コラム/サンディニスタの「夢」と「悪夢」 |
学習会における弘田しずえさんの話の内容を前号で紹 介したが、ニカラグア
革命のその後に関する部分はとり わけ哀しくも興味深いものだった。初心を忘
れたのかど うか、民衆に祭り上げられてしまい、そのことの危険性に無自覚な
革命指導者。
サンディニスタ最高指導者ダニ エル・オルテガは、養女が十一歳の頃から彼
女に性的虐 待を行なっていたことがほぼ信憑性をもって告発されて も、本人
はシラをきり、世論もまた「栄光のサンディニ スタを防衛するために」であろ
うか、ダニエルに味方する。
弘田さんの話を裏付けるかのように、近着の中米情 報誌「PUENTE」二
七号には、より詳しくサンディ ニスタの現状を報告する記事が載っているが、
オルテガ が養女に語っていた言たるや「自分のような多忙な人間 には性的な
解放が必要で、犠牲になることで彼女はサンディニスタの大義を助けているのだ」
というものだったいう。
七九年以降のニカラグア革命の過程は、死刑制度の廃止、文化・文芸の復興、
識字運動の展開、土地 改革、女性解放、ゲイやレズビアンの解放など、見るべ
き成果を挙げたと私たちは解釈していた。先住民族との 関係における重大な失
敗はあったが、それを克服する道もみずから模索していたように見えた。指導者
信仰とは無縁な場から革命総体の成果としてそれを知る者からしても、今回明ら
かになった事態はひとつの衝撃である。
それ自体としては美しい革命や解放の夢も、その担い手が人間である以上、世
界のどこでも、これほどまでの無 自覚と無恥と無責任さと居直りを伴うことも
あることを胸にとめておきたい。【正夢】
サロン・インディアスに戻る