書評
小西誠・渡辺修孝・矢吹隆史 /著
四六判・本体2000円・社会批評社刊
《本書の概要》
第1章 自衛官・家族の皆さんへ イラク出動Q&A
第2章 ドキュメント「こちらは、米兵・自衛官人権ホットライン」
第3章 イラク派遣予定部隊からの報告
第4章 サマワ自衛隊の活動を検証する
第5章 海外派兵時代の自衛隊員たちの苦悩
第6章 自衛官の人権 その現状と今日的意義

一読者から

 もう20年前になるが、大学の友達の故郷青森を旅した時に、こんなことがあった。友達の遠い親戚が大湊におり、バーを経営していた。青森で一週間もねぶたでハネたあと、下北半島を廻ろうとして大湊の、その方の家へ泊めてもらった。その方の旦那さんが、防大出の海自の幹部の方で護衛艦に乗っていた。一緒にしたたか飲んだ。最初は野球の話やらしていたが、テレビで鈴木善幸だったか中曽根康弘だったかが靖国参拝のニュースが
放映された瞬間、彼の顔つきが変わり、切れてしまった。
 「くっだらねえごどばっかしやがって。広島や長崎、沖縄へいぐのが大事じゃねーすか? あんだ、国連できちんと゛平和のこどしゃべっだごとあんすか?……わだち(自分達)が実弾でやりあう時は、ほんど最後の最後だはんで……」
 以下、彼の反戦アッピールは二時間も続いた。青森弁で堰を切ったように語る言葉を、ぼくと友人は耳で繋ぐのが大変だったが、ほとんど会って話す機会のない自衛官、たまたま話を聞いた方が幹部の方で、しかも非戦思想を秘めていたことは衝撃だった。
 海自氏の話の中では、「海の上では日本人もロシア人もねえんす」と言う言葉も耳に残っている。

 かつてベ平連運動という市民運動があった。横須賀や佐世保から船は出た。嘉手納から飛行機が飛んだ。良心的に殺し殺されることを拒否した米兵を運動家の日本市民は匿い、逃亡させた。日本国は今や海外へ派兵する時代である。
 本書は現職・元職の自衛官がイラク特措法成立直前にスタートさせた兵士の駆け込み寺とも言える『米兵・自衛官人権ホットライン』への自衛官・家族からのメールを紹介、サマワでの自衛隊の活動の検証、また、海外派兵時代を迎え隊内で現実に起きた事件の分析によって良心的軍務拒否の今日的在り方、可能性が追求されている。

 私は昨年11月以来、一人でできる反戦運動として、首相官邸、防衛庁、外務省へ 自衛隊の即時撤退を求めるメールを送り続けている。切っ掛けは粉雪舞う札幌で「恋人を戦地へ行かせないで!」と書いたカードを首からさげ、一人署名を集める若い女性の姿をテレビで見て胸をうたれたからだった。
 ベ平連の時代、私達市民は、良心的拒否の米兵にフェンスのこちらから手を差し伸べた。今、私たちは自衛隊員を「国を守る労働者」として として理解する必要がある。
 「軍隊は、いつの世にも下層の民衆が集まる場所である。自衛隊も米軍もこれはおなじだ。」(本書p39)
 『米兵・自衛官人権ホットライン』は在沖縄の政治学者D・ラミス氏を通じ、オークランドの『GI Rights Hotline』と連携、更に活動は、向こう10〜20年を射程にした活動を行うとしている。アメリカにおいても長引く蟻地獄の様なイラク戦争に対してNoを表明する国民がじょじょに増えていると聞く。
 本ホットラインの活動などを契機に、銃によらない平和を志向する日米市民の連帯が生まれることを願う。

■新刊『自衛隊のイラク派兵』の案内


  「米兵・自衛官人権ホットライン」の本を創りました。ホットラインのスタッフと賛同する現職自衛官の共同の著作です。最近、自衛隊の動き、とくにサマワの自衛隊の報道が激減する中での、最新情報も掲載されています。ぜひ、ご購読、そして批評をお願いします。

■『自衛隊のイラク派兵―隊友よ、殺すな、殺されるな!』■

  小西誠・渡辺修孝・矢吹隆史/著 本体2000円
●自衛隊のイラク派兵が、長期化・泥沼化しつつある今、現職・元自衛官たちが「良心的軍務拒否」を、自衛隊内の隊友に渾身の力を込めてアピール。
●本書では、『米兵・自衛官人権ホットライン』に寄せられた、自衛官とその家族の声、イラク派兵予定部隊の隊員の実情、イラク・サマワでの自衛隊活動の実態を検証。
●そして、この「海外派兵の時代」の中で、自殺・事故などの「不祥事」が多発する自衛隊内の実態を初めて分析。さらに自殺者・懲戒処分者・大学夜間部・各種学校の通学者など、最新の自衛隊内の現状の統計資料を掲載。


★この本は、1年間のホットラインの活動報告です。小西誠・渡辺修孝・矢吹隆史(現職 自衛官)の3名が代表執筆しています。 
★この本は、同封の振替用紙で購入できます。会員・サポーターには送料・手数料込み2,000円でサービスしています。