新聞の社説では、軍事大国化の道は歩まないというメッセージであるといわれています。少なくとも内閣府の管理をまぬがれることは、「制服組」の「背広組」に対する勝利、シビリアンコントロールの事実上の破綻を意味します。主務大臣に自衛隊出身者をつければ、旧軍と大してかわりがなくなります。
それは自衛隊将校団の政治的な地位向上、権限強化というだけでなく。防衛出動、運用、法案制定の迅速化などに窺い知れるように、日米安保体制の深化、日米軍事一体化と大いに関係があると思えます。安保に基づき迅速に自衛隊を海外へ派兵、展開させる、米軍協力のための有事法を閣議決定する、より国民に拘束力のある省令を押し付けることができる。これに輪をかけたのが、公明党の「国際貢献省」案です。
■省昇格と自衛隊法第三条の改定
自衛隊の国連平和維持活動や国際緊急援助隊活動を、自衛隊の主任務にするというものです。これは政府が狙う自衛隊法第三条改悪に直結します。戦闘必至のPKOへの派兵命令を下級自衛官が拒否することは、この改悪が行われれば刑事罰(現行法では懲役7年)による弾圧を受けることになります。
公明党はこの法案を児童福祉手当て増額と引き換えにしようとしていますが、この法案成立によって起きる事態は日米連合軍による全世界的な侵略戦争になろうとしています。国民の平和的生存権も抵当に入れられます。米兵・自衛官人権ホットラインは全力で反対します。
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