2014年5/3〜5/16の上映スケジュール
革命の映画/映画の革命の半世紀 予告編

●ウカマウ映画の5原則

われわれの映画は、以下の方法に即して制作してきた。第一に、アンデス世界に固有の円環的な時間概念に基づいた語りの仕組みとしての「長回し」を活用すること。

第二に、社会的な調和を重んじるアンデス的な概念に照応させて、個人的な主人公ではなく集団的な主人公を重視すること。

第三に、西洋映画に典型的な方法である、観客を脅しつけ驚愕させることで画面に一体化させてしまう「スペクタクル」を排し、内省的なふり返りを促す方法を生み出すこと。

第四に、「クローズアップ」の使用をできるかぎり避けること。第五に、他ならぬ歴史的な現実を生き抜いた人びと自身が演技者となるような場で協働すること。  ――― ホルヘ・サンヒネス

●ウカマウ集団とは : ホルヘ・サンヒネス(1936〜 )の最初の映画作品は1962年制作の短篇『革命』であった。初の長編『ウカマウ』(1966年)が、内容的にも興行的にも成功を収めて以降、集団制作という方法を意識的に追求し始めたが、そのとき基盤としたのが上に引用した5原則であった。

スタッフは白人とメスティソ(混血)から成っていたが、当初から彼らは、アンデスの住民の過半を占める先住民の存在が社会的にも文化的にも重要であるとの考えを持っていた。

否、人間の社会的・精神的疎外をもたらす西洋中心主義の社会から脱するうえで、先住民の価値観こそが鍵となると捉えていた。

したがって、以後の作品において、物語は常に先住民が経験してきた(経験せざるを得なかった)現実の出来事を背景に組み立てられた。加えて、演じるのはその地域に住まう農民や鉱山労働者としての先住民であった。

スクリーンでは、先住民の母語であるケチュア語やアイマラ語が飛び交った。アジアでもアフリカでもラテンアメリカでも、先住民言語が話されている映画は今でこそ珍しくはないが、1960〜70年代においては先駆的なことであった。

その時代は、また、ボリビアを含めたこの地域の多くの国々が、米国の支援を受けた軍事政権下にあった。

ウカマウ・メンバーも長いあいだ亡命先での制作・上映活動に従事しなければならなかった。1980年前後、ボリビアでは軍事体制が倒れ、民主化の過程が始まることになる。

新しい情勢下でウカマウはより深く先住民の内面を掘り下げる方法を模索する。さらに2006年には、アイマラ出身の先住民で左派のエボ・モラレスが大統領に就任して現在に至ることとなる。

先住民的価値観の復権を志してきたウカマウの夢は、政治・社会的な結実をみたのだろうか?その答えを出すのは、おそらく早過ぎるのだろう。

いずれにせよ、変転めまぐるしいこの時代過程の中で、ウカマウは休むことなく作品を撮り続けてきた。その試行錯誤の全過程をたどることができるのが、今回の企画である。

■ウカマウ集団の作品は1980年以来、自主上映の形をとって日本ですべて紹介されてきた。上映運動は全国に広がり、上映収入は次回作の制作資金としてウカマウに還元されてきた。

『地下の民』『鳥の歌』においては、日本側スタッフが共同制作者として一定の役割を担っている。2014年の今年は、この協働作業が始まって34年目となる。

最新作 『叛乱者たち』 

制作:ボリビア・ウカマウ集団 監督:ホルヘ・サンヒネス

出演:ルカス・アチリコ、レイナルド・ユフラ、ロベルト・チョケウアンカ他

原題Insurgentes/ボリビア/2012年/83分/カラー/スペイン語・アイマラ語

2013年国際政治映画祭第一位(ブエノスアイレス)2013UNASUR(南米諸国連合)ドキュメンタリー映画祭最優秀賞(アルゼンチン)

18世紀末、スペインの支配からの解放を目指す先住民族の戦いに始まり、2世紀有余後の2005年、ついに先住民出身のエボ・モラレス政権が誕生するまでのボリビアの歴史を物語り、さらに過去に留まらず、21世紀の「革命の映画」へ歩みつづける最新長編。

【解説】監督ホルヘ・サンヒネスが言うところでは、「この映画は、今日のボリビア社会が経験しつつある社会・政治過程をめぐる内省」を企図している。

「この国の集団的な記憶から排除されてきた人物や出来事を取り戻すこと、公認の歴史では忘却の彼方に封じ込められてきた史実を掘り起こすこと」である。

「植民地支配下の1781年に先住民族が行なった〈ラパス包囲戦〉に始まり、現在に至る過程」を見通そうとする作品である。植民地期の叛乱は、公認の歴史書の中では確かに無視されることが多いから、その叛乱を担った人物や事実経過を思い起こすこと自体が意味を持つ。

現代にあっては、2000年のコチャバンバにおける水道事業民営化反対闘争、2003年の天然ガス売り渡し反対闘争などが、新自由主義的経済秩序を軸としたグローバリゼーションの趨勢に対しての抵抗が現に存在していることを明らかにしていて、ボリビア国内に留まることのない、世界に普遍的な意義を指し示す。

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