イラクでの米兵戦死者が1000人を超えた、と米軍が公式に発表した。この数字には、米軍関係の医療機関以外で亡くなった者、自殺した者、軍の外で「暗殺者」として雇われた傭兵、さらに、「米国籍を優先的に与えてやるから」という誘いに乗って従軍した移民などは、カウントされていないそうだ。
 共和党の大統領指名大会に40万人の人が抗議のデモを展開し、2000人近くの逮捕者を出したニューヨークでの状況を考えれば、死者1000人突破は、新たな時代のエポックメントを生んでいる。
 米兵がアフガニスタンを攻撃し、イラクを攻撃している事実は、当然非難否定されるべきことだが、米兵一人ひとりのおかれている立場は、上官の命令ひとつで決まり、自分の命さえ守れない、危ういものである。さらに、人を殺傷したあとに残る精神的障害で苦しんでいる帰還兵、劣化ウランの影響で重度な健康障害を起こしている帰還兵が、数え切れない程いると言う事実もある。
 私は大前提として、アメリカ=ブッシュの一方的なジェノサイドを認めない。その実態の生々しい報道が日本ではとても少ない。イラクの抵抗勢力、反米運動をテロだ、自爆だと報じ、ことの真実を伝えないマスコミに対し、憤りを感じている。大きな流れは、日本を「戦争の出来る国家」ヘ変えていくことを是認している風潮と言える。
 イラクの抵抗闘争は長期化、泥沼化の様相を呈している。そして、非戦闘地域(?)のサマワへ、人道復興支援と称して、自衛隊派兵を強行した日本政府に対する、現地での批判は、一層厳しいものになっている。武力行使が増えることは、目に見えている。
 すでに、自衛隊駐屯地への迫撃砲の攻撃があり、現地は戦々恐々としているはずである。政府や自衛隊は、駐屯地周辺への攻撃だと誤魔化しているが、立川基地規模の広さをもつ駐屯地の中に打ち込まれたのは間違い無い事実である。自衛隊員が殺されたり、現地で人を殺したり、という事態は避けられないだろう。
 そのような事態が出来したときに、私たちは何をなすべきなのか。国内でイラク特措法違憲訴訟の闘いが展開されているが、その闘いとも連帯して、イラク派兵の不当性を糾弾しつつ、一刻も早く、自衛隊をイラクから撤退させること、そして、米英軍へのあらゆる加担を止めさせるように主張、行動する必要がある。
 それに対し、政府、防衛庁は、恐らく、戦死者に対する哀悼の儀式を仰々しく行い、一層の「国際貢献」や「戦力増強」を強調し、憲法9条改憲の地ならしをやるだろう。これは、日本の歴史の大きな分岐点になる。  私たちは、米兵、自衛官の人権を主張してきた。彼らにも当然ながら、人に殺されない、人を殺さない、と主張する権利はある。まして、日本の自衛隊が外国での戦争へ出向いていって、殺したり、殺されたりしなくてはならない義務などは、どこをどうみてもありえない。もとより、自衛隊を縮小、解体していくことが憲法9条の精神に沿うことであるが、現段階では、自衛隊員が自分の命を守りたいという当り前の主張を支援し米軍への従属的な関係を拒否し、不当な任務をはねのける萌芽をつくりだしたい。私たちの新聞への意見広告に対し、「人権ホットラインは、反戦自衛官がやっているものだ、電話をするな!」という教育が隊内で行われているようだが、自衛官が良心的軍務拒否をして、「殺すな、殺されるな、殺させるな!」という一点で私たちと連帯出来るように、努力していきたい。
 米政府高官、日本政府高官、防衛庁幹部、は全く無傷で、戦争では、武器を持たない弱い民衆や、生計を立てるために、かり出された無名の兵士たちが殺され、傷付いていくことは明白である。武力によって相手を封じ込め、自分の利益を拡大することに狂奔する一部の戦争屋たちに、騙されることなく、9条の精神を日本の中に、構築していくことが重要な時代である。

 小泉と三菱との関係が取り沙汰されているが、戦争によって甘い汁を吸う一部の連中の為に、多くの民衆が、兵士が、傷付くことを少しでも早く、止めることが平和憲法のもとで生活している私たちの急務ではないのか。