ウカマウ・プロデューサー、ベアトリス・パラシオスの死を悼んで

唐澤秀子
                                   

思い余って、書けない。

ベアトリスが亡くなったという知らせをボリビアにいる友人から受け取った。キューバへ行く飛行機の中で亡くなったというのだ。

そんなはずはない、そんなはずはない、と、何度思っても、インターネットのページには彼女の死や、追悼の言葉が並んでいる。

つい、先日ではないか、あたらしい映画の製作状況について「今度の作品は前にもまして素晴らしいものだ、期待していて欲しい」と、常にかわらぬ、前向きの言葉を送ってきたのは。

どんなにときにも彼女は、目下の自分たちの状態と、社会的な状況についてはっきりと分析しながら、楽天的な肯定的な言葉を失わなかった。

そんなベアトリスにリュウマチの持病があり、心配するホルヘは日本に進んだ治療法はないだろうかと尋ねてきた事もあった。

アメリカ合州国には、治療法が開発されているらしいから、それを受けてみようかと思うとホルヘは来日した折に話していた事だった。

あんなに楽しみにし、力を入れていた彼女のはじめての作品は完成されずに残されてしまった。

路上で暮らす子どもたちが、「悪なき大地」を目指して波瀾万丈の旅をするというファンタジックな物語は、この世にあったベアトリスの姿そのままのように思われる。

もう少し、時間を与えて欲しかった。せめて「悪なき大地」の完成まで時間を与えて欲しかった。

どうか、いまはゆっくり、休んでください。決して、決して休んだことがなかったベアトリス。(2003年7月24日)

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